第21話 再び

 結局、クリスタル区とアクアマリン区の両区が2勝1敗で、優勝決定戦が行われることになった。

 ナオミとニンフルも応援に来ている。


 俺は、ナオミとニンフルの応援に来ている。

 え、お前はいらないから帰れってか!!

 ハイハイ、今日は素直に帰ります。書きかけの小説があるんでね!!バイバイ!!


「今日こそ勝ちたいわよね」

「スリーは今日は最初からレギュラーで出場だね〜。

 頑張って〜、スリー」

「もちろん頑張るさ。

 前回の屈辱を晴らすんだ」

「スースラムは?」

「出番がなさそうなので、ベンチを温めるってさ」

「こればっかりはね。ダンダダは今まで3ゴール許しただけだからね」

「あ、始まるよ」


 選手が一斉に味方ゴールに集まった。

 さて、いよいよだ。

 魔法でボールが中央に置かれると、川イルカと選手は一斉にボールめがけて突き進んでいく。

 やはり今回も、スリーとマーメイド、そしてスームリの3人がほぼ同時にボールにたどり着いた。

 今回もスリーのイルカ、ジャンピが先にボールついて、スリーに渡した。スリーはそのままゴール目指して猛スピードで爆進している。

 ゴールまで敵の攻撃を飛んだり潜ったりして行きながら、いよいよゴールキーパーしか阻止する者がいなくなった。

 スリーはスピードを維持してゴール直前でジャンピと一緒に潜った。

 どこから出てくるかわからないので、ゴールキーパーは真ん中にいるのを、スリーはいきなり右側にジャンプすると、ゴールキーパーもつられて右側に移動して来た。

 スリーは左が空いているので、思いっきり投げて、ゴールを決めた。

 クリスタル区では、先取点に大騒ぎをしている。


「ナオミ〜〜〜、スリーがやってくれたよ〜〜!!

 とっても嬉しい」

「こんなに早く先取点を取れるとは思ってもなかったよね」

「うん、うん、そうだよね。

 日頃のスリーからは想像もつかないよ」

「あ、今度は向こうのボウルだよ」

「向こうのチームはチームワークがいいね。

 こっちの選手が翻弄されているよ」

「あ〜〜、見てられない。

 グンダダに突進しているよ。ぶつかる〜〜。

 あ、ぶつかったよー。

 ニンフル、グンダダ大丈夫かな?」


 相手の選手と、こちらのゴールキーパーであるグンダダが激しくぶつかって、2人が川面に浮かんでいる。

 緊急班が魔法で2人を岸辺に運んだ。

 どうやら2人は試合を続けられないみたいだ。

 そうすると、こちらのゴールキーパーはスースラムが出ることになる。

 スースラムを見ると緊張しているのが分かる。

 すぐ後ろにいたナオミとニンフルが応援した。


「スースラム、ガンバってー」

「ゴーゴー、スースラム」

「ありがとう。まさか僕が出るとは思ってもいなかった。

 どうしよう」

「スースラムなら大丈夫だよ」

「そうだよ、応援するからさ、頑張ってよ」

「うん。頑張る」


 少し照れながらスースラムが味方ゴールに行き着いた。

 まだ緊張しているのが分かる。

 試合は再開されて、クリスタル区のボールから始まった。

 スースラムはマーメイドにボールを渡した。

 マーメイドは一直線にゴールを目指した。

 その横にはスリーがいて、いつでもボールを受け取る位置にいる。

 相手チームがボールを奪いに来て、マーメイドはすぐにスリーにボールを渡した。

 スリーのすぐ後ろには既にスームリが迫って来ていた。

 ニンフルが興奮して言った。


「スームリがスリーのすぐ後ろにいるよ〜〜。

 これってまずいよね」

「ニンフル、スリーは早いから大丈夫だよ」


 ナオミが言った途端、スリーはスームリの妨害にあって、ボールを落としてしまった。

 後ろから来ていた相手チームにボールを拾われて、スースラムに向かって行った。

 スースラムは緊張していたけれど、しっかりとボールを目で追っていたので、最初のゴールを阻止できた。

 ここで、前半戦が終了した。


 クリスタル区の選手が戻って来た。

 ナオミとニンフルが聞き取れる所でミーティングをしている。



「スースラムよくやったよ。

 とにかく前半戦と同じ要領で行くよ。

 できるだけ、マーメイドとスリーにボールを渡して。

 スームリが思っていた以上に早いんでね。

 じゃ、掛け声行くよ!!」


 みんなが輪になっている。


「ダンケル〜〜〜、ファイト!、ファイト!!」


 さー、後半戦が始まりました。


 後半戦は膠着状態で、お互いが決め手に欠けていた。

 残り時間が少なくなってきて、スースラムが気が焦ったのか、同点に追いつかれてしまった。


「ニンフル、これって、同点の時はどうするの?」

「点が入るまで、延長する」

「えーー、それって、大変だよね」

「スースラムに疲れが出てきているから、かなりやばいかも」

「ガンバてー、スースラムーー」


 ナオミの応援が聞こえたのか、こちらを見てニッコリとしたスースラム。

 でも、明らかに疲れているのが分かる。

 残り時間が僅かで、こちら側のボールになった。

 今度もスリーが爆走している。

 最後の最後まで諦めないスリーは、敵の選手のアタックに耐えて、ゴール近くまで来た。これは前の試合と同じ状況とよく似ていた。

 ナオミのブレスレット型コンピューターの警報がなった。

 魔法を誰かが唱えている。用心の為に設定していたのだ。

 網膜に画面を映し出し場所を確認したら、真後ろからだ。

 ナオミは持っていた宝石に、小さな声で呪文を唱えた。


「ベト、小石」


 1センチぐらいの小さな小石が一直線に、魔法を唱えている人に当たった。

 網膜の画面を見ると、魔法をもう唱えていないのが分かった。

 ブレスレットを後ろに持って行き、望遠で確かめて見ると、誰かがこちらを睨んでいたかと思うと、向こうに去って行った。

 顔は残念ながら確認できなかった。

 どうやら、スリーに対しての妨害の阻止に成功したみたいだ。

 ナオミは嬉しくなって。


「やった〜〜」


 そう言った途端に、スリーはゴールを決めた。

 クリスタル区の応援席は怒涛の如く歓喜の喜びの声を上げていた。


「ナオミーーー、スリーがやってくれたよ〜〜!

 クリスタル区が優勝したんだよ」


 ナオミは一瞬訳が分からなくなったけど、すぐに理解して周りのみんなと大騒ぎをした。

 ナオミがこんなに興奮をしたのは生まれて初めての事だった。



















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