第6話

 廊下の突き当たりには大きな扉があった。大体2メートルくらいかな?


 「よし、じゃあシン。あとは頑張ってね」

 「え?」

 「え? って、試験だよ試験。知らなかった?」

 「知らんがな!」


 そんなのあるの!? いやまぁ無い方がおかしいけどさ!

 長いことニートしてたんだよ? ゲームで培われたセンスは有れども学力はド底辺だよ? ルート何それ美味しいの? の次元だよ?

 セロルは慌てだした俺を宥めるように言った。


 「……まぁ大丈夫だよ。募集人数150人に対して100人しか集まって無いし、絶対に入れる。結果はどうであれ、入れるのは確実」

 「大丈夫それ? 遠回しにバカって言ってない?」


 重厚な音と共に重たい扉が開かれる。


 「まあ気楽にね。あ、一つだけアドバイス。審査員が見てるのは、『センス』だから。じゃあね!」

 「はあ?」


 センス? なんのだよ。

 開かれた扉の先にはすでに入学希望者が居たらしく、百人近い人の目にギロっと睨まれた。


 そして、その人だかりの奥。黒のローブを身にまとった、いかにも魔法使いという風貌の男が話しだした。


 「これで全員かの。 ……やあ諸君。アルヴォーヴ魔法学校へようこそ。早速だが、試験を開始しよう。今から諸君には『かくれんぼ』をしてもらう」

 

 ここでほとんどの希望者がどよめいた。


 「かくれんぼ!? おいおいフザケンナヨ」

 「俺らは本気で冒険者や傭兵になりたくてここまで来てンだよ」

 「遊びなら帰らせてもらうぞ」


 様々な暴言が飛び交う。

 おー帰れ帰れ。ライバルは少ない方がいい。

 俺は鼻で笑った。だがローブの男は眉ひとつ動かさず、先程と同じ口調で言い放った。

 

 「遊びだと思うなら帰ってもらって結構。では、今騒いだそこの三人は失格ということで良いな?」

 「え、ちょっ!」

 「はァ?」

 「……くそ」


 なかなか聞き分けのいい奴らみたいだ。それにしても「かくれんぼ」が試験か……

 どういう意図があるんだ?


 「ルールはいたって簡単。隠れている者を見つけ、『見つけた』と言ってから『何かしら』の方法で触れること」


 なんだその、『何かしら』って……


 「参加者にはこの腕輪をつけてもらう。範囲は学園内。15分後に開始する。では、健闘を祈る」


 メイド姿の女性から中央に宝石がはめられた腕輪が支給される。

 赤……というよりは紅に近い色合いだな。


 「ふーん……? 綺麗なもんだな」

 「はあ? お前見る目ねェな。もっとよく見ろよ」


 一人で腕輪を眺めていると横から苦言を呈された。


 「こんな純度の低い鉄の腕輪をよく綺麗と言えたもんだ。宝石も最低ランクの魔石だしよ」

 「……なんだお前」

 「俺か? 俺はタトアク・ツァード。親父が鑑定士だからよ、こういうのにはうるせェんだ」


 ……知らんがな。

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