第20話 9/1

俺の名前は桐崎聖哉だ。あの一件でシラモリグループの一人娘である零乃と仲良くなり、遂に結婚をすることになったのだが、当時は裏の顔がある事をまだ知らなかった。シラモリグループという物は善良な企業であるが、そこを守る一つの部隊である剛農連合会というグループが存在しているのであった。農場が荒らされれば力ずくでその犯人を殴りつけて記憶喪失に導くような組織であった。

零乃の父である白森 零央れおによって個人経営であった桐崎ラボは、桐崎総業と名を改めて、害獣対策などを研究する専門的な中規模企業に改編された。得意な特殊スーツの開発によって身体を使って猪や熊などと争うことが出来るようになった。

「何かお呼びでしょうか。義父上(ちちうえ)様。」

「今日はレビューを見に行くぞ。」

「レビュー?何ですか?」

「レビューも知らんのか。宝塚の舞台やぞ!だがしかし、今日は矢澤工業の兵装部が一戦を申し込んでおるからな。我々が勝利してから二百十日。あいつら防災の日に血の雨降らせたる。そう言って撤退していったからな。」

「一体なんで兵装部なんてものが?」

「奥の手じゃ。日本人は平和主義で軍隊を持たんでな。緊急時があったら義勇兵として挙兵できるように準備しておる。」

「何か手は打ってあるのですか?」

「何も打っておらん。桐崎君。いや、聖哉の実力で打ち負かせると思ってな。」零央は自信満々に言う。

「もっと早く言ってくださいよ。」

「お父さん。聖哉。私も行くわ。」まさか、戦に身を投じるつもりなのか。この娘は。

「零乃。でも何か装備はあるの?流石に零乃の分は用意していないよ。」

「聖哉君。問題はないよ。あの前に不良相手に使用していたスーツがあるでしょ。あのデータをコピーして独自に改良を加えたスーツがあるからさ。勿論、女性用に改造したけどね。」いつの間にそんなことを。箱入り娘かと思っていたが自立して人の技術を盗んで改良品を作り出してしまう程の優秀な人だったとは。

「でも大丈夫なのか?お前はまだ女子高生じゃないか?そんな危ない現場に。」

「何言っているのよ。私は今年で大学3年なんですけど。」なんだかんだでまだ歳を聞いていなかった。

「そうだったのか。あまりにも可愛いからさ。」

「と言うわけでもう成人迎えているからさ。良いよね?」

「あぁ。無理すんなよ?」

「約束の時間まであと1時間だ。うちのガレージの下にある地下道をまっすぐ進むと大きなスペースがある。そこで対人戦を繰り広げることとなる。相手も本気で装備していると思う。頼んだぞ。我が娘と親愛なる後継者よ。」


他にも剛農連合会の数十人を連れて中度の装備を身に付けさせた。


「覚悟したれや!シラモリグループ!兵装専門部署がない時点でもう詰んでいるんだよ!」

「そんなことはもう無いぜ!我々は強い力を手に入れたからな。」


零央は、監視カメラからキウイを食べながらその様子を見ていた。

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