「初めてのレズビアンバー」
そんなこんなで新宿二丁目に足繁く通う日々(多いときは平日3日くらい)で、未開の地があった。
それは、ビアンバー。
つまりはゲイバーと同じく、レズビアン向けのバーである。
そんなんあったの?と言われるかもしれないが、ビアンバーはゲイバーに比べると遥かに数が少ない。二丁目にあるゲイバーは250~300店舗ほどと言われているが、ビアンバーはその10分の1にも満たない数しかない。
女子は夜遊びができなかったから、その歴史もまだ浅いのだ。
かねてからゲイバーには行ったし、ビアンバーにも行きたいと思っていた私。その機会は突然訪れた。
前回お話した国際カップルの二人と新宿でご飯を食べた後、「ビアンバー行ってみる?」と誘ってくれたのだ!
やっぱり一人で行くのはなんだか不安だし、ノンケ(ストレート)の女子と三人で行くのもなんかなあ……迷惑じゃないかなあ……、と思っていたので返事は一択しかなかった。
***
新宿から歩いて、二丁目にあるとあるビアンバーに着いた。
このビアンバーは土曜日は女子だけしか入れないお店だった。
ビアンバーは、ゲイバーよりも男性をシャットダウンしているところが多い気がする。もちろん、ゲイバーにも女子禁制のところは存在するが、最近はいわゆる'観光バー'という誰でも入れるお店が増えているとよく聞く。かつてよりも、インターネットなどの出会いなども増えて客入りが少なくなってきているから、それに応じて変化をせざるを得なかったのかもしれない。
男性も入れるレズビアンバーは確かにあるが、入ったら結構白い目で見られることが多いと聞く。私の友達も、こう言っていた。
「前に一度来たとき、スーツ姿のオトコ二人組が入ってきて、私たちを冷やかすような目で見ててさ。めっちゃいやだった。オトコなんてイラナイ!って感じ~」
彼らがどんなつもりで入ったのか知らないが、ビアンの友達なしで入ったら間違いなくこんな感じに受け取られるので、もし興味本位で入ろうとか思っている人がいたら辞めておいたほうがいい。彼女たちにとっても迷惑なこと極まりないから。
初めてのビアンバーに少し緊張しながら足を踏み入れると、中には女子!女子!女子!
まさしく女の園って具合だった。
そこはクラブみたいな雰囲気のビアンバーで、カウンターでワンドリンクを頼んで、立って飲む形式(ここまで言ったらもう店名が分かる人は分かるだろう)。私がよくいくゲイバーは座ってしっぽりと飲もうぜ、みたいなところが多いので、なんだか少し想像と違って驚いた。所狭しとカラオケを歌いながらダンスをしている女子たち。
バーに行く身としては致命的だが、お酒が全く飲めないのでソフトドリンクを注文し、適当にカバンを置いてあたりを見渡す。結構外国人が多い。半数くらいおそらく外国から来ていた女の子だった。すごい国際的。
「久しぶり~!」
「わー!」
友達カップルもバーに行くのは久しぶりだったらしく、友達に遭遇しては挨拶をしている。私もそれにくっついて行った。
「あれ? 友達?」
「そう、ノンケの子なんだけどね」
「こんばんは~」
「へー! ノンケ! 私もノンケだよ!」
「もう、ウソつくなよ~」
こんな感じで、私が異性愛者だとしても別に大して気にされなかった。
私は「ノンケがビアンバーに来てるの? はあ?」と言われるような気がして心配していたのだが、そんな心配は無用だったらしい。彼女たちは、おおらかで優しかった。これも私の中の一種の偏見だったようだ。
***
「ねえ、もしよかったら一人にしようか?」
「いいね~! 結構ちらちら見られてるし、話かけてくる人いるかもよ~!」
にやにやと二人で同じような顔をしながら私にそんなたくらみを持ちかけてきた悪い友達カップル。
「いやいやいや、それは悪いよ! 悪い大人だよ! 悪いビアンだよ! それはダメだよ!」
もし話しかけられて、私がストレートと言った日にはどんな顔をされるか……。と思い全力で断った。確かにさっきからやたらと目が合うな、という子がいたのだが、そこらへんは申し訳ないが私は今のところストレート。しかもパートナーもいるし、申し訳なさの方が勝つ。
「大丈夫だと思うけどなー」
「ねー。残念ー」
なんでもやってみる派の私だが、さすがにビアンをだますようなマネはアライとしてできぬ。すまん。
こんな感じで思う存分に楽しみ、なんだかゲイバーよりビアンバーの方が好きかも……?と思いつつ、私はバーを後にした。
友達カップルは、ここではやっぱり開放的にふるまえるようだった。いつの日か、道で堂々とできる日が来てほしいと願う。
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