第40話 悔しい思い
降参したかと思っていたルフクーダエは、突然ニンフルの方に歩いて行った。
ナオミ達は、止めようと走って行こうとしたら、アリ達が突然四方から襲ってきた。
人を襲うことのないアリ達が襲って来たので、ナオミ達は対処に一瞬戸惑った。
その隙に、ルフクーダエはアリ達が担いでいるニンフルと共に向こうの穴から去って行った。
アリの攻撃は大したことはなかったけれど、数が余りにも多すぎて思うように前に進めなかった。
スリーの怒りが爆発していた。
「クッソ〜〜。このアリ達、どうにかならないのかよ〜〜!!!」
倒しても、倒しても襲って来るアリ達に、ニンフルが去って行った穴に近けなかった。
しばらくすると、いきなりアリ達が壁に押し返された。
お母さんとバラグンダダ教授が入って来て魔法を使ったのだ。
状況を見たお母さんが言った。
「ニンフルは?」
ナオミはすぐに返事をして、去って行った穴を指差した。
「あの穴から、ルフクーダエと一緒に去って行きました」
ナオミが言った後すぐに、お母さんとバラグンダダ教授はその穴に突入していた。
残された3人は残った気力を振り絞って、お母さん達の後を追った。
ナオミは、超小型の昆虫型ドローンを飛ばして、ニンフルがいった先の穴の情報を集め始めた。
穴は一直線に森の外に続いているみたいで、途中の分かれ道は一切なかった。
しかし、狭い穴の中には無数のアリ達がいて、お母さんとバラグンダダ教授が思うような速さでは進むことができずにいた。
その先へ、さらにドローンを飛ばして見たら、森の外にルフクーダエは既に出ていて、待機していたドラゴンにニンフルを縄を魔法によって背中にくくりつけていた。ナオミは、ドローンをニンフルの服に忍び込ませ、ニンフルの状態を調べた。
脈と呼吸は正常で、気絶しているだけだと分かった。
でも、これ以上何も出来ない自分に悔しい思いをした。
ナオミ達もアリの穴から出た。
そこは森の外で、草原の大きな岩の陰だった。
これでは空からは全く見えない。
ナオミは既に、ニンフルが連れ去られていると知っていたけれどもドローンの事は、お母さんにも内緒にしようと思った。
それに、ドローンも遠くになったので、通信が既に途切れていた。
「はー、はー、お母さん、ニンフルは?」
「間に合わなかったよ。
母さん達がここに来た時には、既にルフクーダエ教授のドラゴンは遠くに飛んでいて、魔法でも届かない距離だった。
悔しいけれど、これ以上はどうしようもないよ。
今からドラゴンを呼んでも、到底間に合わない」
スリーが無言でニンフルの去っていった空を見上げている。
よく見ると、涙が止まることなく流れていた。
手は思いっきり握り閉めており、口からは血が少し流れていて、悔しくて思いっきり歯を噛んだ為で、それだけ悔しい思いを身体全体で表していた。
お母さんが、ナオミの方を向いて話し出した。
「さっきの大きな空間にダークエルフが倒れていたけれど、誰だか知っているかい?」
「あの人は、マキュリアル将軍です」
「え、あの悪名高い?
ダークエルフの軍隊の一翼を担っている強者のはず。
みんなで倒したのかい?」
「え〜〜と、あの〜〜」
ナオミは、どう説明していいやら分からなくて、適切な言葉を選べなかった。
空を見上げていたスースラムが、こちらを向いて興奮しながら話し出した。
「マリネラ教授、ナオミが薙刀だけで倒したんだよ。
見ていて、背筋が凍る思いって初めて経験したんだ。
最初の一太刀で額に大きな傷を負わせて、流れ出ている血も気にする事なく最後まで切り刻んでいった。
敵が全身血だらけになって、あまり動かなくなると魔法でとどめを刺したんだ」
「それは、凄いね。
先の戦争で、多くのエルフが彼女の魔法で殺されているんだよ。
へ〜〜、ナオミが薙刀だけでね」
「・・・・・・」
ナオミはどう返事をしていいか分からなかったけど、急に悲しくなってきた。
ナオミは、お母さんに近づいていって、抱きついた。それまで我慢していた感情がいきなり溢れ出して、ナオミは声を押し殺して激しく泣き出した。お母さんは優しくナオミを抱いてあげた。
しばらくして、ナオミが落ち着いてきたので、お母さんが言った。
「さて、泣くだけ泣いたら、少しはスッキリしただろう。
もうすぐお母さんのドラゴンが来るから、それで戻ろうかね。
もう一度あの穴を通るのは、勘弁してほしいよね」
ナオミは、少しだけ笑った。
そして、その後で申し訳なさそうに言った。
「お母さん、ごめんなさい。
ニンフルを取り戻せなくて」
「ナオミが謝ることでははないよ。
まさかこの様な穴を作って、マキュリアル将軍の強者が地下にいるとは誰も思わなかった。
ナオミがマキュリアル将軍を倒してくれたから、ニンフルを取り戻す望みはあるよ。
彼女を捕虜にして、ニンフルと捕虜交換に使えそうだからね」
ナオミは少しだけ口元に笑みが戻ってきた。
捕虜交換と言う手が残っていたからだ。
「まだ望みはあるんですね。
それを聞いて、元気が出ました」
「さてと、そろそろ帰りますかね。
ドラゴンもすぐそこまで来ているし」
二頭のドラゴンが草原に、優雅に着陸した。
お母さんのドラゴンとバラグンダダ教授のドラゴンだった。
ナオミとスリーはお母さんのドラゴンで、そしてスースラムはバラグンダダ教授のドラゴンでサーシャリャーに戻った。
捕虜交換とはいいアイデアだね。
これで、ニンフルを取りも出せるよ。
多分?
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