第14話 2日目

 ナオミは日の出と共に早起きした。

 昨日の夢は楽しく、ドラゴンに乗って空を自由に飛んでいた。

 身支度を早めに済まして、今日の授業の予習をしていたら、斜め下のスリーの部屋からかすかに悲鳴のような声が聞こえて来た。


 スリーは今日もオキナサイ・イモムシに起こされた。

 昨夜は遅くまで、けん玉をしていたので、顔中舐められてもなかなか起きれなかった。

 思わず大声をあげた。


「うわ〜〜〜〜!!

 顔中ベトベト!!」


 髪の毛までベトベトだったので、朝からお風呂に入った。

 朝風呂って、気持ちいいんだよね。

 スリーは、お風呂に入ってもまだ眠たかった。

 よっぽど眠かったんだね。

 スリーは、朝ごはんもいつもよりは食べれなくて、睡眠不足で頭も働かなかった。その為、サーシャリーに遊び道具を持って入るのは禁止されていたのに、バックの中に、けん玉を入れてしまった。


 スリーは今日もジャンピと一緒にサーシャリーに向かった。

 落ちないようにするのが精一杯だったので、普通のスピードでサーシャリャーに向かった。


 ナオミはニンフルと一緒にサーシャリーに行くのだけれども、川イルカに乗るのは初めてだった。

 ナオミの川イルカはまだ若いピッピで、初めて人を乗せてサーシャリーまで行く。


「ナオミを乗せてサーシャリーまで行く。

 早く、早く」

「ピッピかさないでね。

 私、初めてだからゆっくりとお願いね」

「ピッピ分かった。

 ゆっくり、ナオミを運ぶ」


 ニンフルはすでに、別のイルカに乗ってナオミが来るのを待っていた。

 ニンフルも優しいね。ナオミを待っていてくれているんだ。

 やっと準備ができたナオミは、ピッピに乗った。


「わー、思っていたよりも安定感がある。

 これなら落ちないで、サーシャリーまで行けそう」

「ピッピ、頑張る。ナオミを落とさない」


 最初はゆっくりとピッピは泳いでいたけれども、嬉しくなったのか徐々にスピードを上げていった。

 だいじょうぶかな?そんなにスピードを上げてさ。

 既にニンフルを追い越して、先へと進んで行っている。


「ナオミ、チョット待ってよ〜〜〜!!」

「ピッピ、もう少しだけスピードを落とせない?」

「うん、ピッピ頑張る」


 若いピッピは言葉を勘違いして、さらに早く泳いだ。

 「ゆっくり行って」、とナオミが何度言っても、ピッピは早く泳ぐのに夢中で、ナオミの言葉がついに届かなかった。

 それにも関わらずナオミは、安定してピッピの上に乗っていられた。


 先に家を出たスリーを追い越して、最初にサーシャリーに着いた。

 ここは生徒達を降ろす桟橋で、多くの生徒達と川イルカで混雑をしていた。

 すぐ後から来たスリーに、突然、誰かがスリーを呼び止めた。

 今日の門番のバラグンダダ教授だ。

 魔法を使って、規則を守っていない生徒を取り締まっていた。


「スリー、こっちへ来なさい!!」


 とても強い口調で呼び止められて、どうしてかスリーには全く理由が分からなかった。


「カバンの中に、何か入っている。

 出しなさい」

「僕、持ってないよ。みて下さい。

 教科書に川イルカ競技のユニホームと、あ・・・?」


 スリーはやっと理解できた。

 間違って入れてしまった事を。


「教授。すみません。けん玉が入っていました」

「けん玉?

 なんだねそれは?」

「えーと。

 玉を窪みに入れる遊び道具です」

「スリーは英雄の息子だから、遊び道具を持って来ていいのかね?」


 教授は一呼吸置いて、とても強い口調で言った。


「答えなさい。スリー!!!」


 教授の余りにも強い口調に、通学していた生徒たちが集まって来た。

 ニンフルとナオミも何事かと行ってみた。


 スリーは泣きたいのを抑えて、小さな震える声で答えた。


「僕が間違って入れてしまいました。

 ごめんなさい」

「一応は非を認めるわけだな。

 よろしい。これは預かっておく。

 放課後、私の所まで取りに来なさい。その時、罰を与える。

 行きなさい」

「はい」


 スリーは落ち込んでしまった。

 よりによって、1番嫌いなバラグンダダ教授に見つかってしまうとは。

 罰とは何をするんだろうか?

 ふと見ると、スームリとバルシがこちらを見て、スリナリルに聞こえるくらいの声で話をしていた。


「さすがだよな。英雄の子供のやることは」

「サーシャリャーの規則よりも偉いと思っているんだよ」

「それに、英雄の子供だから川イルカ競技にで入れたし」


 補欠の言葉は、はっきりとスームリが大きな声でわざとらしく言っていた。

 スームリはアクアマリーン区のレギュラーメンバーだとスリナリルは知っていたので、悔しくて仕方なかったが、今回は全く言い返せなかった。


 ナオミは、お土産のけん玉でトラブルになったので、少し心が痛んだ。

 少し落ち込んでいるナオミに、ニンフルが優しく言った。


「ナオミ、気にすることないよ。

 100スリーの落ち度だからね」

「うん、それは分かるんだけれども、少しね」


 兄妹思いで、いいね。その優しさがナオミの良いところだよ。


 それで、俺にも時々優しくしてくれたら・・・・・!

 痛いーー。電撃きたよ!!


「ニンフルどうしたの?」

「昨夜、お母さんが言っていた嫌な目線を感じたんで、その方向に軽い電撃をはなったの」

 ふーん。変な人がいるのかもね」


 オイオイ、俺は変な人かよ!

 それにしても、親子で感がいいな。クワバラクワバラ。



 












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