平凡男子とお友達



「……きろ!……い!おき…!ぅうおい!!」



 バシィィッ!!



「~っ!?いったぁっ!!??」




 はい、皆さんオハヨウゴザイマース


 気持ち良く寝てたのに、最悪な目覚め


 叩かなくても……




「ははっ、スゴい音でたねー」


「フッ!!お、おっはよー!ククッ」


「夕方だから、おはようではないだろ……」


「お前、寝過ぎだろ……放課後だぞ」


「笑いすぎだよ……は!?もう放課後!?」



 俺含め、ここにいるメンバーは5人


 初めは、皆、友達の友達という関係で、全く関わりがなかった。


 しかし、皆の共通の友達のおかげで、ここまで仲良くなれたと思う。



 仲の良い定義なんて、分からんが




 よく分かってない方のために、俺の友達を紹介したいと思う




 まず、俺を凄い力で叩いて、「寝過ぎ」と呆れたのは



 渋谷しぶたに潤也じゅんや



 俺達の共通の友達


 髪を茶か金に染めていて、目つきが悪い

 最初はヤンキーだと思ってたが


 驚くほど人が良い

 大阪人かと思うほどボケツッコミ能力が長けているし、人懐っこい笑顔で惹きつけられる。それに、癖っ毛なのか、後ろ髪がピョコピョコはねているのは、ひよこを連想させて可愛い。

 運動もそこそこできるし、なんといっても足が速い。観てるこっちまで気持ちよくなる走りをしてくれる。

 顔だって良い。それなりに整っている。コイツより顔がいいヤツはいるけどな。

 頭もイイ。一見馬鹿っぽそうなのに、それなりに出来る。数学が得意。テスト前は俺の苦手な数学をよく教えてくれる。一方的に頼んでも、ツッコミながら引き受けてくれる。めっちゃ良い奴。


 陸上部に所属していて、なんか足の速さを存分に発揮してるらしい。





 次に、軽く笑って、心配している言葉をかけていながらも、そう見えないのは



 神村かみむら幸一ゆきかず



 いつも、微笑みを絶やさないし、誰にでも優しい……というのは猫被ってるだけであって、本性はお腹の中真っ黒クロスケである。笑顔で人を罵倒するようなヤツだ。

 こんな本性を知ってるのはここにいるメンバーだけだろう。心を開いてくれているのは嬉しいが、腹黒のドSなので、我々の肉体と精神とその他諸々がボロボロになるから、勘弁していただきたい。


 髪は襟には付かないがちょっと長いくらいの黒髪。

 女っぽい顔だから、美人と言う言葉が似合う。腹黒ドSだけど


 頭はもう、完璧すぎて何て言えばいいんだか。とりあえず、大差が付きすぎて絶望死出来る。


 美術部員で、この前なんかすごい賞取ったらしい。興味ないけど。絵はうまいと思う。




 次、笑いをこらえながら元気に挨拶してくれたのは



 菊沢きくさわ英樹えいき



 コイツは結構なお調子者のムードメーカー。でも、やるときはやる頼もしい奴。


 よく無駄な動きをしていて、見ていて楽しいが、小学生じみていて、心配になる。


 偶に、一人で抱え込んで、暗くなっているが、相談して、溜め込んでいたもの吐き出させると、翌日また元気になっている。


 可愛くて、どこか危なっかしい奴。


 女子の間では、弟にするか、ペット(いい意味で)にするか討論されてるとか、されてないとか。


 見た目も、高校生のわりには童顔で、華奢に見えるが、わりと力もあって、とギャップがある。髪は、風通しが良さそうなサラサラで、茶色の短髪。


「オレばかだよー」と言ってるわりには、めっちゃ頭いい。くそっ。


 コイツも渋谷しぶたに潤也じゅんやと同じ、陸上部員で、渋谷しぶたにとは自他共に認めるライバル関係らしい。



 最後に、「夕方だから、おはようではないだろ」と、ごもっともなツッコミをしたのは



 田崎たざき真一郎しんいちろう



 彼は、おじいちゃんのようだ。

 堅物で、融通が利かなく、一昔前のことを知っていたり信じてたり、生真面目で、説教癖があったり、上に立つのがまんざらでもなかったり、その上、年齢のわりには老けが((ゲフンゲフン……少々、大人びた顔立ちで……


 あんたはじぃさんかとツッコミたくなるが、見た目とか性格とか、その他いろんなもので誤解しがちだが、彼は決して悪い奴ではない。


 信念はしっかり貫くし、他人に厳しく自分にはもっと厳しくだったり、根っからのおじいちゃんっ子で、おじいちゃんと一緒に過ごすうちに、おじいちゃんの言動や趣味が似たりよったりしていったり、意外と天然で抜けているところがあったり、素直で、良いことは良い、悪いことは悪いとハッキリ言える。


 ほら、良い奴だろ?


 見た目はあれで、言動もキツいかもしれないが、慣れてくれば、落ち着く、居心地のいい奴になる。


 見た目については、老けt((ゲフンゲフン……大人顔負けの見た目で、髪については


「髪?おしゃれカットなど興味はない。男児は黙って、坊主だろう!!」


 とか、いってそうだが、坊主ではない。この見た目で坊主はこっちがツラい。お母さんの気遣いか、はたまた自分の意志かどうかは、分からないが、ちゃんとした、長すぎず短すぎずの、一般的な男子の黒髪の髪型だ。


 剣道部に所属していて、その姿はめっちゃ様になっている。竹刀が真剣に見えるくらいだ。




 以上!

 何か質問ある奴は?

 ……ないn((なに?一人忘れてる?

 あぁー……ソイツね……紹介とかどうでもよくない?え?ダメ?なに?一応この物語の主人公だろって?主人公らしくないだろ……モブでいいだろ……ダメ?……わかった……面倒くさいの極みだし、誰が興味あるのか知りたいぐらいだけど、やらなきゃならないらしいので……めんど……




 えーっと……気を取り直して(?)


 さんざん、色んな事ほざいてきた、一応この物語の主人公らしい、俺は、



 柴谷しばたに奨真しょうま



 奨真しょうまなんて、カッコいい名前だが、当人はそんなんじゃない。まさに、名前負けしている。


 性格はどこにでもいるような、平凡なひねくれ者で、面倒くさがり。他にもあるが、言い出したらきりがないほど酷い。


 男子にしては小柄だが、コンプレックスになってる……ことはなく、物陰に隠れるときや、地震で机の下に潜るときは絶対に楽だと信じてる。


 顔は、周りは整っているから、類は友を呼ぶで、俺も整っているかと聞かれたら、答えはNOだ。イケメンでもなく、かといって、醜いわけでもない。ようするに、微妙な、平凡モブ顔だ。


 髪だって、ちょっとフワッとしてるだけ、黒髪で特に変哲はない。


 頭は可もなく不可もなく……極度の面倒くさがり屋なおかげで、数学に関しては授業はたいてい聞いていなく、友人に教えてもらうだけで、物分かりは結構いい方だ。


 部活は、渋谷しぶたに菊沢きくさわ田崎たざきのように運動部ではなく、神村かみむらのように文芸部でもない。そう、俺は帰宅部だ。

 楽なぶん、特技がなくなってしまった。まぁ、特に気にはしてないが。




 究極のダメ平凡モブ主人公ですが、なんとかこれからよろしくお願いいたします。




「ブフッ…ショ、ショーマ。オレたち、部活行くよ」


菊沢きくさわ……笑いすぎだから、落ち着け……」


「でも、面白かったよね、奨真しょうまの、声と、顔が!フッ……ククッ……」


「ちょっ、幸一ゆきかずまでツボってるやん……ブッ!」


菊沢きくさわ神村かみむら渋谷しぶたに、落ち着け、笑いすぎると、柴谷しばたにが、可哀想だろう……フッ」


「え、ちょっ田崎たざきまで、笑うなよ!?みんな、ひでぇー……」



 この後もまた、声をそろえて笑われた。




 高校一年生の時、渋谷しぶたにを通してみんな出会って、高二になってからは、忙しかったぶん、こういうふうに、五人で笑ってるのは久々な気がする。


 柄でもないが、なんか、身近な幸せって感じがする。


 こんな事言う俺って恥ずかしい奴……


 ま、いーか。



「よし、じゃ、皆部活遅れないで行けよ?」


「ショーマじゃないんだから、遅れないよー!」


「そーそー。奨真しょうまも気をつけて帰れよー」


菊沢きくさわ渋谷しぶたになら、遅れないよな……渋谷しぶたにありがと、気をつけて帰るわ」


奨真しょうまも部活入ればよかったのにね」


神村かみむら、俺が部活入って、なんかできると思ってる?そもそも俺、帰宅だし」


「それ、部活じゃないからね」


「なんか、すいません……」


「部活動については、個人の自由だから、仕方のないことだろう。それより、帰宅したら、課題をしっかりやるのだぞ」


「ア、ハイ……」


「うむ。」



相変わらず、堅いなぁ……















──────────









「じゃーなー、また明日ー」


「バイバーイ!!」


「おう!じゃーな!」


「また、明日~」


「気をつけて帰るんだぞ」



個性の強い挨拶だこと……





俺は、皆と別れてからそんなことを考え、一人笑みをこぼした。









学校から俺ん家まで、徒歩で約10分。


家から出て約3分後くらいにある、交差点。そこで他の四人と合流する。他の四人はその交差点よりも前の道で、それぞれ合流している。


家は近くもなく遠くもなくといったところだ。




ここの河原に沿って歩いていき、住宅街に入る。少し行くと、俺が合流する交差点がある。その交差点ではブニャーという効果音が似合う猫が、塀の上で寝ている。


ブニャーだと、お世辞にも可愛いとは言い難い顔立ちで、ボヨーンとしている猫が思い浮かびそうだが、その猫はちょっと違う。可愛くないわけではないが、もっと美人な猫は沢山いるし、スラッとしてはいないが、ポテッとか、ポニョンとか、ポッチャリとか、そういった、愛らしいというルックスの猫がいる。


毛並みは、長くモフッとしていて、優しいミルク色の毛玉だ。


たいてい、寝ているか、眠そうにゆっくり瞬きしているかで、ハッキリと顔や、全身を見たことがなかった。いつかは拝んでみたいものだ。


あ、そろそろ「ぽにょんもふぶにゃ猫」が見えてくる。




「……あれ?」




今日はいない。



いつもいるし、今朝もいたのに……



どこか出かけてるのか?



残念……結構癒してもらってたんだけどなー



ま、明日の朝にはいるだろう……




「……ん?」




なんだろう…?




ここ、なにか違う…?




よくは分からないが、雰囲気が違う…?




なんだ…?




なにか違う……








勘は良く当たる方なのだ




それも、







悪い方なら特に……









ここはまるで、











悪魔が力を養うために安らかに眠っているような……







そんな嵐の前の静けさ……







「……っ、」









ふと、





つい先ほどまで会って話していた四人が、俺と別れた後に、向かう道を見て






思わず、息をのんでしまった。






なにも変わっていないはずなのに









だれかが










息を潜めてそこにようだった









身震いがした








ここにいてはいけない、と本能が警告していた







恐怖で足がくすんでいたが、なんとか奮い起こして、自分でも驚くほどの速さで自宅まで駆けた。




















俺の平凡だった日常は




この時




ゆっくりと、崩れ始めた───








……To be continued





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