第9話 6/9

家の鍵を締める。俺は土方だ。

今日も工事現場に急いで向かう。大工の朝は早い。

「さて、本社に行くか。」大好きなメタルロックを聴き、気分を上げて本社に向かう。そうでなければ朝からやってられない。仕事が辛いわけでなく。朝からテンションを上げていかなければ、眠くなってしまうからだ。


本社までは車で20分。遠くもなく近くもない。

「おはようございます。今日も宜しくお願いします。」

「権田さん、昨日準備しておいてくれと言ったロックウール準備したかな?」

「はい。準備しましたよ。こちらです。」

「おお流石だ。家の外側は取り敢えず出来た。今日は断熱材を貼って行くぞ。」

「はい。主任!」

「俺は主任建築士という言葉が嫌いだ。棟梁と呼んでくれと言っているであろう。」

「では、棟梁。今日も宜しくお願いします。」


「さぁ、車に乗れ。今から向かうぞ。」

俺を含めた5名が、車に乗って現場に向かうことになっている。


「権田さん。今日はネッシーの日らしいですよ。何でもネッシーが見つかったらしい。」

「そうなのか。まぁ、俺はラッシーが好きだけどなぁ。」

「ふぇ?」後輩の梅田は、とぼけた。こりゃ、滑っちまったじゃねぇか。

話が噛み合わないと言われてしまうじゃないか。

「単なるジョークだよ。気にすんな。」


「おいお前ら!今日はロックウールの記念日でもある。ロックウールには石灰が使われていて、石灰っていうのは貝をリサイクルしても作れる。家も飽きたらぶっ壊すんじゃなくて、リサイクルできるところはリサイクル出来る世の中になれば良いと思うのだがな。」


「流石棟梁!そんな哲学的なことも思い付くなんて流石ですよ。」

「馬鹿野郎。俺は中卒でこの道に入ったんだ。お前達には敵わねぇよ。」


大工達は今日も足場に乗って、家を完成させる。家は快適さが求められる芸術作品である。彼らの頑張りに感謝しなければならない。

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