第18話 土いじりへゴー!!
翌朝、早く起きたジーンと私は城の中庭を散策していた。
中庭といっても猫の額ほどで、一周するのにそれほど時間が掛からない。
「アリシアの城って本当に風情があるよね。こういうの好きなんだ」
中庭には適度な場所に庭石が置かれ、地面には白い玉砂利が敷いてある。・
昔から見慣れている私は何とも思わないが、ジーンには新鮮に映るようだ。
「意外とシブい趣味しているわね」
笑いながら私が言うと、ジーンも笑った。
「こういうのも王族の嗜みだよ。知らないと恥を掻くし。絵では見たことあるけど、本物は初めてだなぁ」
何か感慨深げにそう言う。
……シブい。やっぱりシブい。
「そういえば、朝の挨拶まだだったね」
いきなり私の手を握りジーンはこちらに振り向いた。
「えっ?」
……あれ、さっきおはようって言ったはずだけど?
と思った瞬間、ジーンはいきなりキスしてきた。それも、ちょっとだけど舌まで入れる高等技で。
「ほんげぇぇぇl!?」
私は思わず変な声を出してしまった。
「あはは、アリシアにはやっぱり1番これが効くね」
ジーンが腹を抱えて笑っている。
「あのねぇ、やたらとキスしないの。大体、どこで舌まで入れるテク覚えたのよ!!」
私は赤面しながらそう言った。
相手は自分の旦那だし別に恥ずかしい事では無いのだが、やはり体が反応してしまう。
城なんかにいたら男性経験無くて当然なのだ。
「んー学校の先生。僕だって色々研究しているんだよ」
……どんな学校だ。まったく。
「さて、目が覚めたところで、今日はどうするの? 僕はこのまま城でゆっくりしていてもいいけど……」
ジーンがそう聞いて来た。
それも悪くないが、せっかくここまで来て引きこもりももったいない。
「出かけるわよ。この近くに温泉……あっ」
その温泉には国王夫妻がいるはずである。狭い温泉街なので出会ってしまうこと確実だ。
参った。何も無いじゃないか。我が故郷。
「温泉は最後にしようよ。他にどこかないかな」
ジーンの提案に私は賛成だ。
「そうねぇ。農業体験してみる?」
苦肉の策がこれだった。他に無いのである
「あっ、面白そう。僕やったことないんだ」
意外にもジーンは乗ってきた。
田舎育ちの私はともかく、土になど触った事がなさそうなジーンなのに。
「うーん、イマイチぱっとしないけど行ってみますか」
この時期はアレサ芋というこのセフェム特有の芋が最盛期を迎えているはずである。
どの農民も収穫に急がしいが、その中でも農業体験をさせてくれる場所を私は何カ所か知っている。
こうして、私たちは農業体験に向かったのだった。
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