第7話 城下町散策

 久しぶりに私とジーンは城下に出た。特に用事はない。ただの散歩だ。

 これがまた面倒で、どこにどういう経路で移動し直近の護衛とコース上の護衛の手配。さらには店には毒味役と護衛の配置と事前に計画しておかねばならない。

 これで散歩と言うには堅苦しすぎるが、これは致し方ない所か……。

 ずっと城にいたので、久しぶりの外はやはり気持ちいい。

「ジーン、どこに行く? って、もう決まっているんだった」

 私たちは事前に決められた道、事前に決められた店にしか入れない。

 これを無視すると、もしかしたら外出禁止になるかもしれない。国王ですら手出しが出来ない部署。それが事務管理部だった。

「あはは、でもいいじゃないですか。こうしてアリシアと出かけられますから」

 ジーンが嬉しい事を言ってくれる。

「じゃあ行きましょうか」

 私がそう言うとジーンが手を取った。

 リードしてくれたり甘えたり泣いたり、本当に忙しい子だ。

 私は黙ってジーンに従う。先日手に刻まれた紋章がなんとなく重い。

「まずは大通りですね」

 ジーンと手を繋ぎながら、私たち城の大扉を抜けて城外に出た。

 すかさず背後にフル装備の護衛が付くが、とりあえず気にしないように頑張る。

 今回の散歩は大した距離ではないが、そんな事はどうでもいい。なんだかんだと忙しくて、結婚後2人の時間がなかったのだ。

「こうしてゆっくりするのも久々だなぁ」

 思い切り深呼吸しながら、私は誰ともなく言った。

「このところ忙しかったかったですからね。今日は私もゆっくりできて嬉しいです」

 ジーンがそう言って笑った。

「あのさ、もう結婚したんだし言葉遣い直さない? 敬語とか丁寧語じゃ疲れるわ」

 私がそう言うと、ジーンはポカンとした。

「そうですか?」

 どうやら気がついていなかったらしい。

「みんなの前じゃまずいだろうけど、私といるときは崩しちゃって。やりにくいから」

 私はそう言って笑った。

「そうですか……」

 ジーンが言った瞬間、私はデコピンした。

「言った側からダメじゃない」

「そうですね……じゃやなかった、そうだね」

 なんだかやりにくそうだったが、ジーンは頑張った。

「その調子その調子。はぁ、気楽になったわ」

「アリシアが喜ぶなら頑張るよ。ちょっと慣れないけど」

 ジーンがそう言って笑った。

 こうして、私たちのデートは無事に終わったのだった。

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