第18話「宣戦布告」

 背後に般若スタ〇ドが出現していたシルヴィに反省を促され、今回の事は許してもらった。


 その後の後処理などは王国騎士団に任せ、俺達は1箇所に固まって今後の方針などを話し合っていた。


 丁度方針について話し終わった直後、タイミングを見計らっていたような絶妙なタイミングで1人の王国騎士が話し掛けてきた。


「すみません、サトル様で宜しかったでしょうか?」

「ああ、俺がそうだが」

「王より今回の褒美をを取らせたいので、王城に連れてくるようにとの勅命を頂いているのですが、ご同行願えないでしょうか?」


 なるほど、確かに今回の魔物進行スタンピードは俺1人で止めている。

 そうなると褒美を取らせることが普通なのだが、俺の竜帝としての感が面倒なことになると告げている。


「一応聞いておくが、拒否権はあるのか?」

「あります。というか、サトル様に無理強いして不興を買うことを、上は恐れているのですよ。そういう訳で、断っても特に何かがあったりはしません。来てくれると嬉しいのですが……」


 この人は相手を怒らせると最悪死ぬという仕事を押し付けられたようだ。


 流石に可哀想になってきたので、付いていくことにする。

 もちろん面倒なことは断るけどな。





 今は騎士の後に続いて王都を歩いている。

 魔物進行があったにもかかわらず活気があり、街の人は生き生きしている。

 それほどこの国の騎士たちは信用されているのだろう。





 さて、王城に着いたのだが、何やら人族の男と騎士が揉めているようである。


 男は豪華な衣装を纏い、ジャラジャラと悪趣味な程に宝石を付けまくっている。

 鑑定してみるとハイランド王国の貴族の様だ。


「早く私を通さないか!私はハイランド王国のモブリン侯爵だぞ!」


 その名前を聞いて、鑑定して知っていたとはいえ笑ってしまいそうになった。

 まるでモブとゴブリンを合わせたような名前だ。


 シルヴィは分からなかったみたいだが、星来と渚沙はやはり笑いを堪えていた。


 暫く言い争っているのを見ていると、奥からライゼルが出てきた。


「部下が済まないな。それで、要件はなんだ?」

「ふん、獣風情が私を待たせるでないわ。まあいい、今回は国王からの要件を伝えに来たのだ」


 どうやら、あの男は国の使いとしてやって来た様だ。


 完全に人選を間違えているだろう。

 あのクソ国家だから仕方ないかもしれないが。


「では、ハイランド王国国王からの要件を言い渡す。我が国は貴国、ライセン王国に対し、宣戦布告する!3日後の正午にマタナ平原で殲滅戦争を行う。なお、降伏する場合は赤色の狼煙のろしを上げることとする」


 何を言うのかと思えば、宣戦布告だった。

 流石ハイランド王国と言ったところか。



 ここで戦争についての説明をしておこう。


 戦争はまず攻める側が相手の国に宣戦布告し、日時と場所を指定する。

 場所は開けたところに限定されており、日時は暗黙の了解として2日後~4日後となっている。


 戦争には二種類あり、一つは殲滅戦争。

 名前の通り相手をひとり残らず殲滅する戦争だ。

 この戦争には王は必ず同伴し、戦争が終わった後に王の首を相手国に差し出すことで、その国を自由にする事が出来る。


 もう一つは大将戦争。

 大将の首を取り、上空に向かって緑の狼煙のろしを上げることで終わる戦争だ。

 こっちは被害が最小限で終わることもある。


 どちらも降伏する場合は赤色の狼煙を上げることになっている。


 狼煙が上がったあとの攻撃は戦争規約によって禁止されており、規約を無視すると他国の戦争規約連合軍によって攻められ、他の国からの評価も落とすことになる。


 以上がこの世界の戦争についてだ。



「ほう、この国に対して宣戦布告か。それも殲滅戦争と来たもんだ。随分と自身があるんだな」

「当たり前だ。獣風情に負ける訳がなかろう。それに、王がそろそろ新しい領土が欲しいと仰っておられたからな」


 宣戦布告が終わってからは、そんな言い合いが暫く続いていた。

 さっさと帰れば良いのに。


 わざわざ待つのも面倒なので、俺達は客室で待たせてもらうことにした。


 客室に着いて数分、扉が開かれてライゼルが入ってきた。


「すまないな。クソみたいな国のクソみたいな貴族の対処が長引いてしまった」

「いや、いいさ。それより今回の戦争だが、俺が参加してもいいか?」

「む?こちらとしては有難いが、何故だ?」

「あの国には復讐すると決めているんだよ。あんな国、残しておいても仕方が無いだろう?それに、今回の戦争には勇者(笑)共が出てくるだろう。ステータスはSSランク冒険者程度だろう。それが30人程いる」


 それを聞いて、ライゼルは目を限界まで見開いて、顎が外れるんじゃないかと思うくらいにビックリしていた。


「SSランクが30人!?」

「ああ。という訳で、今回の戦争には俺も参加する。いいだろう?」

「もちろんだ。あの国はとても不興を買っていて、戦争規約連合からも追い出されている。今更あの国の領土が更地になった所で、誰も文句は言わないさ」


 その後は他愛もない話をして、魔物進行の報酬を確認した後に用意されていた城の部屋に戻って行った。


 一人部屋でベッドに横になった俺は、明日のことについて考えていた。


(俺が1人で殲滅してもなんか物足りないよな。そうだ!せっかくだから竜皇を集めるか)


「そうと決まれば、明日は竜皇探しだな。知恵袋さんなら居場所が分かるだろ」


 軽い感じで思考を終え、夕食を食べて風呂に入り寝ることにした。


 夕食のオークステーキはとても美味しかった。

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