第10話 光の精霊

 スリーはお母さんの授業が嫌いだった。

 ニンフルと比べられるからで、クラスに行く足が次第にノロくなっていった。

 スースラムが今度は後ろからスリーを押している。



 クラスルームに入ると、みんながヒソヒソ話をしている。

 話を聞いてみると、さっき上級生が言っていたのと同じ内容だった。

 お母さんが、クラスルームに入って来た。


「みんな静かに。

 みんなが騒いでいる訳は知っているよ。

 そのことで、話をするようにと学園長から言われた。

 そこ、まだ話している。

 ベト、Uターン、チョーク」


 お母さんが呪文を唱えると、チョークが話をやめない二人の頭に当たってUターンして、元の場所に戻った。

 クラス中が笑った。


「さて、これで静かになったね。

 話の最初は今朝起こったんだ。

 森の外に住むムールアンスリー家の4人が殺された。

 近くに住んんでいた叔父さんが発見して、森に住むエルフに応援を求めて来たんだ。

 壁には殺された人達の血で「ダークエルフの王復活」と書かれていた」


 クラスが少しざわつき始めた。

 死んだと思われていたダークエルフの王が本当に復活したのならば、大問題になるからだ。


 「みんな静かに。

 それで、それを聞いたグレナー女王はすぐに治安部隊を派遣をし、森の外に住んでいるエルフに森の中に入るように勧告がだされた。

 また、森全体に防御魔法の強化をする事に決まった。

 学園長も対策をする事に決め、生徒全員に森から出ないように厳守させる事と、もしもの為に学園にも防御魔法をする事になったんだ。

 私も、この授業が終わったら防御魔法に参加する。

 殺した犯人はまだ見つかっていない。

 以上だ。

 みんな森の外に出てはダメだよ、分かった?」

「はーい」


 特別の事がない限りは森の外には出ないけれど、やはりみんな不安に思っている。特に、血で書かれた文字が気になっていた。



「授業を始めるよ。

 みんなは明日、アリの巣の見学に行くので、光を出す魔法を今日は習うよ。

 呪文はこれだ」


 お母さんが黒板に呪文を書いた。

 ホホホタルコイヒカリヲ。

 

「この魔法は、甘〜い水がここにあると強く思わなければ、精霊が来てくれなくて失敗するから気をつけて。

 それではみんな、練習を始め!」


 クラス中の生徒が練習を始めた。


 みんな上手くいかない。

 ホが多すぎたり、少なかったり。

 呪文を間違わなかったけれど甘い水を忘れたりで、クラス中が失敗していた。

 最初に成功したのはやはりニンフルだった。


「ホホホタルコイヒカリヲ」


 小さな精霊の蛍が現れ、お尻から光を出してニンフルの周りを回っている。

 光は点滅していて、真っ白な純粋な光を出していた。


「わ〜〜キレイ。見てナオミ」

「ほんとキレイ。

 よーし、今度こそ。

 ホホホタルコイヒカリヲ」


 同じ様に、小さな精霊の蛍が現れて、ナオミの周りを回り始めた。

 お、ナオミも素質があるね。ニンフルと同じくらい頭が良さそうだよ。


 クラスでは、ナオミが2番目に精霊を呼び出したので驚いていた。

 ニンフルとナオミをきっかけにして、成功する生徒が増えていった。


「何度やってもダメだよ、なんでだろう?」

「僕もだよ。スリナリルは呪文があっているのにね。

 僕は、呪文がうまく言えないや」

「僕は甘い水を忘れるんだよね。

 呪文と甘いもの両方するのは難しいよ」


 お母さんが、できない子の為にアドバイスをしてくれた。


「甘〜〜い水の池の中で、呪文を唱えると思うんだ。

 そうすると成功しやすい。

 頑張って。

 スームリとバルシもできたね」


 スリーはスームリの周りに精霊の蛍が飛んでいるのを見て、同じように出したいと強く思った。


 今度は甘い水の池の中で呪文を唱えているのを想像しながら唱えてみた。

 みんなと同じ精霊の蛍が現れて、スリーの周りを回り始めた。


「やった〜〜。

 スースラムも頑張れよ。

 特別甘い水の池でゆっくりと正確に呪文を唱えたら成功するよ」

「分かった。やってみるよ。

 僕はすごく、すご〜〜〜〜く甘い池の中で呪文んを唱える。

 ホホホタルコイヒカリヲ」


 特大の精霊の蛍が現れて、スースラムの周りを、とても強い光で回り始めた。


「すごい。やったーー!

 こんな大きなのが出てきたよ」

「そうか〜。特別甘い池だと大きいのが出るんだね。

 スースラムもやればできるんだよ」

「うん。ありがとう」


 それを見たお母さんが驚きの声で言った。


「凄いねスースラム。

 大人のエルフと同じくらいの蛍だよ。

 みんなも彼を見習うように」


 スースラムは、生まれて始めてみんなの前で褒められて、ニコニコしている。

 スリーはスースラムのように、特大の妖精を出そうとしたけれど、何回しても出せなかった。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る