第30話 探検隊

 サロメテに帰ってから1週間。これといった事も無く、私とジーンのお付き合いも変わらない。やはり、結婚が先で恋愛が後というのはやりにくい。

 そうそう、忘れていたわけではないのだが今はノル第一王子が亡くなった事で、国中が喪中である。

 無駄に派手好きな国王ではあるが、さすがに全てのめでたい式典は中止となっていた。

「なんかこう辛気くさくて嫌じゃのう」

 第一王子、すなわち自分の長男を失った悲しみを晴らすかのように、いつもなにかイベントを考えている。

 気持ちは分からないでもないが、もう一回私たちの結婚式をやろうと言い出したときはさすがにビビった。

「はぁ、暇ねぇ」

 ジーンは学校に行き、私はやることがなくて暇だった。

 部屋の片付けや洗濯やなんやは全て侍女の仕事だ。

 こうなるとイタズラしたい病がうずくのだが、さすがに王族としてまずいだろう。

「私も大人になったものね……」

 呟きながら廊下を歩く。ジーンがいる休日を除いて、毎日がこれの連続だ。

 そういえば、私はこの城の事をあまり知らない。

 大きすぎて全て見て回れないのだ。

 どうせ時間もあることだしと、私は国王の部屋に行った。

「なに、城を見て回りたいとな」

 国王に話すと、驚いたような返事が返って来た。

「いいのう。わしも暇だったのだ。ひとつ探検しようではないか」

 ジーンが言うには国王すら知らないエリアや部屋があるという。

 この反応を見る限り、それは間違いなかったようだ。

「では行くぞ。まずは北エリアからだ」

 国王に引き連れられ、私は城の探索に旅立ったのだった。



 城は宝の山だった。

 幻といわれる絵画や美術品がいくつも出る事出る事。

 魔法に関する道具や薬品なども豊富で、これを全部売ったらいくら? という考えがつい浮かんでしまう。

 そんなものが物置にポンと無造作に置いてあるのだ。恐るべしサロメテ王国。

「こんなもんだろうな。さすがに疲れただろう」

 国王の音頭で、私たちは国王の部屋に戻った。窓の外がすでに夕暮れになっている。

「わしも知らぬものがいくつもあった、美術品類は適宜飾っておこう。もったいないからな」

 国王は笑った。

「そうですね。美術品は人の目に触れてこそ価値がありますからね」

 私は国王にそう言う。

「して、話は変わるが、ジーンとの生活はどうじゃ?」

 いつものエロオヤジモードでは無く、真面目に聞いてきた。

「ええ、順調です。ただ、年齢差がありすぎて妻というより何でも相談出来るお姉さんという感じになってしまって……」

 私は思っていた事を全て明かした。

「まあ、無理も無いな。ジーンはまだ14才。そなたとはちょうど10才違う。まだジーンに大人の恋愛は出来ぬじゃろう」

 国王はそう言って頷いた。

「しかし、我が国の希望はそなたしかおらぬ。第1王子から第4王子までの嫁は全て亡くなっておる。かなり無理があるのは承知だが、そなたしか跡継ぎを生めぬのだ」

 私はひっくり返りそうになった。そういえば、他の王子の奥さんに会わないなぁと思っていたらそういう事か。

「わしとて子供を作る機械のようにそなたを言いたくはないのだがそれが事実だ。なんとしてでもジーンとの子を産んで欲しい」

 さすが国王、真面目なときはその眼力が強い。真顔で言われるとこちらは何も言えなくなる。

 しかし、ジーンと子供……考えられない。

「さて、わしからの話は以上だ。そろそろジーンが帰って来るだろう。イチャイチャするがよい」

 国王はそう言ってニヤリと笑みを浮かべたのだった。

 ……このスケベジジイ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る