第13話 ナオミの新しい家
「ただいまー。
みんな、大丈夫だったかい?」
「スリーがね、セイドウオソレシラズの羽ばたく音を聞いて、お腹が空いた〜〜って、大声で言った以外は大丈夫だったよ」
「ニンフル、お腹が空いてないの?
僕は、お腹がペコペコだよ」
「分かったわ。
とにかく、すぐに晩ご飯にするからさ」
お母さんは急いで晩ご飯を作ってくれた。
エルフはタンパク質を木ノ実と豆類から取っている。
かなりの種類があり、全てをパントリーに貯蔵しているので、いつでも食べることができる。
野菜類は、裏庭の畑で栽培をしていて、新鮮なのが取れるからべんりだ。
菌類は地下で栽培をしていて、必要に応じて取りに行っている。
今朝、スリーが取ってきたゲジゲジ・シイタケもここにある。
今夜は食事を作る時間がなかったので、お母さんは木ノ実だけの簡単な食事にしていた。でも、食べ応えのある食事だった。
「この赤い実はなんですか?
とっても美味しい」
「これかい。これはクコの実だね。
独特な味なので嫌うエルフもいるんだけれど、ナオミは大丈夫なんだね」
「私、あまり好き嫌いがないんです」
「食いしん坊のスリーと同じだ」
「あ、お母さん。モグモグ、それは、モグモグ、ないよ。
ナメクジマシュルームは、モグモグ、ゴックン、 嫌いだもの」
「嫌いでも食べないと、強くなれないよスリー。
ナメクジマシュルームはお父さんの好物だったんだからね」
「本当に?
あの、ヌメ〜〜〜〜としたあれが。
ウ〜〜〜〜。
思い出すだけでもダメだよ僕には」
「味はいいんだからさ、今度は何かと一緒に食べてごらん。
きっと気にいるよ」
「・・・・」
「もう、スリーは・・!。
それでは、食べ終わったからお風呂に入ろうか?
話はその後でするよ。
ニンフルとナオミ、行くよ」
「はーい」
はーい。ヤッパリこれもリポートしないとね。
痛〜〜〜、電撃が来た〜〜〜!!!
「お母さん、どうしたの?
急に魔法を使って?」
「嫌な目線を感じたんでね。
軽い電撃をその方向に放っただけ」
あ、あ、あれが軽い電撃だって?怖!!!
森の中には温泉が湧いているので、そこから各家庭に熱い湯がきていた
スリナリルの家のお風呂は半地下にあり、石で囲まれた岩風呂で、お父さんが作ってくれたものだった。
お父さんの優しさが詰まっているね。
地下の菌類は、この熱と湯気で沢山採れている。
スリーが小さい頃は、お母さんと一緒に入っていたけれども、さすがにこの年齢では恥ずかしかった。
3人がお風呂で楽しく騒いでいる声を聞いて、スリーは少し寂しかった。
俺も寂しい。でも、電撃はもうこりごり。
気を紛らわすためにスリーは、けん玉を夢中で練習をした。
練習の成果もあってか集中力が高まり、すでに小さな窪みに玉を載せることができていた。
「結局犯人は分からないんだよ。
ゴブリンの可能性もあるし、ダークエルフも否定できない。
ただ壁に、殺された人の血で書かれたメッセージがあってね、こう書かれていたんだ。
"ダークエルフの王、復活"それと"ダークエルフの王を傷つけた者に死を"」
「それって本当なの?
お父さんが殺したんだよね」
「お父さんが殺したのは、生き残った人達からの証言で間違いないと思うんんだけれど。
とにかく、森の中にいれば安全だからね。
話はそれでおしまい。
それにしても、このけん玉はいいね。
生徒の集中力が上がるよ。
ん〜〜、と。
ま、後で考えるとして。
もう寝ますかね。
ナオミ、部屋の細かな説明をするからさ、行こうか?」
「はい、お願いします」
エルフの普通の家は、イジョウナクスノキダヨコノキの楠木の種類を利用している。
魔法で住みやすいように育てられるのが特徴で、夏は涼しく、冬は暖かかった。
「ここからドラゴンが出入りするようになっている。
もちろん、ある程度の時期までだけれども。
窓に向かって、開け閉めの言葉を唱えると、開いたり、閉まったりするからね
「私がドラゴンを持てるなんて夢のようです。
小さい頃からの夢だったので」
「お互いの信頼の証だね。
数年前の流行り病の時には、大勢の人達の命を救ってくれたし。
もうお休みよ。明日も授業があるし」
「はい、おやすみなさいマリネラ」
「今日からさ、お母さんでいいよ。家族なんだしね」
「えーと、はい。おやすみなさいお母さん」
「おやすみ、ナオミ。いい夢を」
マリネラは、ナオミに聞こえないように小さな声で魔法を唱えた。
「イイユメミマスヨウニ、スター」
夜の星の小さな妖精たちが現れて、ナオミの上を回っている。
この魔法は、いい夢を夜の星が誘導してくれる高度な召喚魔法だ。
両親から離れて暮らす、ナオミに対しての心遣いだった。
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