「オネエとは何者なのか真剣に考える」



「オネエ」


 今やその姿やワードを、テレビで見聞きしないことはないんじゃないかというほどの存在になった彼らのことを、みなさんはどのくらいご存知だろうか?

 正直、私はこの業界に足を踏み入れるまでは「オネエね、女っぽい男の人で男の人が好きなのかなー」くらいにしか思っていなかった。特に興味を持つことも、とりわけオネエネタが面白いと思うこともなかった。そもそもあまり人には興味がないからかもしれないが。


 しかし、この業界に入って最近テレビでやっていたとある番組で、オネエ大集合!みたいな特集をやっていたときに、疑問に思ったのだ。

 そこにはドラァグクイーンやトランスジェンダー女性、そしてゲイの方がごちゃまぜになっていて、ひとくくりにオネエとまとめられていた。私は、「これはオネエのくくりが雑すぎるだろ」と思わず頭を悩ませた。というか、オネエってなんだとさらに疑問が増す要因だった。

 そして「オネエって何だろう?」と真剣に考え始めたのは、実際に私がオネエと呼ばれる人たちに遭遇してからだった。

 初めてゲイバーに会社の懇親会で行ったとき、ママさんたちは女らしい言葉で話していて、自分のことをオネエと自称していた。しかし、テレビで見たオネエとは違って普通の男らしい服装をしていた。

 そして、ママさんは自分のことを「ワタシオンナだから~」と言ったり、「素晴らしい女優でしょ!」と言っていたのだ。

 それを聞いて、「ん?ゲイバーだし、ママさんはゲイだろう。ゲイってことは、自分が男性と思ってて好きな人も男性っていうことだよね?じゃあ心の中は女じゃないよね?????」と、頭の中が崩壊した。



 ――今私の中のオネエに対する考え方はとっても変わった。

 というか、最初は彼らが何者であるのか全くわからなかった。



 ここからの話を話すにあたって、知っておいてほしい考え方がある。

 性とは、グラデーションであるということだ。

 性には単なる男女の二つだけではなく、その間も存在する。二つは両極端に位置しているわけではない。そんな考え方があるのだ。

 知らない人のために一応説明しておこう。

 まず、性のベクトルは4つ存在する。身体的性、性自認、性的指向、性表現だ。


 性別とは、一般的には身体の性を生まれたときに判断したものである。つまりは身体的性がまず存在する。しかし、中にはインターセックス(性分化疾患)という、生まれたときに身体の性の判別がつかない人や、大きくなってから体内に精巣と卵巣の両方があったり、または戸籍の性と違う性別の性器が育ってくる人がいる。つまりは、身体の性もはっきりと二分することはできないのである。


 性自認は、自分をどのような性だと認識しているかということだ。例えば、私は身体的性も女性で、性自認も女性なのでシスジェンダー(身体の性と性自認が一致している人)と言える。もし身体的な性が女性だが、性自認が男性だった場合はトランスジェンダーにあたる。しかし、この性自認にも中間や揺れ動く人、両性だという人も存在する。したがってこれも、二分することはできない。


 性的指向は、好きになる性のことである。両性のことを好きになるバイセクシュアルがいれば、性別を関係なく好きになることができる全性愛のパンセクシュアルも存在する。これもお分かりのとおり、はっきりとどっちと区別ができない人もいる。


 性表現は、服装や外見、言葉遣いなどをどちらの性でしたいかということで、例えば私は女ではあるが、スカートをはくことはあまり好まないから中間から少し女性に寄ったところに位置していると思う。いわゆる男の娘と言われる人たちは、身体の性は男性だがこの性表現が女性ということになる。



 この四つの考え方を踏まえて、オネエについてもう一度考えてみようと思う。

 しかし、自分の力では理解のレベルがあがりそうではなかったので、実際にゲイの人に「オネエって何者ですか?」と尋ねてみた。

 すると、回答はこうだった。


「ゲイカルチャーの作った偶像です」


 その人曰く、オネエとはもともと、女性らしい仕草や口調を好むゲイを指す言葉であったらしい。彼らが好きな言葉を使って、好きな仕草でふるまっていたらそれが女らしい部類に入るもので、オネエと呼ばれ始めたのだとか。

 考えてみれば、女性で男っぽい言葉遣いを使っていたり服装が男っぽくても、きれいな言葉を使いなさいと怒られるか、ボーイッシュとみなされるかである。なぜ大半の人々は、男性が女性っぽい仕草や口調をすると気持ち悪いという感情に直結してしまうのだろうか。かなり不思議である。


 ……つまりは、オネエというのは性自認は関係なく、性表現の部分に関わってくるものなのである。

 問題は、それをメディアがごっちゃにしてしまっていることだ。

 中には、ゲイが全員オネエみたいに言われるのは嫌だとか、トランスジェンダーは女性であってオネエではないとか、悪い影響もかなりある。

 大して、LGBTの存在が知られるという役割は果たしているのだから多めに見るべきなんて意見もあったりする。

 私はやっぱり、正しい理解をしてほしい。とあるトランスジェンダー女性の方が、「オネエタレントの仕事がなくなっちゃったら生きていけないから今のままでいいの!」と話していたけれど、本当にそれでいいのだろうか。

 彼女は女性だ。

 元男性の女性、としてではなく、女性として生きていってほしい。


 オネエ問題はまだまだ解消されないだろうが、この文で少しでも伝わることを願っている。

 

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