平凡男子とぬこ治療 1
俺は、夢中で駆けていった
頭の中は、ぐっちゃぐちゃ
どうしたらいいのか、分からない
もう、やだ、やだ、誰か、俺を……
鮮やかな色がなくなった、この世界なんて、つまらない
投げ出したい
誰か、
誰か、
俺を殺して……
「はぁ、はぁ……っ…くっ、はぁはぁ……」
息が、苦しい
生きるのも、苦しい
「はぁ…くっ、うっ……うっうぅ、はぁ、っぁあ……!!」
鼻の奥がツーンときて、目の奥が熱くなる
溢れてきたものを、堪えられず、地面に、とめどなく、零れ落ちる
あぁ、あぁ、
やだやだ、みんな、みんな、
どこ行ったんだよ
置いてくなよ
なんでだよ、なんでだよ、
あぁ、もう……
「っ……ふっ、んっ…………っ!?」
唐突に、制服のポケットが震えた
何事か、と驚いたが、ポケットのずっしりとした質量に思い出す
携帯が、何かを受信したのだろう
驚いたことにより、涙が、引っ込んでしまった
濡れた頬と、目を、雑に擦って拭い、ポケットに手を突っ込む
滑らかで、滑り落ちそうなボディを、傷つけないように、優しく包み込む
画面から光が出ると、メールを受信したようだった
そういえば……あいつ等に、昨日連絡をいれたが、何か返ってきているのだろうか
それは、メール見た後で確認しよう
「母さんから、メール……?」
この時間帯なら、滅多にメールをしてこない母が、どうして?
やはり、疑問に思ってても仕方がない、すぐさまメールを、開く
───
今さっき、学校から連絡で、
帰りは、父さんが車で迎えにいくから
待っててね
───
唐突の集団失踪に驚愕し、慌てて書いたのだろうか
同じクラスなのだから、知らないわけないじゃないか
母さんらしいっちゃ、らしいが
しかし、俺は今から帰るから、迎えはいらないんだよな……
連絡しておこう……
───
母さん、同じクラスなんだから、それくらい知ってるよ
俺、今気分悪くて早退したから、帰ってるところなんだよ……
だから、父さんの迎えいらないからな
───
……よし、いいか。
じゃあ、俺があいつ等にむけて、「不審者いるから、通るな」と、警告した文に、何と返信が来たのだろうか
緊張からか、固唾を飲み込む
手が、震える
某アプリの緑が目に突き刺さる
癒しのグリーンが、乾いた目には優しくなかった
緑がやっと消えて、トーク一覧にとぶ
俺含めた、例の四人との五人グループ
未読メッセージが数件
これでは、最後に発信されたメッセージが、表示されるのだが、
スタンプが押されて終わってる
なんだか、焦らされている気分だ
あいつ等がいないのは確かなこと、なのに
いつの間にか、汗をかいていたようで、
手がじんわりと湿っている
汗が、額から、顔の横をつたって落ちる
反射的に拭う
汗は噴き出しているのに反して、唇は乾燥していたので、思わず、舐めた
いまだに押すことができていない……
勇気が、無い
いや、こーいうのは勢いだ!!
「ぅりゃっ」
怖くなって、押した瞬間目をつぶってしまった
恐る恐る、目を開ける
まず、俺の、不審者いるから通るなメッセージ
その、数時間後に、始まった
最初が、
[不審者?え、それ、大丈夫だったか?]
だいたい同時刻くらいに、
[えっ、不審者!?マジで!!??]
数分してから、
[ふむ、それは、危ないな……。]
その直後なのだろう、
[あ、俺、最後?ま、いーや。で、不審者?危ないね、退治しにいこうよ(笑)]
……。
ん……?
あーれれー?
おっかしーなぁー?
トンデモ発言あったぞー?
……こほん
気を取り直して……
ど う し て そ う な っ た
いや、以前から、お茶目なところはあったけど、別に、それを今、発揮しなくていいよ?
でもまぁ、心配性な感じの
相変わらず返信が早い、
[退治……か。]
[大丈夫なの?それ]
すかさず、
[だって、あそこ、子供も女性も通るよね。それに、今の時間帯なら、帰宅中のOLとか、部活帰りの生徒とかが、通るかも、しれないよね?]
それも、一理あるが……
頼みの綱、
[ふむ、退治も良いかもしれんな……。]
納得すんなよ、
絶対、調子に乗ってる、
[でしょ?
そういや、
流されてしまったであろう、
[まぁ、良いかもしれんな]
[懲らしめるのかー]
こいつ等、物騒……
爆弾、
[大丈夫だよ!!何たって、俺強いからね☆あ、君達もそこそこだっけ?]
出た、俺強い発言
事実だから、文句言えないけど
そして、
[自分で強いって言っちゃう!?……まぁ、そんじょそこらの一般人で、
[事実なんだよね……退治って、ボコって、警察連れてけばいいの?]
[……う、うむ。
なんなのこいつ等、いちいち物騒!!
事の発端、
[皆乗り気で嬉しいよ(笑)じゃあ、いつも通り、正門集合ね]
他三人から、スタンプが押されている
なんか、頼もしいな……
ここで、トークは終了した
決行、されてしまったのだろう
不審者なんか、いないのに……
そうすると、あいつ等は、あの合流地点に行ったのだから……
集団失踪した、手がかりが、掴めるかもしれない……!!
そうと決まれば、行くしかない!
俺は、……泣いたことにより疲れた体を、なんとか動かし、懸命に走った
早く
速く
はやく
「はぁっ、はぁ……っはぁ、ふぅ……」
泣いた疲れと、走った疲れが、同時に襲い、上からの重力が重く、のしかかった
今にも、膝から崩れ落ちそうなのを、我慢し、周囲に何かないか、見回した
「……。何も、ない、か……」
不思議なことに、昨日とは違う場所のように、あの恐怖感は消えていた
嘘のように、無くなっていると、更に気になった
もう少しだけ、この道を進んでみるか
四人の家には、行ったことがあるので、周りの風景が懐かしい
驚くほど、何一つ変わっていない
この角を曲がれば、
が、
いつもはいないものが、転がっていた
恐怖から、身構える
ジリジリと、動かない何かに、近づく
何か、は、全体的には白色だが、すす汚れていたり、所々、血が固まっているのだろうか、赤黒いものが混ざっている
近づくにつれ、腹部が上下しているのが見えた
生き物なのだろうか
……気分悪くなってくる
しかし、集団失踪した、手がかりになるかもしれないので、近づかなくてはならない
だんだんと、近づくにつれ、眉間のしわが深くなるのを感じる
もう、動く何かが、目と鼻の先のとき
気づいてしまった
耳と尻尾が生えてることに
そして、既視感があった
コイツは猫で
いつもの合流地点にいる奴、に見える
さてはて、どうしたものか……
ジッ、と、意味もなく、見つめてみる
「お、おーい……」
応えが返ってくるはずがないのに、呼びかけてみる
かろうじて生きているのに、瀕死状態でほったらかしには、したくない
癒しがなくなるのも、嫌だ
しかし、ここら辺の病院など知らない
「……はぁ……」
幾度目かの、溜め息をつく
幸せなんて、とうの昔に無くなってる
……最終手段の、極技を使うとするか……
「よっこいしょ……」
ズッシリしているし、制服が汚れていそうだが、気にしたら負けだ……
最終手段、俺の家で、手当てしようと、思う
出来るかどうかは別だが……
とりあえず、誰にも見られないように、立ち去ろう
平凡男子は今日もゆく~俺が異世界とか無理だって……~ Luna @Luna1213
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