第15話「ケモミミ王国2」

「EXランク冒険者サトル様、並びにパーティーメンバーのシルヴィア様、セイラ様、ナギサ様がご到着されました!」


その声と同時に、大音量の音楽が演奏される。

大袈裟すぎやしないだろうか。

そう思い、オルガにその旨を聞いてみたところ、


「EXランク冒険者は、1人で一国を余裕で滅ぼせると聞きます。更に黒竜帝ですので、これくらいしないと心配だと言う貴族が多いのですよ。貴族と言っても、この国の貴族はそのへんのクズ貴族とは違いますが」


ということらしい。

確かに一国を滅ぼす事など容易いが、俺の邪魔にならなければ滅ぼす気など一切ない。


しかし国としても、EXランクを歓迎もなしに謁見だけしたとなっては外聞が悪いようだ。


「ところで、俺は礼儀についてはさっぱりなんだが」

「サトル様達は特に何もしなくていいですよ。普通は跪いたりするのですが、そんなことをさせて不興を買ってしまっては意味が無いので」


これを聞いて、流石にそこまでしなくてもいいだろうと思った。

俺はそこまで短気ではないし(1度のチャンスは与えるが、2度目はない)、そんなことをしては国王の威厳なんてあったものでは無い。


「では、そろそろ入って行ってくれますか?」

「ああ、すまないな」


少し長話しすぎたようだ。

オルガに促されて中に入っていく。

中は嫌味すぎない程度の装飾が施されていて、入口から王の元まで真っ直ぐに赤の絨毯が敷かれている。


俺達はその上を堂々と歩いていく。


王はライオンの獣人だ。如何にも王と言った感じである。

筋肉質の体で、格闘戦では俺と眷属たちを除くとほとんど敵はいないだろう。

獣人の王族にのみ伝わる獣神拳という流派があるようで、1度は戦ってみたい相手だ。


王の右隣には妻と思える女性が座っている。

狸の獣人で、おっとりした感じの人だ。


王の左隣には王子と王女が座っている。

王子はしっかりした感じでメガネを掛けている。


王女は目を爛々と輝かせてこっちを見ている。

恐らく戦闘狂だろう。

金髪ショートで青眼。身長は165cm程度。狐の獣人だ。

ちなみに、どことは言わないがシルヴィと違って物凄く育っている。


そう考えていると、背中の方から悪寒がしてきた。

うん、もうこの事については考えるのを辞めよう。


そんなことを考えていると、王座の近くまで来ていたので歩みを止める。


「敬語は面倒だからタメ口で話すぞ。俺がEXランク冒険者で黒竜帝の慧だ。こっちは左からシルヴィ、星来、渚沙だ」


俺はタメ口で話したが、特に咎める者はいなかった。

それだけ大きな存在という事だろうか。


「よく来てくれた。私は獣王のライゼルだ。右にいるのは妻のセレス。左にいるのは息子のオニキスと娘のシャルロットだ」

「紹介ありがとう。それで、俺たちに何の用だ?」

「ん?特に用など無いが。強い者をこの目で見たかったのだ。強いていえば、竜の状態の姿を見せて欲しいというくらいだな」


ここで俺は気づいた。

黒竜帝になってから一度も竜の姿になっていないと。


「そう言えば、竜になった事がありませんね」

「そういやそうだな。1度確認の為になって見るか。どこか広い場所は?」

「ここの訓練場でいいだろう」




ということで、やって来ました訓練場。

確かに広い。いや、広すぎる。

壁際を一周するだけで5キロはある。

むしろ、ここまでしないと獣人の身体能力を発揮出来ないのだろうか。


「そんじゃ、少し離れててくれ。どんだけ大きくなるか分からないからな」


そう言ってみんなを下がらせる。


「よし、やるか。「竜帝化」!」


直後、圧倒的な威圧感と共に俺の体が黒と金の魔力で覆われる。

魔力は次第に竜の形になって行く。

体を覆っていた魔力が無くなると、そこには1体のドラゴンがいた。


基本色は黒で金のラインが入っており、頭には金色の角が生えている。瞳は金色だ。

全長は10mくらいあり、その姿を見るだけで跪かせる存在感がある。


「す…凄い………」


シルヴィがみんなの気持ちを代弁した。

凄いしか言えなくなる位に圧倒的なのだ。


「おお、結構大きくなったな」


そんな中、慧だけは反応が薄かった。

飛んだり爪を使ってみたり、ブレスを撃ってみたりした。(もちろん空に向かって)


試すことが一通り終わったあとに振り返ると、全員が固まってしまっていた。

何かあったのだろうか?


「どうしたんだ?なにかあったか?」

「なにかあったか?じゃないですよ!カッコよすぎですよ!何ですかその姿は!!」

「いや、そこじゃないでしょ…」


シルヴィの見当違いの発言に渚沙がつっこんでいる。

まあ、自分で言うのもあれだけどカッコイイもんな、この姿。


「で、慧はどこかの国を滅ぼすつもりなの?……あ、そう言えばハイランド王国がその予定だったわね…」


自己解決してるよ。

確かにあの国は滅ぼすよ?

ええ、完膚無きまでに叩き潰して、助けを求めても無慈悲に、徹底的(更地になるまで)に。


と、この話は置いといて。

聞いてみると、竜の姿の存在感に当てられて暫く動くことが出来なかったらしい。

ついでに言うと、ライゼルは試していた時の威力を見て、本当に敵に回さなくてよかったと安心していたようだ。

シルヴィたちでも国を落とせそうだけどな。


ん?なんかシャルロット様がウズウズしてるな。

これはあれだな、決闘とかいうパターンですね、分かります。


「すまない慧殿、私と模擬戦してくれないだろうか!勝てないのは分かっているんだが、どこまで出来るか試してみたいんだ!」


ほら来ました。


「いいよ、やろうか」

「ありがとう!今からでもいいか?いいよな!よしやろう!!」


おうふ、スゲェ自己完結。

別にいいのだが。


「それと、私のことはシャルでいいぞ!」




ということで、今現在俺とシャルロット様は訓練場で向かい合っている。

両者の間は10m程度。


ルールは簡単。

相手を死に至らしめることは禁止。その他は何を使ってもいいとの事だ。


「只今より、慧様対シャルロット様の模擬戦を開始します。両者ルールに依存はありませんね?」

「「ない(わ!)」」

「それでは、試合開始!」


っち、かの有名な「盟約に誓ってアッ〇ェンテ」という決めゼリフを言う暇が無かったじゃねぇか。

1度言ってみたかったのに。

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