第29話 巣立ち

 王剣探しの鍵である王女の姉の事を、サーシャリャーの図書館で詳しく調べた方がいいのではと、ナオミとニンフルの意見が一致した。地下に行くのはもう少し情報を集めてからということになった。

どうやら、女王がいるここの図書館には、故意に女王の姉に関する本を隠しているみたいだった。


盗まれてから一ヶ月後。


 今日は、ドラゴンの巣立ちの日で、展望の枝から大空に羽ばたく時がついにやって来た。

 高い所が苦手なスリーは、この日だけは興奮を抑えきれなくて、高い所があまり気にならなかった。

 なぜなら、一ヶ月間に渡り、世話をしたドラゴンがいよいよ飛び立つこの日を、どんなに待ちわびたか。


「ナイトキラー、いよいよだね」

「ええ。

 この日を、千年間も待っていたのよ!」

「うん。

 ナイトキラーの興奮してる感情が僕にまで伝わって来るよ。

 生まれてから初めてだね、ナイトキラーがこんなに興奮したの」

「もちろんよ。こんなに待ちわびていた日は今までにないわ。

 それに、後一年もすれば、スリーを乗せて飛べる。

 それまでの辛抱よ、スリー」

「あー、またお母さん口調になっているよ」

「ウフフ。

 それでは、行ってきます」

「うん。

 楽しんで来てね」

「もちろんよ」


 既にナオミのドラゴンとニンフルのドラゴンは飛び立っており、ナイトキラーが最後に飛び立った。

 優雅に3頭のドラゴンは飛んでおり、とても気持ちが良さそうに見えた。

 この日はお母さんはもちろんのこと、女王も見学をされていた。

 誰かが巣立ちの歌を歌い始め、みんなも歌い始めた。


「君は、素敵になったね

 全てを見通す目は

 ドラゴンの英知を宿す

 進化した生き物に


 君は、しなやかになったね

 大空を捕まえる翼は

 青い空の彼方かなたまで

 どこまでも遠くに


 君は、力強くなったね

 獲物を捕まえる爪は

 岩をも砕くその力

 空の狩人の勇姿に


 君は、綺麗きれいになったね

 全身を覆ううろこ

 七色の光を反射して

 空飛ぶ宝石に


 君は、もうすぐだね

 私を乗せて大空に

 飛び立てる日が来る

 きっと、きっと、君と」


 歌い終わると、感動も最高潮に達していた。


 3頭が一緒に飛ぶと、それぞれのドラゴンの大きさの違いがはっきりと分かった。

 マザードラゴンはとても大きくて、既にスリーの倍くらいに成長しており、ニンフルのドラゴンは、その中間位の大きさにまでになっていた。

 ナイトキラーがスピードを上げて羽ばたきだした。

 他の2頭は追いつけずに、徐々に差が開いて行った。


「気持ちが良さそうだね」

「とっても気持ちがいいわ。

 もっとスピードは上がりそうだけれど、それには毎日飛んで筋力をもっと付けないといけないわ」

「毎日って、雨の日はどうするの?」

「もちろん飛ぶわ。

 戦闘になったら雨だろうが嵐だろうが、戦わなくてはならないから」

「ナイトキラーは戦闘準備をしているの?」

「ええ、もちろんよ」

「僕なんかまだまだ先だよ」

「私と感応して身体能力と魔法能力が飛躍的に上がっているはずよ」

「えーと、魔力は上がった気がするけど、身体能力はまだ分からないや」

「もうすぐサーシャリャー。

 バラグンダダ教授の弓矢の授業で、はっきりと分かるはずよ。

 それに、毎日地下で、弓矢の練習をしていたから大丈夫よ」

「そう願いたいよ」


 3頭はそのまま、大人のドラゴンに連れられて海に狩に行った。

 デカデカメダカを狩るのが目的だ。

 川魚のメダカに似ていているのでこの名前が付いているけれど、全くの別種で鮪に属している。大きな物になると3メートルは超えている。

 ドラゴン達からは、初めての狩で興奮しているのが、終日伝わってきていた。


 わーい、わーい。マグロだってよ。

 トロの刺身が食べたいよー〜〜〜〜!









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