第10話 第一王子の死と急接近
その日、城は大騒ぎになった。私とジーンは王に呼ばれた。
「お父様……どうされましたか?」
国王と王妃の前に傅き、ジーンが聞く。もちろん、私も傅く姿勢だ。
「困った事が起きた。ノルが戦死した……」
いつもどっかすっ飛んでる国王が、今日は真面目である。王妃はただすすり泣くだけだった。
……あちゃー、こういう空気弱い。
「ノル兄様が!?」
ジーンが驚きの声を上げるが、ノルって何者様?
「あっ、アリシアには説明していなかったな。ノルは我が長男。第一王子だ」
国王が手短に紹介する。うげっ、それって大事じゃないの!!
通常、第一王位継承権を持つ王子には、それはもう国王としての全てを幼少から叩き込まれている。当然国の秘密も……。
その第一王子が亡くなったとなれば、国家の一大事である。
「儂は取り急ぎ現場に向かわねばならぬ。その間、ジーンを儂の名代として一時的に国王の権限を委譲するとする。アリシアよしっかりサポートしてくれ」
……ええええええ!?
「なぜジーンなのですか。他にご子息様が……」
私は堪らず国王に言ってしまった。
「そう言わないでくれ。今城にいる息子はジーンしかおらぬ。他の息子は地方遠征中なのだ」
困ったように国王様が言う。
「結婚したばかりで申し訳ないがよろしく頼む」
もはや是非も無しという感じで国王様が言う。そりゃ私だって王族の出だが、田舎の小さな国である。こんな規模の国ではない。
「畏まりました。父……国王様。最善を尽くします。
ジーンがそう言ってさらに頭を下げた。私も黙ってそれに倣う。
「4ヶ月くらいだと思う。頼んだぞ」
国王様との謁見を終えると、ジーンは珍しく私の部屋に行きたいと言った。
もちろん、拒む理由はない。私は何も言わずに自室に戻った。
引っ越しの業者が配置したままの家具が味気ないが、今はそんなことはどうでも良い。
ソファはボロいからと、私とジーンはベッドに横になった。
何も言わず、ジーンは私の唇を貪った。狂ったように貪った。それが終わると、私の着ている服を乱暴にはぎ取り自分も服を脱ぐ。
……いよいよきたか。
私は覚悟を決める。そもそもベッドに誘った時点で覚悟は決めていた。しかし、私の想像とは違う事が起きた。
ジーンは私に抱きついたのだ。それも強く。彼の体温が伝わって来る。
「ごめんね。こんな事をするつもりじゃなかった。ノル兄様が死ぬなんてあり得ない。僕が国王の名代なんてあり得ない。そう思ったら、アリシアが欲しくて欲しくて」
彼は泣いていた。私の覚悟は無駄に終わったがそれはいい。私は抱きついているジーンをそっと撫でた。ここで強い女なら、男ならベショベショくっついてんじゃねぇ!!とか突き放すのだろうが、私はそこまでは強くなかった。
こうして2人くっついたまま時は流れ、やがて朝を迎えたのだった。
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