第31話 駄菓子屋

 スリナリル達は弓矢と剣を注文する以外にも大きな楽しみがあった。それは、森の中では数カ所しかない駄菓子屋がここにあったからだ。

 弓と剣の用事を済ませたので、ナオミ達はさっそく駄菓子屋に入っていった。

 お母さんは用事があるみたいで、しばらくは子供だけとなった。


 ここの駄菓子屋の名物は何と言っても自家製のウマイチャケンナ饅頭で、ガンコイッテツアズキを使っている。甘すぎず、かといって甘みが足らなことはない絶妙な甘みなので人気があった。皮も特製で、コレオコメダヨ小麦粉にこれまた特製のダメヨダメダメお酒を、もっとちょうだいよと、ほろ酔いするぐらい入れてある。その為、子供は一個しか食べてはいけないのが、この店のしきたりになっている。

 もう一つ名物があり、これは季節限定でこの時期にしか置いていない。それは、木ノ実を干したミミクソミタメで、耳糞みたいに見た目はグロイけれど、味は誰もが納得する甘酸っぱい味で、しかも、口の中に入れると炭酸がシュワーと出て来る不思議な木ノ実だった。


「これ美味しいー。甘さが絶妙で。

 でも、お酒がかなり入っている感じで、食べ過ぎると酔っ払いそう」

「ナオミ、もぐもぐ。心配いらないよ、もぐもぐ。

 これは、もぐもぐ。一個しか、もぐもぐ、食べれないんだ」


 ニンフルがスリーを諭すように言った。


「スリーは食べながら話すのやめたら、口の中が丸見えで行儀悪いよ」

「あ〜〜おいしかった。なんで、いつもやっているよ?」

 将来スリーは何になるか知っているの?」

「ん?、大人だよ」


 ナオミが微笑むように笑い出した。

 ニンフルは怒った口調になった。


「あ〜〜もう〜〜。違うでしょう。

 王兄殿下でしょう。しっかりしてよ」

「あ、そうだね。忘れてた。

 それよりさ、こっちのミミクソミタメを食べようよ」


 スリーが後ろ向いたまま移動すると、誰かにぶつかった後、手で押し返された。

 後ろを振り返ると皮イルカ競技のライバルのスームリだった。

 凄〜〜〜く、嫌味ったらしく話し出した。


「王兄殿下って聞いて呆れるよ。

 そう言えばお前達、生の魚を食べるんだって。

 だからマザードラゴンと感応したって噂だけど本当か?」


 ナオミの顔色が、驚きの顔に変わっていった。

 スリーは言い返せなくて、ニンフルの顔を見た。

 ニンフルはスームリに言い返した。


「川イルカ競技で負けたからって、デタラメを言わないでよね」

「ナオミが生の魚を食べるのもデタラメなのかい?」

「それは、その〜。本当だけれども。

 マザードラゴンと感応したのは別の要素に決まっているでしょう。

 それに、将来の女王に対して失礼とは思わないの?」

「生の魚を食べる女王に、敬意を払うのは好きじゃないからね」

「あなたって、本当にひねくれているわね。

 ドラゴンは魚を食べているのよ。ドラゴンに対して敬意を払ってないの?」

「そ、それは、払っているよ。

 でも。それとこれとは話が違う・・・」


スームリが言い終わらない内に、ニンフルが早口で言った。


「同じ事よ。

 ドラゴンは私達と同じ生き物で、同じように私たちはドラゴンに敬意を払っているのよ。食べ物の違いで差別するのは、マザードラゴンを差別するのと同じ事よ。

 分かった」


 スリーは、妹の言ったことが全部理解できなかったけれど、スームリを言い負かしたのだけは理解できた。

 スームリはその後何も言わずに去っていった。


 スリーは、スームリを負かしたニンフルを尊敬の目で見ていった。


「今日ほど、ニンフルの頭の良さを実感したことがなかったよ僕。

 言葉だけで、あのスームリを撃退したんだからさ。

 でも、ニンフルの言っているのを、僕は全部理解できなかったけどね」

「あのね、スリー。もっと勉強してくれないと私やナオミが恥をかくんだよ。

 分かっているの?」

「ん〜〜とね。多分、分かっていると思うよ、僕。

 それよりさ、早くこのミミクソミタメを食べようよ。

 今の時期にしか食べれないんだよ、知ってる?」


 ナオミがクスクス笑い出した。

 ニンフルは怒る気力もなくなり、両手を肘から上げ、手を広げた。

 エルフの習慣で、これはどうしようもない時の、ボディーランゲージだった。

 その後3人は、ミミクソミタメを食べて、この季節を満喫していた。


 これ食べたいよね。だってさ、木の実で炭酸がジュワ〜〜〜、て出るんだよね。

 そう言えばさ、炭酸水の中にサクランボを一晩浸けて食べると、サクランボを食べると炭酸がジュワ〜〜〜て出て、美味しかったーーーーーーー!!







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