第28話 王剣
スリーは、ナイトキラーにまた起こされたと思った。
「朝食のご用意ができていますので、起きてください」
「ナイトキラーの?」
「いえ、スリー様のでございます」
「スリーさま?
生まれて初めてだよだよ、スリーさまって呼ばれたの」
「ウフフ。
今の内に慣れて頂けなけば、いずれは王兄殿下になりますから。
それよりも、お母様がお待ちかねです。
実は昨夜、王剣が盗まれました」
「え〜〜〜〜。
誰が盗んだの?」
「今の所、犯人を特定できていません」
「それって、新女王の式典に必要で、ナオミが次期女王になれないってことだよね」
「その通りです。皆さん怒っています。
私も、犯人を早く見つけて欲しい思っています」
スリーはすぐに支度をして、家族が待っているダイニングルームに行った。
そこには既に、ニンフルとお母さんが座っていた。
「ナオミは、お母さん」
「ナオミは女王と、お会いしています。
それよりも、王剣の事は聞いたの?」
「うん。スルルに聞いた。
それで?」
「王剣を盗んだ犯人は、まだ分からないらしい。
でも、幸いなことに、王宮の外には持ち出されていないみたいなんだよ」
「この広い王宮の、どこかに隠したって事なの?」
「母さんも協力しているんだけどね。
かなり高度な魔法を使った形跡があって、王剣は巧妙に隠されいる。
王剣は至宝の宝石が散りばめられていて、それ自体に魔力があるんだけれど、その魔力を外に出さなようにするには、それ以上の強力な魔法を使わないとダメなんだ」
ニンフルは、突然小さな悲鳴を上げた。
天井から、学園に住んでいるキモイケドココロヤサシイクモと同じ種類のクモが、ニンフルの目の前に降りてきた。
「もう、びっくりしたわ」
「これは、失礼したでゴンザ」
「ゴンザって名前ね」
「そうでゴンザ」
「王剣が盗まれて、怖い話をしている時に来るんだもの」
「それ、それでゴンザ。
王剣ですがゴンザ、王宮の1番上の枝にあったのに、一晩で消えたでゴンザ」
「ゴンザ達にも分からないんでしょう?」
「誰かが、操られていた可能性が大きいでゴンザ」
スリーが今度はゴンザに聞いて見た。
「ゴンザは何で操られていたって知っているの?」
「それは簡単でゴンザ。
王剣があった部屋には、特定の人しか入れなかったゴンザ。
部屋に入って、魔法を解かないと盗めないゴンザ」
「ゴンザ達も入れるの?」
「もちろん、入れるでゴンザ。
でも、魔法は使えないゴンザ」
聞いていたお母さんが言った。
「それは既に調査をしていて、該当する人物がいなかった。
ゴンザ達は部屋に入れるけれども、盗む魔法は使えない。
操られていた可能性は否定できないけれど、それって、凄く高度な魔法が必要になってくる。
とにかく、母さんは盗まれた王剣を探すのを手伝うから、あなた達はドラゴンの世話が優先ね」
スリーとニンフルは頷いた。
その後出された朝食が何だったか、後から思い出せないくらいに色々な事を考えていた。
数日かけて、スリーは怪しい所を探し回った。
女王の住んでいる所と、地下室の入ってはいけない以外は全て見たけれど、それらしい隠し場所は見つからなかった。
やはり、怪しいのは地下室だ。
数日後、スリーとニンフル、それにはナオミが集合して話し合った。
「それでさ、やっぱり地下室が1番怪しいと思うんだ。だって、なんで地下室が封印されているの?」
ニンフルが得意顔で答えた。
「私、図書室で地下室について調べたの。
どうやら、女王が即位した直前に封印されたみたいなの。
それともう一つあるの。
即位する前に、どうやら暗殺未遂があったらしいの」
「誰を暗殺しようとしたの?」
「それが、女王になる前の女王を暗殺しようとして失敗したみたいなの。
それと、女王の家系図を調べたら、女王は3人姉妹の末っ子だったみたい」
ナオミがそれについて、女王から直接何か聞いていた。
「女王から幼い頃の話を聞かせてくれたんだけれど、女王がマザードラゴンと感応するまではとっても仲がいい3人姉妹だったみたい」
それが、女王がマザードラゴンと感応すると、手の平を返したように、すぐ上の姉が嫉妬に狂ったと言っていたわ」
ナイトキラーがスリーに話しだした。
「スリー、それなら私は知っている。
残念だけれども、女王の暗殺未遂の犯人はすぐ上の姉よ。
それで捕まって、多分地下に封印された。
ナオミが今度女王になるので、王剣を盗んだ。
話の筋は完璧よ」
「でもさ、地下からどうやって盗んだの?」
「それは、地下にいる狂った姉妹に聞くことね」
「えー、そんなこと・・・。
危険じゃないかな?」
「千年も封印されているから、多分大丈夫よ」
「多分ね〜〜。
でも、誰かを操れるとしたら?」
「それは大丈夫よ、4人もいるんだから」
「え、4人で行けってこと?
もう1人はもしかして、スースラム?」
「そうよ。
このくらいのことしないと、今度のダークエルフとの戦争には勝てないわよ」
「ナイトキラーって、過激なんだね」
「それに感応したスリーもね」
「え、僕、過激なの?」
「その素質は十分にあるからこそ、私と感応したのよ」
「え〜〜〜。本当に?」
「ええ、そうよ」
ナオミが突然笑い出した。
スリーはなぜだか分からずにナオミにきいた。
「ご、ごめんなさい。
スリーとナイトキラーの会話が面白くって」
「ナオミは今の会話を聞いていたの?」
「ごめんなさい。
マザードラゴンと感応した者は、全てのドラゴンと話が出来るの」
「ナイトキラー、初めまして」
「ナオミだね。初めまして」
「あ、本当だ。会話している。
てっきり、僕とだけだと思っていたよ」
「隠すほどの事でもないんだけれど、マザードラゴンと感応した者の宿命」
「しゅくめいって何?」
ナイトキラーがスリーに話しかけた。
「宿命は、避けられない運命と覚えた方がいいね。運命は努力によって変られるけれども、宿命は既に決まっていて、努力しても変えられないんだよ」
「よけに分からないや」
「要は、決まった運命」
「やっと分かった」
「は〜〜、先が思いやられるわ」
ナオミが、また笑い出した。
「ご、ごめんなさい。つい、面白くって」
ニンフルがさっきから、キョトンとしている。
さっきまでの会話に入ってこれないからだ。
ナオミが一部始終を話したら、ニンフルも笑い出した。
「あのね、2人とも。
ナイトキラーは千年も生きて、知識を蓄えてきたんだよ。
僕が知らない事一杯あるに決まっているだろう」
「でも、スリーの返事が面白くって、つい」
「とにかくさ、地下に行くの、行かないの?」
ニンフルとナオミは顔を見合わせてすぐに返答をした。
「もちろん、行くわ」
もちろん、俺も行くわ。
ボカ、ボカ、ボカ。
痛い、叩くなよ。
え、女言葉になっているって。
だって俺・・・、女だもん!!!
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