第12話 ナオミのお土産

 スリーとスースラムが、補欠でも地区の代表に選ばれたので4人の顔は明るかった。

 途中の川でスースラムと別れた後は、ナオミ達は我が家へと帰っていった。


 お母さんは会議があるから遅くなると言っていた。

 例の殺人の件だ。

 あの後、色々な噂があったけれど、どれも信用できそうになかった。

 お母さんが帰ってから、詳しく話を聞いた方がよさそうだった。

 家に帰ってみると、ナオミの荷物がすでに届いていた。

 3人でナオミの部屋に運んだ。


「フーー。やっと終わったね」

「疲れたよー!」

「ありがとう。スリーにニンフル。

 これは2人にお土産。

 はいどうぞ」

「これはなーに?」

「これはけん玉と言って、こうやって遊ぶの」


 ナオミは、ぶら下がっていた木の玉を、器用に小さな窪みに載せた。

 それを、違うサイズの窪みに巧みに移動させて、最後には玉の穴に差し込んだ。


「うあー、すごいね。

 これ僕にくれるの?」

「うん、そうだよ。

 お父さんが作ってくれたんだ。

 精神を集中させるにはいいと言っていた」

「それならスリーにピッタリね!」

「どうせ、そうですよ。

 でも、ありがとうナオミ」


 スリーはさっそくやったけれども上手くいかない。

 大きな窪みにさえ、玉が乗らなかった。


「ナオミは上手くやっていたけれど、上手くいかないや。

 これどうやったらいいのか教えてよナオミ」

「分かったわ。

 まずはね、玉が動かなくなるまで待つの。

 ほらね、動かないでしょう。

 動かなくなったら真上に玉を引っ張る。

 そして、玉が1番高い所にくるのを見て、窪みを玉の真下に持って行って、玉の動きに合わせて窪みも移動させればいいわ」


 ニンフルは慎重にけん玉を動かしている。

 ゆっくりとした動きだったけれども。


「やったわ。見て、大きな窪みに入っている」

「なんでニンフルにできて、僕にはできないんだ?

 おかし〜な〜?」


 ナオミがそれを見て、スリーの悪い所を言ってあげた。


「スリーは動かすのが早すぎるわ。

 もう少し、落ちついた方がいいよ」

「ん〜〜。早く成功させたいからかな?

 よーし、今度はゆっくりとやるよ」


 ナオミの助言をしっかりと頭に入れてスリーはもう一度やってみた。

 今度は焦らず、ゆっくりと。

 すると、さっきまで見えていなかった玉の動きが読めて。


「やった〜〜〜!

 大きな窪みに入ったよ。

 これ面白いね。気に入ったよ」

「喜んでもらって嬉しいわ。

 もっと難しい技があるんだけれど、私にはできないんだ」

「穴に入れるのより難しいのがあるの?

 教えてよ。それを目標にするからさ」

「十字になっている、この角に玉を載せるの。

 何度やっても私にはできないんだ。

 でも、お父さんはできるんだよ」

「えーー、ここに玉を載せるの。

 ナオミのお父さんってすごいね」

「お父さんは技師で、手先がとっても器用なんだ」

「ぎしって何?」

「あ、そうか。知らないんだよね。

 機械を扱う人だよ」

「その、機械もよく分からないや。

 ニンフルは知ってる?」

「んーとね。確か金属で、できている物?」

「あ、そうだ。

 2つだけ、森の中に持って行っていいよって言われたのがあるから見せるね」


 ナオミが見せたのはデジタル式の写真立てと、今付けているブレスレットだった。


「これは写真が表示されるんだ。

 見てて」


 ナオミは写真立てを2人の方に向けて、言葉を言った。


「写真、スイッチオン」


 写真立てに、ナオミの写真が現れた。


「凄〜い。すごくきれい。

 どんな魔法を使ったの?」

「スリー、違うわ。

 これが機械なのよ」

「えーーーー。本当に。

 すごいや」

「この中には2000枚ぐらいの写真と300本の動画が入っているのよ。

 写真、次」


 次の写真が現れた。

 今度はお父さんとお母さんが写っている。


「本当に、この中にいるみたいね。

 この人は誰なのナオミ?」

「私のお母さんとお父さんなんだ。

 動画も見せるね。

 動画再生、23」


 今度は動画が再生された。

 海岸に行った時の動画で、犬のコロとナオミが遊んでいた。


「こんなの見たことないや。絵が動いているなんて。

 機械ってすごいね」

「この動物はセナカトゲトゲオオカミに似ているけど、大丈夫なの?」

「うん。大丈夫だよ。

 昔はどう猛な地球のオオカミを、人間が飼い慣らしておとなしくさせたんだって。

 でも、言葉は話さないんだ」

「え、こんなに仲良くしているのに?」

「猫も買っているけど、どれも話さないよ。

 ここの動物達が話すので、逆に私はビックリしたんだ。

 それとこのブレスレット。

 学園内では緊急以外は使わない約束なんだ」


 スリーが不思議がった。

 それはそうだよな。見た目は木のブレスレットだし。


「これって木から作られているのと同じ様なものだよ。

 少しだけ表面が滑らかだけどさ」

「これはコンピューターで、動かしてみるね」


 ナオミはブレスレットのコンピューターを起動させた。

 すると、ブレスレットの上に画面が現れた。

 スリーとニンフルが驚いて、その画面を見ていた。

 これは驚くよね。突然空間にコンピュータの画面が現れたのだから。


「今写っているのが基本の画面で、2人の写真を撮るね」


 そう言うと、ナオミは驚いている2人の顔を撮った。

 すぐに画面に表示して見せた。


「えー、これって僕達?

 すごい魔法だね」

「スリー、違うわ。これが機械なのよ。

 ナオミ、他にもこの、コンピュー、コンピューター。

 少し言いにくいけど、何か出来るの?」

「うん、いろんなことができるよ。例えば」


 ナオミが説明している途中で、外では何か大きな羽ばたく音が聞こえて来た。

 お母さんが乗っているドラゴンの、セイドウオソレシラズが帰って来た音だった。

 













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