第13話 新婚旅行?
「なに、新婚旅行とな。けしからん。もっとやれ」
ジーンに引っ張られるようにして国王の下にいくと、国王の答えはこれだった。
「あ、あの、本当によろしいのですか?」
私は国王に問いかけた。
「当たり前だろう。なぜ身内が亡くなったからといって、生きているものが謹慎せねばならんのだ。わしはそういうのが1番嫌いじゃ。して、どこにいくのじゃ?」
「それはまだこれから……」
「アリシアの故郷です。1度この目で見ておきたいのです」
私の言葉を遮って、ジーンが割り込んだ。
……なんですって!?
「なるほど、セフェム王国か。あそこは最高に気持ちいい温泉があると聞く。こちらの王族となった嫁の故郷に行くなど、ますますけしからんな。いいぞもっともっとやれ。なんならわしもついて行くぞ。今年でちょうど結婚20年目だしな」
……ええっ!?
「あら、覚えていてくださったのですね」
王妃様が驚いた様子で言う。
「当たり前じゃ。わしを何だと思っておる」
「イカレじじい」
王妃様に即答され、国王様はコケた。
「よし、決めたぞ。わしらも便乗して20周年旅行じゃ。なに若い者の邪魔はせんよ。まあ、夜這いするかも……」
瞬間、笑顔のままで王妃の右フックからの左ボディが国王にまともに食い込んだ。
……おーと、今度はコンビネーション!! 国王は戦闘不能になったぁ!!
「本当にごめんなさいね。うちの人は言い出したら聞かないから。さっそくセフェム王国に書簡を送っておきます」
側に控えていた事務官が素早く動く。
……ちょと待った。私の意思は!?
「あの、私の国は本当に田舎ですよ? 確かに温泉はありますが、逆に言うとそれだけですよ?」
いきなり過ぎる急な展開に、私は慌ててそう言った。
「僕のアリシアの故郷を見たい。自然だと思うよ?」
ジーンがそう言ってきた。
「それはそうかもしれないけど、私はこの国のこと知らないから、そっちの方が良かったんだけどな」
無駄と知りつつ私はジーンに言った。
「それは後でいくらでもできるよ。僕が案内してあげる。こういう機会じゃないとアリシアの故郷が見られないから……」
そう言われてしまうと、私も黙るしかなかった。
とーさんびっくりするだろうな。ショック死するかも……。
こうして、トントン拍子で私たちの新婚旅行先が決まってしまった。勝手に……。
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