第14話「ケモミミ王国1」

 俺達は今、武器を持った衛兵達に取り囲まれていた。


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 時は少し遡る


「ケモミミ来たーーーー!!!」


 そう、心の中だけで言っているつもりだったその言葉は、完全に声に出てしまっていた。

 ついでに言うと、他の3人には少し引かれていた。

 街中の広場にさっきまでいなかった集団が現れ、更に大声で叫びだしたのだ。これは不審者と間違われても仕方が無い。

 で、俺達は不審者として通報され、今に至るという訳だ。

 と言うか、何故街中に転移させられたんだろうか……


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「お前達は何者だ!返答次第によってはここで処刑する!」

「えーっと、信じてくれないかもしれないが、俺達はレオルダンジョンの最深部の転移陣から転移してきたんだよ」

「嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ!ダンジョンは未だ一つも攻略されていない!SSS冒険者でも30層付近が限界だ!」

「ああ、それならこれを見て納得してくれるかな?」


 そう言って、ギルドカードを先程まで問答していた衛兵に投げ渡す。

 あまり目立ちたくは無かったんだけどなぁ。(既に手遅れ)


「む、ギルドカードか。なになに?サトル・オオワダ。EXランク。種族は黒竜帝。………って、黒竜帝!?EXランク!?」


 周りがざわめき出す。

 やはりこれの効果は偉大だな。あまり使いたくは無いが。


「す、すみません。先程の無礼をお許しください」

「いや、構わねぇよ。街中に集団で転移してきて疑わない奴がいたら、そいつは頭がイってる」

「ありがとうございます。申し遅れましたが、私はこの国、ライセン王国の王国騎士団団長、オルガ・レーベルと申します。突然なのですが、王に謁見して欲しいのです。構わないですか?」

「ああ、構わない。それじゃ、案内よr「ちょっと待な!!」はぁ、やっぱり1人はいるよな」


 予想はしていたが、いきなり現れた人物が王に謁見するとなると、必ず誰か納得しない奴が出てくる。

 出てきたのは筋肉ダルマの大男で、主武装としてバトルアックスを背負っていた。


「冗談だろ。そんなガリガリの奴がEXランクだって?しかも竜帝と来たもんだ」


 大男は大きな声で周りに呼びかけている。

 俺を偽物扱いしたいのだろう。


「竜帝なんて伝説上の生物だ。ここにいるはずがねぇんだよ。ん?よく見れば結構な上玉連れてんじゃねえか。本来ギルドカードのランク詐称は犯罪だが、そいつらを渡すことでチャラにしてやるよ」


 瞬間、慧は無表情になり、視線の鋭さも増す。


「おい、今なんて言った?」

「だから、そいつらを渡せって言ってんだよ」


 シルヴィ達をこんなクソ野郎に渡せだと?

 いいだろう。お前は敵だ。


 次の瞬間、俺の体は金と黒の魔力のオーラで包まれていた。

 圧倒的な威圧感と共に。


 余談だが、オーラはその人が使える魔法の属性の色が混ざりあった様な色になる。

 慧の場合は最初から持っている金の魔力、そして、黒竜帝になった時に得た黒の魔力だ。


 大男はようやく彼我の実力差に気がついたらしく、腰を抜かして失禁していた。


「シルヴィ達を渡せと言うからには、死ぬ覚悟は出来てんだろうな。「部分竜化」」


 右腕を竜化させて大男に近づいて行く。

 腕は黒色で、金色の線が入っている。


 大男の腕を持ち上げて、握り潰す。


 ゴチャッ


「ぎゃあああ!!」

「これで済むと思うなよ。お前は俺の女・・・に手を出そうとしたんだ。安心しろ。殺しはしない」


 ああ、殺しはしないさ。

 精神が狂うまで激痛と恐怖で蹂躙してやる。


「竜炎・黒金焔カオスフレイム


 黒と金の焔を腕に纏う。

 すると、焔に触れた箇所が消滅していく。


「ぐ、ああああああ!!」


 もちろん激痛は伴うわけで、大男の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。


「さ、サトル様。私達の為に怒ってくれるのは嬉しいのですが、流石にやり過ぎかと……」

「「コクコク」」


 やっと再起動したシルヴィ達がもういいと言ってくる。

 何故顔が赤いのだろうか?


「ッチ、分かったよ。おいお前、次は無い、いいな?周りの奴らもだ。よく覚えとけ」


 竜炎と部分竜化を解き、オルガに話しかける。


「済まない、時間を取らせたな。早速行こうか」

「あ、ああ、付いてきてくれ」


 オルガは内心物凄く焦っていた。


(どうしよう。ここまでの力を持っているとは思っていなかった。王にはサトルさんに断罪権を持たせた方がいいと進言した方がいいだろうか。それに、王女のシャルロット様が勝負を仕掛けるだろうから、機嫌を損ねたりしないだろうか)


 王国騎士団団長はかなり上位の権限を持っており、王に直接進言する事が出来る。

 それ故、ここまで悩んだりしているのだ。

 オルガは胃薬を常に持ち歩いた方がいいだろう。


「そう言えば、なんで顔を赤くしていたんだ?」

「えっと、気づいていなかったんですか?サトル様はあの時、私達のことを「俺の女」と言っていたのですが…」

「………は?はああああ!?」


(ちょっと待て、俺はあいつらの事を「俺の女」と言っていたのか……ん?でも待てよ。なんで俺の女と言われて顔を赤くしてんだ?まさか……)


「一つ聞きたい。お前達は俺の事が好きなのか?」

「「「何を今更当然のことを」」」

「そ、そうか」

「そ、それでサトル様、返事は?」


(今、だと?いやまあ、俺もシルヴィ達に対して独占欲的な感情は持っていたし、嫌いではないが。)


 流石は彼女いない歴=年齢の慧である。

 内心テンパりまくりだ。


「そうだな、ここは男らしくいくべきだ。シルヴィ、姫柊、綾辻、お前達のことが好きだ。複数人を好きになる様なやつだが、こんな俺でよければ付き合って欲しい」

「あのー、サトル様。この世界では一夫多妻制が認められているんですよ?」

「そうなのか?そ、それで答えは?」

「「「そんなの、Yesに決まってます(るよ)(わ)!!」


「すみません、今は辞めてもらっていいですか?少し私の中で嫉妬の炎が燃え上がってますんで」

「「「「……すみません」」」」


 そんな慧たちの茶番は、現在独身の騎士団長オルガの目の笑っていない笑顔で止められた。


 歩くこと数分。

 まさに王城という感じの建物が見えてきた。

 オルガに続いて城門を潜り、俺達は客間に案内された。


「では、少しの間ここで待っていてください。王に話してきますので」


 そう言ってオルガは部屋を出ていった。

 その後直ぐに部屋全体に防音結界を張り、今更ながらに地球への帰還について聞くことにする。


「今更なんだが、姫柊「星来」…姫「星来」……ひ「星来」………星来と綾辻「渚沙」……はぁ、渚沙は地球に帰りたいか?」

「そうだねー、私はどっちでも良いかな。あっちですることも特に無かったし」

「私も同じね」

「そうか。俺はこの世界で暮らしていこうと思っている。そもそも、なんで元の世界に帰ろうとするんだ?盤〇の世界ディ〇ボードに行った兄妹と同じく、帰る要素が一つもないんだよな」


 そう、俺はこの世界に来た時から、帰還のことなんて一度も考えたことがない。

 ゲーム内ランキング1位を総なめにしている、どこぞのプレイヤーネームが空欄の兄妹と同じ思考である。


 コンコン


 その確認が終わった直後に、扉をノックする音が聞こえた。


「謁見の準備が整いましたので、お迎えに上がりました」

「分かった、すぐ行く」


 さて、この国の王はどんな奴なのだろうか。

 もしクズなら抹殺。国全体を敵に回してもいい。

 その際、冒険者ギルドは関与して来ないだろ。俺の種族とランクを知っているのだら。


「マシな王だといいんだけどなぁ」


 そんな淡い期待を持って、謁見の間まで案内されていく。

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