第2話 エルフの子スリー

 スリーはお母さんが飼っている、オキナサイ・イモムシに起こされた。

 喋りながら顔中を舐め回し、起きるまで止めないイモムシだ。ちょっと気持ち悪い。


「起きろ〜〜、起きろ〜〜」


 たまらずに飛び起きたのに、スリーの顔はすでにベトベトになっていた。仕方ないのでスリーは顔を洗いに洗面所に行って、何度も洗う。スリーが毎朝顔を洗わないから 、お母さんが目覚ましと兼用で使っている。


 スリーは痩せているけれども、運動神経はずば抜けていい。顔は幼さが残っているが、目鼻がはっきりとしていて、お母さん似。口は歯が入れ替わる時期で、笑うと歯がない所があるので愛嬌のある顔になる。髪の毛は白に近い金髪を短く切っている。


 お母さんは、2人の子供がいるとは思われないぐらいに若くて美人で色白。そして背も高く、プロポーションも抜群。


 さらに魔法の力は強く、魔法学院で魔法の研究もしている。その成果は誰もが認めており、森中のエルフ達から尊敬と畏敬の念を持たれていた。


「スリー起きたわね。13歳の誕生日おめでとう」


「ありがとう、お母さん。

 お母さん。そろそろオキナサイ・イモムシもう止めてくれないかな?

 僕もう13歳だよ」


「そうだね。

 オキナサイ・イモムシより先に起きればいいと思うんだよね、母さんは」


 そう言うと、お母さんのマリネラは優しくスリーをハグしてくれた。


 お父さんのグランは7年前に、ダークエルフとの戦いで戦争を仕掛けたダークエルフのクーダダンク王と刺し違えて戦死していた。


「スリー、朝ごはん用に地下に行って、ゲジゲジ・シイタケを取って来て」


「え〜〜、また僕が。ニンフルに行かせてよ」


「ニンフルは今勉強中よ。スリーもお勉強をすれば取りに行かなくてもいいわ」


「え〜、朝からヤダよ!」


「だったら、取ってきて」


「分かったよ、行けばいいんでしょう。何個いるのお母さん?」


「そうね。20個ぐらいあれば足りるわ」


「そんなに」


「あなたの為よ。頑張ってきて」


 スリーは渋々地下に降りて行く。暗くてジメジメしていて嫌〜〜な所だ。

 お母さんに言われたって行きたくない所だけど、勉強がもっと嫌いなスリーは仕方なく行く。

 スリーは、やっと見えている壁で動き回るゲジゲジ・シイタケに右手で狙いを定めて呪文を唱えた。


「トマッテクレナイ・デモトマレ!」


 ゲジゲジ・シイタケは、シイタケなのにエルフの気配を感じて動き回る。

 素早いので、手で取るのは大変だ。


「やっぱり一回では当たらないや。

 これでどうだ」


 今度は右手と左手で別に狙いを定めた。


「トマッテクレナイ・デモトマレ」

「トマッテクレナイ・デモトマレ」


 一個のゲジゲジ・シイタケの動きがやっと止まった。

 すかさずスリナリルはカゴに入れた。


「やっと一個取れた。

 まだ19個もあるよ」


 ゲジゲジ・シイタケはエルフが好きな食材だ。


 甘くて少しだけ弾力があって食べ応えがあるので、どの家庭でも地下で栽培をしている。

 見かけはゲジゲジによく似ていて、足の様なもので壁を動き回っている。

 やっと20個になったスリーは、肩で息をしていた。


「ハア〜、ハア〜、ハア〜。

 朝から疲れたよ」


 朝から運動して、お腹が空きすぎて力が入らない。疲れた体で、やっとお母さんの所に行った。


「お母さん、これでいい? ハアー、もう疲れたよ」


「そうね、足りるわ。お疲れ様。それと鼻水焼きのお皿を食卓に並べて。

 もうすぐ朝ごはんよ」


「え〜〜、あれ使うの。

 噂では、本当に鼻水を入れてるって話だよ」


「単なる噂よ。本当だとしても高温で焼いてあるから大丈夫。鼻水焼きは、丈夫で色鮮やか。

 今日はスリーとニンフルの誕生日だから、高価な食器を使いたいのよ」


 スリーは鼻水を入れながら焼いているお皿を想像して、オエって吐く真似をしていた。






























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