第8話「テンプレと奴隷購入」

 カウンターで待っていると、さっきの受付嬢が蒼銀のカードを持って戻ってきた。


「こちらがEXランクのギルドカードになります。」


 そういった瞬間、周りがざわめき出した。


「EXランクだって?」

「あの小僧がか?」

「有り得ねえだろ。」

「いや、あの腰の武器を見てみろ。」

「見たことねえ形だが、あれはやばいな。」

「あんなのを使ってるなんて。マジかもしれねえな。」


 まあ言いたいことは分かる。

 ついさっき来た奴がEXランクだと言うのだ。気にはなるだろう。


「周りの声なんか無視して、まずはこのカードに血を1滴垂らして下さい。」


 カードと1本の針が手渡された。俺は針を刺して血を出そうと思ったのだが


「刺さらねえな。」


 針は刺さらず、曲がってしまった。防御力が高過ぎる弊害だ。

 受付嬢は顔を引き攣らせながらも笑顔を維持している。

 仕方なく自分の指を噛みきって血を垂らした。

 するとカードが光り、光が収まると、そこには自分の情報が記載されたカードがあった。


「えっと…ギルドカードは紛失すると、再発行の際に手数料として3千エンかかりますのでご注意ください。ギルドカードは魔物を倒すと情報が更新され、討伐の偽像は出来ないようになっています。その他は名前と種族が記載……され………て………」

「どうした?いきなり顔を青ざめさせて。」

「ど、どどどどうしたじゃありませんよ!!何なんですか、種族が黒竜帝って!!」

「ん?それがどうかしたか?」

「はぁ、もういいですよ。これからはサトルさんがなにをしようが驚かないようにします。」

「そうか。それはそれでどうかと思うが。」


 その後、ギルドでのルールなどを聞いて説明は終わった。

 説明の途中で聞いたが、受付嬢さんの名前はアリスだった。

 直後、ギルドでのお約束が来た。


「おいおい、お前どんな手段を使ってEXになったんだ?さっきも黒竜帝とか聞こえたが、お前みたいなガキが本物なはずねえだろ。みんなして騙されてんじゃねーぞ。」

「お前がそう思うなら、そうなんだろうな。お前の中ではな。」


 俺はそう言ってギルドを出ていこうとした。


「おい待てや!!」


 ボトッ


「は?」


 次の瞬間、俺は男の右腕を切り落としていた。


「ぎゃあああああああ!!お、俺の腕がぁ!」

「これ以上俺に関わるな。明確な敵となりたくなければな。」


 言葉と共に周りに殺気を手加減抜きで放った。男ひとりに集中させたのは、これ以上めんどくさいことを増やしたくないだけである。決して殺気のコントロールが苦手な訳ではない。本当だぞ?

 俺は今度こそギルドを出ていった。


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 慧が去った後、ギルドの冒険者達は暫く恐怖で動けなくなっていた。慧の刀をいつ抜いたのか分からない技量に、そしてその殺気に。

 だが、慧はこうも言った。『明確な敵になりたくなければな』と。

 つまり敵にさえならなければ、あの殺気を、あの力を自分に向けられることは無いと瞬時に理解した。

 その後ファガンの冒険者達は、絶対に慧の敵になっては行けないと新人の冒険者、当日ギルドにいなかったもの、そして他の国や都市のギルドに伝えることにした。

 これ以上犠牲を出さないために。


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 冒険者達が決意していた頃、慧は仲間を探しに奴隷市場に来ていた。

 何故奴隷市場なのかと言うと、1番適当な人物を探すのが楽だからだ。


「ここか。すまない、後衛職の奴隷を探しているんだが、適当な奴はいないか?」

「これはお客様。私はこのゾルド商会のトップをしておりますギリエル・ゾルドと申します。お客様のお望みの奴隷をピックアップしてきますので、あちらのお部屋でお待ちください。」

「了解した。」


 奴隷市場は小汚かったが、この商会の中はかなり綺麗だったので、奴隷の質もかなりのものだろう。

 暫くして、俺と同い年くらいの6人の少年少女が連れてこられた。


「これらはお客様の要望の後衛職として働ける奴隷達になります。では、左から順に自己紹介をして行きなさい。」


「私は人族のアイラよ。魔法が得意で火魔法と風魔法を使えるわ。」

「僕はエルフ族のギル。風魔法を矢に付与して戦うことが得意だよ。」

「私はリディア・ディ・シルフィード、伯爵家の次女よ。私がアナタの奴隷になって上げてもいいわ。感謝な「もういい、次だ。」ちょっと!まだ自己紹介が終わってませんわよ!」


 1人目と2人目は良かったが、まだ自分の立場を理解してない奴が1人いたようだ。


「お前は奴隷なんだよ。もう伯爵家の娘じゃない。そんなだから大方奴隷として売られたんだろ。おい、こいつはもういい。連れ出してくれ。」

「畏まりました。こいつを連れていけ。」


 連れ出されるまで喚いていたが、無視されて出ていった。


「商人だから客を試すのは構わないが、相手は選んだ方がいいぞ。俺の敵になりたくなければな。」


 そう殺気と共にギリエルに言うと、彼は体を震わせて本気で焦っていた。


「す、すみません。このことは何卒ご容赦下さい。料金を勉強させていただきますので。」

「別にいい。それより、早く自己紹介を続けさせてくれ。と言っても1人しか立っていないがな。」


 さっき放った殺気でエルフ族の女の子を残し、他の4人は失神してしまっていた。


「わ、私はエルフ族のシルヴィアと言います。回復魔法が得意なので大体の傷は癒せます。」

「そうか。ギリエル、この子にする。」

「ありがとうございます。これが首輪の鍵と証明書になります。料金は7万エンから2万5千引かせて貰い、4万5千エンとなります。」

「これでいいか。」

「確かに受け取りました。またのご利用をお待ちしております。」

「じゃあ行くか。」


 俺はシルヴィアと一緒に店を出た。

シルヴィアは金髪ロングで碧眼だ。身長は160cm程度で胸は絶壁だ。


「さて、まずは金を稼がないとな。」


 俺は、まず宿を取り、金を稼ぐことを当面の目標にした。

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