第9話「従魔登録」

「さて、まずは宿を取ろう。シルヴィア、どこか安い所は知ってるか?」

「えっと、ここを真っ直ぐ行って左に曲がった所にあったはずです」

「そうか。ありがとう」


 そう言って歩き始めるが、直ぐにシルヴィアが立ち止まっていることに気づく。


「どうした?」

「い、いえ。ご主人様がお礼を言うとは思っていなかったので」

「助かったら礼を言う、これは当然のことだ。それに俺は、お前のことを奴隷だと思っていない。むしろこれからは家族の様なものだ」


 それを聞いてシルヴィアは笑いを堪えていた。


「なんかおかしい事言ったか?」

「いえ、ご主人様は本当はとてもいい人なんだなと思っただけです。それでは行きましょうか」


 そう言って俺の手を取り引っ張る。



 暫くしてシルヴィアの言っていた宿を取って自分たちの部屋にいた。ちなみに部屋は一緒だ。

 料金は安いが部屋は綺麗で3食出るという、なかなかいい宿だった。


「シルヴィア、お前はここで待っていてくれ。俺は金を稼いで来るから」

「分かりました。その代わり絶対に帰ってきて下さいね?」

「当然だ。それと、ちょっとこっちに来い」


 シルヴィアを近くに来させる。

 彼女はとても顔立ちが整っており、100人中全員が認める程の美少女だ。どことは言わないが、一部は絶壁となっているが。その彼女が近くに来るので、こっちは色々と抑えなければならない。


「どうかしましたか?」

「ああいや、何でもない。少し首輪に触るぞ」


 一言断ってから首輪に手を伸ばす。

 シルヴィアは少し震えていた。明るく振舞ってはいても、やはり少しは怖いのだろう。

 そう思いながら、俺は首輪を外した。


「よし、出来たぞ」

「え……どうして外したんですか?」

「俺は奴隷と思っていないと言っただろ。それと、ご主人様と呼ぶのは辞めてくれ。他人行儀だからな。これからは家族だと言ったろ?だから慧と呼んでほしい」


 そう顔を逸らして言う。

 なかなか返事が返ってこないのでシルヴィアを見ると、彼女は泣いていた。


「お、おい。俺なんかしたか!?」

「ごめんなさい嬉しかったので。私は小さい頃に森に捨てられていて、家族なんていなかったから」

「そうか。でも、これからは俺がお前の家族だ」

「はい、よろしくお願いします」

「出来れば敬語も辞めてくれ」

「うん、分かった。よろしくね、サトル。それと、私のことはシルヴィって呼んで」

「ああ、よろしくな、シルヴィ」


 こうして俺達は家族になった。


「じゃあ行ってくるよ」

「うん、行ってらっしゃい」


 シルヴィアに見送られて宿を出た。


「さてと、まずは金だな」


 そう言ってギルドに向かって歩き始めた。


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 慧が部屋を出ていって数分後。シルヴィアはある感情が自分に芽生えていることを自覚していた。それが何なのかは分かっていないが。


(サトルはとてもいい人だった。これから、私は幸せになれるのかな。今私が抱いている感情はなんだろう。胸がモヤモヤして変な感じ)


 結局何の感情かは分からず、疲労が溜まっていたのでサトルが帰ってくるまで寝てしまった。


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 俺はギルドに来ていた。丁度いい依頼を探して受けるためだ。


「アリスさんや、なんかいい仕事は無いかい?」

「ああ、サトルさんや。今ある仕事は、ここから北に行った所にある山に住み着いた、ドラゴンの討伐とかいかがかな?………って、何で私こんな喋り方してるんですか!?」

「へぇ、ドラゴンか。討伐じゃなくて眷属にしても依頼達成になるのか?」

「スルーですかそうですか……そうでしたね。サトルさんは黒竜帝でしたね。大丈夫ですよ。要は暴れないようにしてくれれば言い訳ですから」

「なら大丈夫だろ。一応白竜皇の眷属がいるし」


 そういった瞬間、ギルド内の時が止まった。

 最初に復帰したのは流石と言うかアリスだったが、それでも5分ほど経過していた。


「えっと、何の眷属かもう1度聞いても?」

「だから、白竜皇だ」

「「「「「「……はぁーー!?」」」」」」


 この時、ギルド内にいた全員の心が一つになった。

(この人(竜帝)やっぱりおかしいだろ)と。


「で、では、規則として従魔登録をしなければならないので、1度呼び出してもらえますか?もちろん外の訓練場で」

「分かった」


 俺とアリス、そして大勢の野次馬共は訓練場に移動した。


「じゃあ呼び出すぞ」


「眷属召喚!」


 すると半径5m程の魔法陣が展開され、真っ白な竜が出てきた。


『我らが王よ、如何なされました?』

「従魔登録して欲しいんだと。直ぐに終わると思うから指示に従ってくれ。それと、この後馬鹿なことしてるドラゴンをしばきに行くから乗せてってくれ」

『畏まりました』


 後ろを振り返ると、みんな固まっていた。


(今日は固まることが多いな)

「アリス、早く登録を済ませてくれよ。依頼行かなきゃなんだから」

「そうでした。サトルさんには常識が通用しないんでした……」

「何気に酷くないか?」

「事実ですから。それでは、このプレートに血を1滴垂らして下さい。それで登録は完了です」


 レクスは爪で皮膚を裂き、血を垂らす。一滴と言っても、レクスの体は大きいので、プレートは血まみれになってしまった。


「これで登録は完了です。無いとは思いますが、従魔が人に危害を加えた際は主人の責任になりますので、ご理解下さい。最後に、通常の魔物とは違うことを示すために、従魔は首輪をしてもらうことになっています」


 そう言って黒の首輪を差し出してきた。首輪の色は体の色と対になる色にして、わかりやすくしているようだ。





 従魔登録が終わり、俺はいよいよ初の依頼に出発した。

 門を出るときに盛大に驚かれたが。

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