第33話 入院と暗殺
「あーあ、変な時間に起きちゃった」
昼間自分の魔法で寝たのは良いが、お陰で真夜中にが覚めてしまった。
明かりの落とされた病院の夜というのはなんとなく怖いものである。
「絶対安静」と言われているので、私はベッドからも降りずまんじりとしていたのだが……。
「お腹空いたな」
どんな時でもお腹が空く。これが私の取り柄である。すっかり寝コケていたので、晩ご飯を食べ損ねてしまった……と思ったら、部屋の隅にあるテーブルに私の食事が置いたままになっていた。
あんまり美味しくないというのが定番の病院食だが、これだけ時間が経ったらさらに不味いに決まっている。しかし、ないよりましだ。なんでも薬と思え!!
私はすっかり冷めてしまった食事に手を付けた。不味いが空腹よりいい。
全て食べ終わると、とりあえず人心地付いた。ベッドに戻ると色々考える。さすがに帰ったようだが、ジーンどうしているかな……。
などと考えていると、いきなり強烈な吐き気に襲われた。個室にはトイレもあったが、そこまでももたずに、先ほど食べたものを全部床にまき散らしてしまう。私はなんとかナースコールのボタンを押した。
「どうしました……!?」
寝ていたのか、半分瞼が閉じていた看護師さんの目が見開かれた。
「先生、先生!!」
そして、大声で先生を呼ぶ。
「どうした!?」
慌てて駆け込んできた先生が、ひたすら吐きまくる私の様子を見てただ事ではないと察したらしい。
「なにかの薬物だ。これか!!」
私が食べたばかりの食器類を見て先生が叫ぶ。そしてなにやら複雑な魔法を使った。
「まずい、これはヒラルアとエレスの混合剤だ。至急処置室へ!!」
吐きながらもその声が聞こえる。どちらも致死量が低い毒薬で、昔から暗殺に使われる定番のものだ。
「はい、ストレッチャー持って来ます」
看護師さんが慌てて病室を飛び出した。それからは蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
私はストレッチャーで処置室に運ばれた。部屋の真ん中に大きな魔方陣が描かれた中央のベッドに移され、先生が渾身の解毒魔法を放つ。その繰り返しだ。
……あー、さすがに死ぬかも。
私はなんとなく思った。ヒラルアもセレスも本来は単体で使う。それを両方混ぜるなど殺意の塊でしかない。ジーンの事が頭を過ぎったが、今は全然余裕が無い。
……結局、私は何とか危機を乗り越えた。徹夜で先生が使ってくれた解毒魔法のお陰だ。
部屋に戻されると、警備隊の制服組が現場検証していた。
「今は何も聞きません。落ちついたらお話を聞かせてください」
現場を指揮っていた人の良さそうな刑事がそう言って来た。
私の部屋は使えなくなったので、そのまま別室へと移動となった。
このメロンは何ですか?と聞かれたが、さすがに笑って誤魔化すしかなかった。
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