第3話 木曜日
この日の朝は、水璃からの質問責めから始まった。
「千晴!なんで言ってくれなかったの!宮本くんと付き合ってるんでしょ!?」
「へ?」
予想外の質問に思わず水璃を2度見する。
「昨日グラウンドから見えたの!」
「あー…」
冷静になって考えるとそうかもしれない。男女が2人っきりで帰ってるなんて何も知らないはたから見ればカップルだと自分でも思う。
「違うよ、実はね…」
結局全部話すことになってしまった。お弁当屋さんのことも湊和のことも。
「そっか…。宮本くんってそんな苦労してたんだね。でも、水璃は千晴と宮本くんアリだと思うよ!」
ん?キーンコーンカーンコーン。私の疑問は解消されることなく授業開始の合図が鳴った。無意識に左斜め前を見る。やっぱり湊和は寝ていた。今なら分かる気がする。湊和はきっと4年前こっちに来てから毎日朝早くから弁当屋さんに立って働いてるんだって。ニコリと笑う笑顔の奥には優しさが溢れてるんだって。私はもっと湊和のことを知りたくなった。放課後やっぱり2人になった教室で湊和が私を呼ぶ。
「千晴ちゃん一緒に帰ろう」
私はやっぱりコクリと頷いて湊和に付いて歩く。湊和はきっと私の歩幅に合わせてくれてる。だって、身長の低い私が普通に歩いていたら湊和の隣には並んで歩けないから。その日のうちに、連絡先も交換した。毎日放課後、一緒に帰るそれだけの時間。たわいもない話。でもそれが私には嬉しくてくすぐったいような気持ちになって幸せな時間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます