第3話 双子の妹ニンフル
お母さんを見たら、ゲジゲジ・シイタケを魔法で切って、香辛料は空中で細かくすり潰していた。今日がスリーとニンフルの誕生日なので、好物のグジャグジャシイタケを作ってくれているのだ。見かけはグロいけど、味は最高だ。
「スリー。ニンフルを呼んで来てくれる。もうすぐ朝ごはんよ」
「は〜〜〜い。」
スリーは、やけに張り切っている。昨日習った、人を呼ぶ魔法を試してみることにしたからだ。
最初に名前を言って、後から魔法の言葉を唱える。すると、小さな蝶々が現れて呼んで来てくれるのだ。
「ニンフル、キテキテチョウ、ガ!!
あ、蛾がいらなかった」
ニンフルは、スリーの二卵性の双子で妹になる。
この頃の女の子の特徴で、同年代の男の子より背は高い、
すでにスリーよりも高くて、目がぱっちりとしており鼻筋が通っている。色白で口はお喋りが好きそうな感じで、お母さん似の可愛い子
髪はスリーと同じで色だけれど肩まで伸ばしている。
顔の大きさぐらいある幻の蛾が現れて、ニンフルを呼びに行った。
しばらくすると、ニンフルの部屋で悲鳴が聞こえてきた。
「きゃ〜〜〜! 何、この大きな蛾!!
つきまとって離れない〜〜〜〜」
ニンフルはたまらずに、キッチンに駆け込んで来た。ニンフルの後を追って来た蛾は、キッチンに入るとフット消えた。
スリーは、一応目的が達成されたので満足した笑顔になっている。それを見たニンフルは、疑い深そうに双子の兄を見ている。
「スリーでしょう。さっきの大きな蛾?」
「蝶を出そうとしたらさ、蛾が出て来たんだよ。でも、ニンフルが朝食に間に合ったから良かったよね」
「もう、スリーの下手クソ〜〜〜!」
「クソ〜、だけ大声で言うなよ」
「せっかくスリーの誕生日のプレゼントを作ったのに。
はい、これ。誕生日おめでとう」
ニンフルが手渡してくれたのは、10センチ角のガラスだ。その中に、イルカに乗ったスリナリルが見えた。今にも泳ぎだしそうな、年の割には見事な作品になっていた。
「スリー、イルカのジャンピ好きでしょう。だからね、これ作ったんだ」
「あ、ありがとう。すごいね。僕はここまで出来ないよ。
えーと、はい、これ。誕生日おめでとう。昨日の夜に作ったんだ」
スリーはニンフルにプレゼントを渡した。スリーが渡したのは、ニンフルがお母さんのドラゴンを世話をしている構図だ。ドラゴンはまあまあ良かったのだけれども、ニンフルが小さすぎて目鼻口がなかった。
「ニンフルも誕生日おめでとう。どれどれ、母さんにも見せて。
ニンフルは、ほんとに上手だね。美術のスルムリ教授が褒めていただけの事はあるよ。
スリーのドラゴンはいいよ。でも、ニンフルがね」
「僕はもういいよ。ニンフルが頑張れば」
「何言ってんのスリー。まだ11才になったばかりでしょう。
今から決めつけない!!
エルフの才能は無限に広がっているんだからね」
お母さんは真剣な目でスリーを見ている。
「お母さんのそのセリフは、耳にタコだよ。授業でも時々、言ってるし」
「スリーは勉強はダメだけど、体育はすごいよね。特にイルカ競争では1位になったしさ」
「お母さん。子供に勉強はダメだけど〜〜、なんて言わないのが普通だよ」
「得意なものを伸ばせればいいと思うんだよ、母さんは」
「変なお母さん」
「そうそう、母さんからも2人に誕生日プレゼントを渡さないとね」
そう言うとお母さんは、呪文を唱えた。お母さんは早口で呪文を唱えたので、スリーには呪文が聞き取れなかった。
お母さんの部屋から、さっきと同じような四角いガラスでが飛んで来た。そして、あっというまにお母さんの手の平の上にはそれがあった。
「はい。これはお母さんからの誕生日プレゼント」
エルフの誕生日には、ガラスの中に細工して送る習慣があった。
スリーへのプレゼントの細工は、先週1位になったイルカ競争で、手で触れるとゴールのシーンを再現していて、右から左へと動いていた。
2位のスームリとはわずかな差だった事が分かる。
ニンフルへのプレゼントは、去年の年越しのお祭りの時に着飾ったニンフルで、手で触れるとクルッと回っていた。
とても可愛いくて、薄いピンクのドレスが似合っていた。
「ありがとうお母さん。これもすごいや。この2つ、僕の宝物にするよ」
「勉強も頑張ってよ。
時間が無くなるから、朝ごはんにしないとね」
根野菜のサラダはスリーはあまり好きではなかった。あまり食べようとしないので、鼻水焼きの皿の上にお母さんがのせた。
好物のグジャグジャシイタケがタップリと食べれたので一応満足した。
食べている途中で、学園の昼休みの時間に学園長から重大な発表があると母さんが言った。
「お母さん、それ何の話なの?」
「今は話せないけれど、2人にとって重要な事だよ」
「重要ってどんな?」
「それは聞いてからのお楽しみ」
「へーーんなの。重要でお楽しみって意味わかんないよ」
「いいのよ。今はそれで」
最後にデザートが出てきて、それはアッチムケホイホイイチゴ。あっち向けホイで勝たなければ、苦い味になるイチゴだった。
スリーはこのイチゴの味は好きだったけれど、食べるまでが大変だった。
「あっち向けほい。
あっち向けほい。
あっち向けほい。
やっと向いてくれた。うん、美味しいや」
妹を見ると、すでに3つ目を食べようとしていた。
優等生のニンフルを見ると、どうしても少し落ち込んでしまうスリーだった。
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