第4話

 スラム街。

 極貧層が住んでいる場所……と、かの有名な「ウィ◯ペディア」さんは言っていた。


 だが、目の前に広がるのはそのようなものでは無く、どちらかというと城下町という言葉があっている気がする。それほどに大通りが賑わっているのだ。


 二階建ての石造が並び、露店も出ている。まさに城下町。そして露店の中には見たこともないような果物や干物が売られていた。

 一際俺の目を引いたのは、刃渡り50センチ程の剣であった。


 その剣にふらふらと近付いている時、


 「おう兄ちゃん! ヘンテコな服を着てるな? 銅貨45枚で売ってくれや」

 

 禿げた人に捕まった。(正確には禿げた露店の主人らしき人)

 ふむ……なかなか強引な商法だな。

 てか、売った後、俺はどうしたらいいんだよ。裸じゃねェか。

 そそくさとその場を去る。

 

 (さてと、これからどうしようか。から貰った紙にもなにも書いてないし……)


 アイツというのは「おお、勇者よ……」と言ったあのジジイのことだ。


 やるべきことが何か分からず、大通りを五分ほどブラブラしていた時、羽がついたキャップを身に付けた見た目18歳ほどの青年が話しかけて来た。


 「お、お兄さん。いかにも暇そうにしてるな? そんなお兄さんに朗報だよ。なんとあの冒険者育成学校、アルヴォーヴ魔法学校が生徒募集をしてるんだ! お兄さん、見学だけでも行ってみないかい?」


 なんだこの爽やかボーイは。


 「いや、あの、あなたは?」

 「ん? ああ、自己紹介がおくれたね。僕はアルヴォーヴ魔法学校の生徒代表、セロル・ネルタスだ。それよりどうだい? 見学」

 「いや、いいです。あなたと俺は気が合いません」

 「えぇ!?」


 こちとら、こっちの世界に来るまではニートやってたんだ。リア充臭い奴には騙されんさ。

 

 「今年は百二十年に一回しかない、『魔力祭』の年だよ? 来といたほうがいいと思うけどなあ……」

 「魔力祭?」

 「あれ? お兄さん『魔力祭』しらないの? アルヴォーヴ魔法学校のシンボルである、巨大魔石を祝うお祭りなんだけど……」

 「どんなことをするんだ?」

 「確か今年は……魔具露店と闘技大会、後は王位継承の儀だったかな」


 王位継承? たかが学校のイベントでそんな大層なことをするのか。


 「闘技大会って?」

 「……お兄さんもなかなか無知だね」

 「うっせェよ」

 「闘技大会っていうのは、その名の通り腕に自信がある人が、トーナメント形式で優勝を目指す大会の事だよ。

 ちなみに今回の優勝賞品は神代かみよの魔法具、『グラム』って言う剣のレプリカ……だったかな」


 ……ん!? 知ってる言葉が出て来た。

 『グラム』……剣神とも言われたあのオーディンが人間に贈り物として渡したと言われる剣の一つだ。

 レプリカということは、本物もどこかにあると言うことか……?

 

 「その闘技大会にはどうしたら出られるんだ?」

 「闘技大会に出られるのは、魔法学校の生徒か、もしくは卒業生じゃないとダメなんだ。でもまだ一ヶ月も先の事だよ? ……と言うかお兄さん出場するつもり!?」

 

 数々のゲームに登場して来たあのオーディンが、剣神ともうたわれたあのオーディンが遺したと言われる剣。たとえレプリカだとしても欲しいと思うのは、おかしい事ではないだろう?


 「どうしてもその剣が欲しくなった」

 「ちなみにレプリカの他にも、王族の紹介でお見合いができるそうだよ」

 「早く行こう!!」


 非リアの童貞力どうていりょくを舐めるなよ。

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