第5話 スースラム
罰時間が終わったスリーは、1時間目の授業である植物学の枝に向かった。
学園の各枝の先には各学科のクラスルームになっている。
罰時間があって、遅れていたので急いで向かった。
そこではすでに生徒が座っていて、スリーが最後だった。
空いている席は最前列しかない。
仕方なくその席に座ったら、ちょと太ってメガネを掛けたスーピラ教授がちょうど入って来た。
「おや、珍しいな。スリーが目の前に座っている」
入って来てすぐに言った言葉がこれだった。
クラス中がクスクスと笑っている。
スリナリルは今日は、ついてない日だと思った。
「え〜、それでは教科書の64ページを開いて。
今日は自走する菌類を勉強する。
スリー、今日はやる気があるみたいだから4行目まで読んでくれ」
クラス中がまた笑った。
スリナリルは、今日は笑われる日だとあきらめるしかなかった。
「はい、スーピラ教授。
勝手に動き回る菌類は珍しく、現在までに3種類しか見つかっていない。
1つ目はゲジゲジ・シイタケで、各家庭の地下で栽培されている。
2つ目はトマッテイルヨ・ツキデタは野生で、月夜が当たると動き出す。
3つ目はツカマリニクイ・ゲキヤクは、この3種類の中でも特に見つかりにくい。
以上です教授」
「そこまででよろしい。
読んでもらったついでに、これらを捕まえる魔法は何かな?」
「トマッテクレナイデモトマレ、ですスーピラ教授」
一部の生徒から賞賛の声が聞こえた。
この頃の年の子は、地下が暗くて行かないのが普通で、捕まえる魔法も知らなかった。
さすがグランの子ども、と言った声まで聞こえて来た。
スリーは少しだけ気持ちが良くなった。
「すごいな今日のスリーは。その調子で頑張れよ。
え〜〜、それでは。
この菌類の特徴について言うと、足が生えていると思うかもしれないが、実は足ではなく口である。その訳は・・・」
こうして植物学の授業が過ぎて行った。
2時間目の授業は弓矢だ。
スリーは弓矢もダメだった。
弓矢が大の苦手で、クラスでも後ろから数えた方が早い。
クラス全員が一列に並び、遠くの動き回る標的を狙う。
「全員、始め!」
そう言ったのは、バラグンダダ教授だ。
筋肉質で背が高く、エルフの中でもイケメンの部類に入るので、一部の女子生徒の憧れだ。
お父さんの親友で、最後の戦いの時には怪我をしていて参加できなかった。
お母さんに再婚を去年申し込んで断られたその後は、スリーに対してジメジメしたイジメをしている。
「これでどうだ」
やっぱり当たらない。
バラグンダダ教授が近くに来て嫌味ったらしく言った。
「英雄グランの子が、全く当たってないではないか。
グランがスリーを見たら嘆くぞ」
近くにいた生徒が笑っている。
悔しいけれど今のスリナリルは言い返せなかった。
隣では太っているスースラムが狙いを定めて矢を射った。
まるで見当違いの所に矢が刺ささり、誰かがそれを見て言った。
「下手くそ」
「太っているから当たらない」
声のする方を見ると、スームリと腰巾着のバルシだ。
いつも彼らが率先してスースラムの悪口を言う。
スームリは名門エルフ家の息子で、エルフの女王の甥っ子にあたる。
また彼の従兄弟で、1学年下の王女の直系である孫娘のエールモーリアとよく一緒にいるのを学園内で見かける。
そのため、生徒達から一目置かれていた。
「スリーも当たらないね。
どうやったら当たるんだろう?」
「教授が言っていた、心の目を使うんだよ。
と言っていたけど、意味わかんないよね」
スースラムのお父さんも、スリーのお父さんと同じ戦場で戦死していた。
そんな彼とスリナリルは友達で、家族で付き合っている。
スリーは、今度は標的の気持ちになって射った。
今度は近くに刺さった。
もう一回やろうとしたら、バラグンダダ教授が授業が終わった事を告げた。
やっと嫌な弓矢の授業が終わった。
待ちに待ったお昼で、サーシャリーでの最大の楽しみだ。
スースラムと一緒に、木の根元近くにある1番大きな枝の先にあるホールへ向かった。
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