第17話 アリシアの家

 懐かしの我が家である。24年間暮らしていたのだから当然といえば当然だ。

「へぇ、ここがアリシアの家かぁ。いい雰囲気だね」

 間もなくセフェム城である。サロメテの城とは比較にならない規模ではあるが、馬車から見える城を見てジーンはそう言ってくれた。

「ありがとう。狭いけどゆっくりしてね」

 ガラガラと馬車は進み、そのまま城の車止めで止まる。

 馬車のドアが開き、私たちは地面に降りた。

「ふぅ、お疲れ。到着よ」

 私がそう言うと、ジーンは大きく伸びをした。

「アリシアもお疲れさま。本当に良い城だね」

 ジーンは城を見ながらそう言ってくれた。

「サロメテとは比較にならないでしょうど、ゆっくりしようね」

 ……そういや私の部屋、まだあるのかな。

「うん、楽しみにしているよ」

「おーい、2人とも。そろそろ晩ご飯だし急げよー」

 とーさんが声をかけてきた。

「はーい」

 私はとーさんに返す。

「なんか、のどかで本当にいいなぁ」

 ジーンが伸びをしながら言う。

「それが売りというか、まあ単なる田舎なんだけどね」

 この国は特に資源もない田舎。だからこそ、どの国からも侵略対称にならない。実はそれが最大のウリである。ジーンには言わないけどね。

「さて、ご飯が待っているし中に入ろうか。料理長はけっこう腕がいいわよ」

 そう言って、私はジーンに片目を閉じてみせる。

「それは楽しみだね。早く行こう!!」

 ジーンに引っ張られるようにして、私は城の中に入ったのだった。


「あー、やっぱり」

 私がサロメテに嫁いでから、もう1年以上経っている。

 セフェム城にあった私の部屋は無くなっていて、色々なものが雑多に放り込まれた物置になっていた。

 結婚、それも政略結婚となれば、2度と戻って来る事が無いというのが普通だ。

「あーあ、どうする?」

 ジーンがなぜか楽しそうに聞く。

「客室があるからそっちを使いましょう。誰も来なくても、毎日掃除はしてあるはずだから大丈夫」

 私たちは城の入り組んだ通路を抜け、客室のドアを開けるとそこはまともだった。

「狭いけどゆっくりしましょ」

 客室の大きさはジーンや私の部屋の半分すらないが、まったりするにはちょうどいい広さだ。

 いちおう部屋の鍵をかけ、狭いソファに2人で腰を下ろす。穏やかな時間が流れる中、私とジーンは何も言わずただ時間が過ぎて行く。

「なんだか疲れたわねぇ」

 私がそう言うとジーンは黙って私の体に身を寄せてきた。その様子がまた可愛い。

 ……って、うちの旦那なんですけど。やれやれ。

 ジーンからスースー寝息が聞こえてきた。あー寝たか。テンションマックスだと気づかないが、旅というのは意外と疲れるのだ。こういう所も子供である。

「これは動けないわね。私も寝るか……」

 こうして、旅行初日の夜が過ぎて行く。

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