第12話「再会」

 レクスとリリスに乗ってダンジョン近くまで来たが、何だか違和感がする。

 空からマップを発動してみると、ダンジョン入口付近の草むらに二つの反応があった。

 そして、その反応は敵であることを示す赤ではなく、1度会ったことを示す黄色のマーカーであった。


(誰だ?こんな所に知り合いなんていなかったはずだが)


「レクス、ダンジョン入口付近の草むらに2人反応がある。こっちに気づいてないだろうから、出てくるように呼びかけて見てくれ」

『畏まりました』


 レクスは一つ咳払いをしてから言い放った。


『そこの草むらに隠れている者よ、出て来なさい。さもなくばここら一帯を魔法で一掃しますよ』


 今までとは違った威厳を感じさせる声だ。

 すると草むらから話し声が聞こえてきた。


「どうする?完全に気付かれてるみたいだけど」

「ドラゴンで話せるのは竜王クラス以上だと聞いたけど……見つかった以上は逃げるか話し合うかね」

「なんか話せる感じの雰囲気だけど…1度出て、話し合いが無理そうなら転移する?」

「そうしましょうか。どうせここで隠れてても意味無い訳だし」


 その話し声を聞いて、俺は少し考えていた。


(この声、どこかで聞いたことがあるな。俺の記憶道りだとすると……いや、まさかな)


 俺が思考を切り上げると同時に、2人組が出てきてフードを取った。

 そして現れたのは


(姫柊と綾辻だと?ここはハイランド王国からかなり離れているはずだが)


 姫柊星来と綾辻渚沙だった。


「レクス、1度降りてくれ」

『知り合いですか?』

「その通りだ」


 レクスそう言い降りてもらう。

 降りるまでに、下の方では何やら騒いでいた。


「久しぶりだな。姫柊、綾辻」

「っ!?大和田君!?」

「良かった、生きていたのね!」


(生きていた?ということは、あっちでは死んでいることになっているのか。大方、情報の出どころは山中と児島だろうな)


「そんな事より、何故お前達がここにいる?」

「何故って、大和田君を追ってきたに決まってるでしょ。まあ、会えたのは偶然なんだけどね」

「私達はあなたが生きていると信じていたのよ」

「そうか、じゃあそっちの話を聞かせてくれ。こっちも話すから」

「分かったわ」


 俺はまだ上空にいるリリスとシルヴィアを呼んで、ひとまず状況の確認をすることにした。

 何故かシルヴィアを見た時の2人の反応がおかしかったが。


 最初に2人の話を聞いた。

 やはり、俺はあっちでは死んでいる扱いになっているそうだ。

 情報提供者は山中と児島だった。

 それから2人は外での訓練を抜け出して旅をし、今に至るらしい。


「では、俺の話をしよう」


 俺が簡単に事情を話すのは、マップで2人のマーカーが仲間であることを示す青になっていたからだ。

 この色付けは、万が一敵になる可能性がある場合は決して青にはならないようにしている。

 少しでも敵意がある場合はオレンジ、殺意がある場合は赤、知り合いは黄色だ。魔物は全て赤にしてある。


「俺はあの日、山中と児島に殺されかけた。橋を落とされてな。幸いそこまで高くなくて助かったんだ。俺は召喚前に女神とやらに会っていて、その時に4つのスキルを貰った。今はスキルが進化して違うものになっているが。それからダンジョンの魔物を狩り続け、馬鹿みたいに存在感のあるドラゴンを倒してその肉を食うと、俺は黒竜帝になっていた。ステータスは全て表示不可能になっている。」


 姫柊と綾辻は、殺されかけたと言ったところで顔を顰めていたが、女神に会ったというところで驚き、黒竜帝になりステータスが表示不可能になったというところで、驚きを通り越して疲れた様な顔をしていた。


「えっと…つまり大和田君は凄く強くなったの?」

『ええ、神よりも強いですね』

『さすが私達の王だよね〜』

「蒼竜皇だけやたら軽いわね……」

「そんなこんなで、俺は今、ハイランド王国を滅ぼそうと思っている」


 ハイランド王国を滅ぼそうと思っている理由、それはファガンでの聞き込みにあった。

 どうやらハイランド王国は、平和に保たれていた世界の均衡を、魔族領に攻め込むことによって崩した様だ。

 それにより、魔族は他種族に対し戦争とは行かないものの、戦いを仕掛けているらしい。

 ちなみに攻め込んだ理由は、馬鹿な貴族共の領地欲しさだ。

 更に質が悪いのが、王族もそれに加担しているらしい。


「そんな国に召喚されたのね、私達」

「本気なの?」

「当たり前だ。だが、やるなら徹底的にやりたい。そしてあの国がボロを出した時が一番滅ぼしやすい。だから俺は、まずダンジョンを制覇することにした」


 普通の人間なら、鼻で笑われるだろう。

 だが、俺ならばそれを実現出来る。


「なら、私も付いていく」

「私もよ」


 その直後、考える素振りもなく2人が付いてくると言い出した。


「何故?俺に付いてきたところで何もないぞ」

「私達が付いていきたいからよ」

「……後悔しても知らんぞ」

「「ありがと!」」


 俺は基本的に仲間には甘くなる。戦闘以外では、だが。

 2人は嬉しそうに礼を言ってきたが、俺はそこまでの事をしていない。

 とそこへ


「あの……私の事忘れてませんよね?」

「「「………あ」」」


 すまんシルヴィ、完全に忘れてたよ。

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