第27話 船旅にて
行きは2週間の船旅だったが、帰りは海流の影響で1ヶ月くらい掛かるらしい。
というわけで、船室に入った私たちだったが……。
「ねぇ、添い寝して」
ジーンが甘えた声で言う。なぜか知らないが、急に甘ったれ坊主になってしまった。
「もう、しょうがないわね……」
甘やかす私も私なのだが、なぜかジーンには勝てない。
私はベッドに潜りこんだ。ほぼ同時に、ジーンが抱きついてくる。
「アリシアは自分の国と僕の国どっちが好き?」
……そう来たか。
「私はセフェム王国の第6王女、でも今はジーンの嫁さん。答えは分かるでしょ?」
そう、私はもうセフェム王家の者ではない。サロメテ王国の王族だ。
「それじゃ答えになってないよ。はっきり言って」
やけに粘るジーン。
「もちろん、セフェム王国には思い入れはあるわよ。私の実家だしね。でも今はジーンがいる。とっても手の掛かる甘えん坊がね。放っておけないわよ」
私がそう言うと、ジーンは予想通り頬を膨らませた。
「甘えん坊じゃないもん。僕だって……」
なにか言いかけて止まった。恐らく、なにも言えなかったのだろう。
「とにかくアリシアは僕のお嫁さんなの。セフェムに帰るなんて言ったら僕の部屋に閉じ込めるからね!!」
……本当にやりかねんな。これは。
「いまさら帰るわけないでしょ。私の今の家はサロメテの城よ。これで問題ないでしょ?」
「うん!!」
……はぁ、このやりとりを何回繰り返しただろうか?
今は政略結婚だった事は忘れて、なんとかジーンを恋愛的な意味で好きになろうとしている最中だ。
私がいなければ生きていけないほど好かれるとは、私も随分と出世(?)したものである。
しばらく考えている間にジーンは寝てしまった。彼の抱きつきをはずそうとしたが、かなりしっかりしていて外せそうにない。
……やれやれ。随分好かれたわね。
悪い気はしないが……なんか複雑。私の中ではやっぱり奥さんじゃなくてお姉さんなのよね。彼のことを恋愛的な意味で好きになる日はくるのだろうか?
「はぁ、まあゆっくりやりましょ」
結局、その結論に落ち着き私も寝ることにした。
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