第27話1/1

一年が終わり、また新しい一年が始まる。何かが変わってしまう気がする。パブリックドメインという制度で有名な画家が苦心して書いた絵や、小説や音楽から著作権が切れると思うと何か報われない気分がある。「ワシは死にとうない。ワシの作ったものがいずれはみんなのものになるんだ!」陶芸の師匠はそう言いながら、脳梗塞で死んでしまった。死に怯えるものこそ早死にするのである。60代後半での死であった。「私の亡き師匠である長谷川は今年で没後50年となります。」当時私は20歳の若造であったが、それから50年が経ち、70歳の老人となっている。ずっと陶器で世界平和を目指していこうというスタンスで活動してきた。師匠の長谷川が死んだ後は師匠をつけず己自身で腕を磨いていった。そして師匠の著作権が切れる年の元日である今日、思い直したことがある。著作権が消滅することによって人々に気軽に愛される存在となるのだと。

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