第29話 1/4

「今日から仕事始めかよ。かったりぃなぁ。もっと良い世の中なら住みやすいんだけどな。」公務員である男の疲れは正月の6日間では取れない。身体の疲れは取れてもかえって精神の病みに拍車がかかる。

「なぁ、そこの兄さん俺と協力して金になる事をしないか?」博士気取りの男が話し掛けてくる。

「実は、今とある装甲の研究をしていてね。君にはその力を試してもらいたい。」

「そ、装甲?なんの話かわかりかねますが。」

「申し遅れた。私は虎山誠人という。今、毎年のように取引所が銀行強盗に襲われている。君にはこのシステムを使って敵を倒して欲しい。」

「でも、俺は…その格闘技も、やってないし。他に適任者がおるんじゃ?」

「大丈夫だ。このレーダーがお前を適合者、鯱の神に認定したのじゃ。」

「分かった。この飯野公彦が例の場所で戦ってくるわ。会社、躑躅山市役所には連絡してくれるんだろうな?」

「勿論。これは躑躅山市が国から委託された実験でありますから。」

「よし。任せておけ。格闘は自信がないが、サッカー部だったからな。動きは早いぜ。」

「今からベルトを装着します。敵が見えたらこのペンダントを差し込んで下さい。」鯱の形をしたペンダントを渡された。

「分かりました。」


暫く歩くと、例の取引所が見えてきた。目の前にいる門番は黒ずくめの鎧武者であった。

「あれか。頼んだで。grampus(グランパス)」石で出来た鯱のペンダントを差し込むと黄金の光に包まれて鯱が象られたマスクと黄金色に輝く装甲が現れた。

「貴様!この先は通さんぞ!」

「ごめん!」門番を一撃で倒すと。

「よくもやってくれたな。」10人の鎧武者が現れた。1人の司令塔は紫の鎧で、そこを取り巻く四天王だと思しき青い鎧武者、2人の黄色い鎧武者、そして3人の白い鎧武者がそこにいた。「これはサッカーの配列を表しているのか?」ちょうど敵は11人。そしてさっき倒したのが黒い鎧武者でフォワード、白いのがオフェンス、黄色がボランチ、そして青がディフェンス、紫がゴールキーパーだと思った。

「キックオフだ!取引所を邪魔すんじゃねぇ!」白武者から倒して行く。なかなか強かった。「手が利かなかったらこれだ!」今までは拳を使って倒していたが、手こずった為に剣を召喚した。剣も黄金に輝いている。剣を使って黄武者まで倒した。

「なかなかやるのぉ。俺たちはなぁ!仕事始めが大嫌いなんだよ!だってよ。折角の休みが終わっちまってよ。鬱になるべよ。特にこの時期は太陽の光が少ねぇもんだからよ。やっちまいな!四天王よ。」妙に納得する点があり、躊躇したが再び剣を振り回した。

「それでも頑張っぺよ!景気はいいんだ!やればやるだけ金になる!」

あっという間に四天王も倒し、主将に迫った。

「教えろ!貴様の目的はなんだ!」

「これは民意の反映だ!人々はもっと休みたいのだ!」

「そうか!行くぜ!ゴールデングランパスクラッシュ!」剣に光を集めそのパワーで敵をたおした。


「お疲れさん。今年は景気のいい年になりますわ。この剣は景気が良くなると鯱鉾モードで輝くのですわ。いつもは普通の鯱なんですがね。」

「それは凄いですな。謝礼は何かあるんですか?」

「50万円差し上げましょう。またお会いしたらよろしくお願いします。」50万円を渡した後、彼…虎山博士はあっという間に消え去った。

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