「偽造結婚してました」
偽装結婚。
ワンクール前に、とあるドラマで話題になったこのワード。
実は、LGBTコミュニティの中でわりと耳にするワードの一つである。
「結婚してたよ」
LGBTコミュニティでこの言葉を聞くと、結構ドキっとする。
なぜなら、その結婚という言葉がいわゆる今現在正式な婚姻としては認められていない'パートナーシップ制度'を利用したものなのか、それとも婚姻届けによる結婚なのかがわからないからだ。
自身がゲイやレズビアンだと自認をしていて、婚姻届けによる結婚をしているのなら、明らかに踏み込んでいいのかわからない話題。
しかし、中にはさらっと「奥さんいてさ」とか「旦那さんいる」「実は子供が……」とか言ってくる人もいる。
率直に言わせてほしい。
――そのあと、どういう反応をすればいいのか皆目見当もつかない。
例えば、「子供いるんだ。俺の子供もゲイってこと知っててさ~」とゲイ男性にさらっと言われたときは、これが初めての結婚していますカミングアウトだったので、反応の引き出しがなくかなり戸惑った。
正直どう反応したらいいのか、まったくわからなかった。
しまいには「ゲイ友にお前はいいから息子を紹介しろ!ってよく言われるんだよね~」と言われて、さらに反応に困った。
気になる。とてつもなく気になるのである。
奥さんはゲイだということを知っているのか、というかそもそもなんで結婚したのか。そして今結婚しているのか、離婚していないのか。
聞いてみたいことは山のようにある。
しかし、聞けるわけがない。
こういう話題に踏み込んでいいのか、わからないのでぜひ教えてほしい。
***
こんな感じで、この業界には同性愛者の中にも結構法の下の結婚をしている人たちがいる。そして、彼らの中にはいくつかのパターンがある。
一つ目は、自分が同性愛者だと気づかず、違和感はあったけどとりあえず結婚して、あとから気づいた人たち。いわゆる、遅咲きゲイと遅咲きレズビアンパターン。彼らはかなり悩んでいる人が多い。
二つ目は、結婚すれば気持ちが変わるかもしれない、異性愛者になれるかもしれないと結婚してみる人たち。結局何も変わらなくて、離婚したり次のパターンに当てはまったりする人が多い。
三つ目は、体裁を保つためにあきらめて結婚する人たち。ゲイバーやレズビアンバーには、既婚者もたまにいる。自分を偽って結婚して、同性の浮気相手を持っていることもあったり。それって不倫に入るのか?なかなかきわどいラインである。
これら三つの中には、異性パートナーに自分が同性愛者だとカミングアウトをしている人もいたりする。例えばゲイ男性と結婚している女性は、働いていないと生計が立てられないから、子供がいるからと離婚をしないという選択を選んだりする。これも中々に酷である。
四つ目は、三つ目と似ているが、同じように考えている異性の同性愛者と偽装結婚をする人たち。親を安心させたいとか思う人は、こんな感じの形態をとっている人もいる。そして、家は別にしてお互いのパートナーと暮らしていたりする。加えて、子供を作って一人ずつ同性パートナーと育てていたりすることもある。このタイプの方にはまだ出会ったことはないのだが、結構いると聞く。
「偽装結婚って現実離れしたような言葉だなあ」と思っていたが、LGBTコミュニティにはあるあるなのだ。
同性婚ができるようになって、同性愛も普通と認められるようになれば、悩んで好きでもない人と結婚したり、試しに結婚してみたりといったことは少しずつ減ってくるだろう。
家庭を持ち、パートナーと子供と一戸建てで暮らすことが一番王道の幸せと考えている日本では、まだまだ遠い道なのかもしれないけど。
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