第11話「ファガン出立」

 リリスを眷属にした俺はファガンに戻った。

 門に着くと大勢の武装した冒険者達が待っていた。


「武装しているがなんかあったのか?」

「あなたでしたか。この街に2匹のドラゴンが攻めてきたと連絡が入ったので、こうして迎え撃とうとしていたんですよ」

「ふむ、すまんな。蒼色の方が今回の依頼のドラゴンなんだが、アリスはいるか?」

「何でしょうか?」


 聞いた直後にアリスが出てきた。

 聞かれるのを待っていたんじゃないだろうな。


「蒼竜皇の従魔登録をしたいんだが、任せていいか?」

「また竜皇ですか……別に構わないんですけど、どこかの国を滅ぼそうなんて考えてませんよね?」

「俺の敵となるなら躊躇いはしない。だが、今のところその予定は無い」

「滅ぼすかもしれないと言うことですね。」

「ああ」


 その後はレクスの時と同じ手順で従魔登録をした。

 リリスの首輪は通常の白だった。

 アリス達受付嬢はリリスの血で塗れた所を掃除するので忙しそうだった。






 それから1ヶ月が過ぎた。

 特に事件などもなく、シルヴィアと共に平和な日常を過ごしていた。

 変わったことといえば


「サトちゃん、新鮮な果物が入ったから持っておいき」

「おーいサト、仕事終わったから飲みに行こうぜ!」

「サトルさん、安くするんで買っていきませんか?」


 という感じで、このファガンではちょっとした人気者になっていた。


「サトルは人気者ですね」

「シルヴィの方に行く視線の方が多いと思うが……」

「それは人気からじゃないですよ。むしろ、もっとドロドロした嫉妬とか性的な視線とかそんなのですから」

「そうか?シルヴィは可愛いのに」

「か、可愛いなんていきなり言わないで下さい!!」


 慧は、シルヴィアが何故動揺して大きな声を出したか分からなかった。かなり筋金入りの鈍感野郎である。


「そうだ、シルヴィ。そろそろ次の街に行こうと思うんだが」

「どこに行くとか決めてますか?」

「いや、ゾルド火山を越えて少しした所に3番目のダンジョン、レオルダンジョンがあるらしい。そこの最下層の転移陣で転移して、近くの街に行こうと思う」

「えぇ、計画性皆無の行き当たりばったりですね……でも、面白そうです」

「シルヴィのレベル上げも出来るしな」

「そうですね、私も強くならないとです」


 強くならないと行けない、と言っているシルヴィアだが、既に慧のことは全て話して眷属になっているので、元々弱かったシルヴィアでも既にSランクとSSランクの中間当たりのステータスになっている。

 戦闘経験は皆無だが。

 なので、シルヴィアがこれ以上強くなる必要はない。

 しかし、彼女はそう考えていなかった。

 慧の隣にいるためには、強くならなければいけないと考えていた。


 シルヴィア(女)

 種族 ハイエルフ族

 Lv 1

 体力・・・29438/29438

 魔力・・・34657/34657

 攻撃力・・25346

 防御力・・22189


 スキル・・「精霊魔法」「魔法威力増大Lv4」「魔力消費量減少Lv6」「威圧耐性」


 称号・・・鬼才、元奴隷、精霊使い、慧の眷属


====================


「精霊魔法」

 精霊の力を使って魔法を放つことが出来る。


「魔法威力増大」

 魔法の威力が上がる。


「魔力消費量減少」

 魔法を使った時の魔力の消費量が減少する。


「威圧耐性」

 威圧を受けない時がある。


「鬼才」

 天才以上の才能を持って生まれた者に送られる称号。


「元奴隷」

 元々奴隷だった者に送られる称号。


「精霊使い」

 精霊魔法を使える者に送られる称号。


====================


 ご覧の通り、シルヴィアはLv1でこのステータスなのだ。

 レベルが上がれば強くなるのは確実である。

 そして持っているスキルが魔法職に全振りされている。これ程の後衛向きの者はいないだろう。


 ちなみに、慧の眷属になった時に進化してハイエルフ族になっている。

 ハイエルフはまだ確認されていないが、存在すると言われている。

 まあ目の前にいるので、間違ってはいないだろう。


「そうだ、少しギルドに寄っていいか?」

「構わないですけど、どうしましたか?」

「いや、アリスが危険な目にあった時に俺達が来れるようにするだけだ」

「ふーん、そうですか……アリスさんのこと好きなんですか?」


 シルヴィアにジト目を向けられる。


「そういう訳じゃない。ただ、何となく嫌なだけだ」

「まあいいですよ。慧を想っている人はこの先いくらでも出てきそうですし。でも、一番は譲りませんよ」


 その後、アリスが危険に晒された時に俺に知らせが来るようにして、門を出た。


「眷属召喚!」


『王よ、何用でしょうか』

『久しぶりね、王様』

「俺達をレオルダンジョンまで乗せてってくれ」

『『畏まりました』』


 俺達は竜に乗って移動を始めた。


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 ???SIDE


 ファガンの近くを、フードを被り顔を隠している2人組が歩いていた。

 体格から、女性であることは分かる。


「ねえ、まだ外しちゃダメなの?」

「完全に安全で無い以上は隠しておいた方がいいわ」

「………」

「聞いてるの?」

「ねえ、あれ何………?」

「何よ、あれって……」


 2人は絶句した。視線の先には2匹のドラゴンがいたからだ。

 2匹のドラゴンは火山のある方向に飛んでいっている。


「あの先にあるものと言えば、火山とダンジョンだけど…少しダンジョンで待ち伏せしてみましょうか」

「いいね。ドラゴン達の目的も分かるかもしれないし」


 2人はダンジョンの前に転移・・した。

 その2人は、ダンジョンの前に自由に行き来する事の出来る魔道具を持っていたのだ。

 それからドラゴン達が来るのを草むらに隠れながら待った。

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