第四楽章

 その夜はよく眠れなかった。

 どんな顔をしてヨクトに会ったらいいんだろう……。

 もやもや考えていたあたしだったけど、その心配は必要なかった。

「え、別行動……ですか?」

「そう。うでが使えないから、資料室で冊子作りしてるって」

 講堂でフェムト先輩はそう言った。

 あんまりうでに負担をかけちゃいけないから、かんたんな作業をってことらしい。あたしは拍子抜けしちゃった。

「かわりといってはなんだけど、ピコとナノと一緒にやれってさ」

 ピコ?

 足音に振り返ると、こっちに近づいてくる人がいた。赤銅色のさらりとした髪に、はしばみ色のきりっとした瞳。ナノと一緒にいるってことは……。

「はじめまして。君がミリ?」

「はい! あなたがピコ先輩ですか?」

「うん、そうだよ。僕がピコ。君のうわさはかねがね聞いてるよ。近くで見たら、すごくかわいいね」

 にゃ!? か、かわいいってなに!?

 きのうからあたし、かわいいって言われすぎじゃない!? これがモテ期!?

 きのうもヨクトに……。

 ヨクト……。

 本当にヨクトが犯人なのかな? あたしはまだ信じられない。

 証拠はない。ピコ先輩が見たって言うけど、ただそれだけなんだ。

 信じたくないって気持ちがあるからかな。あたし、ヨクトのこと好きになり始めてた。

 最初はいじわるなヤツって思ったけど、よくよく知ってみたら優しい人だった。あたしはそう思ったことを否定されるのがこわいんだ。

 信じた気持ちを裏切られたくない。

「ミリ?」

 ナノの声にはっとした。いけない! 考え込んじゃってた!

「そ、そういえばうわさってなに!?」

 あたしはナノの方をぐりんと向いて言った。

 ピコ先輩の聞き捨てならない言葉を思い出したの。うわさってナノから? もう! ナノったらなにを話してるの!?

 ナノとピコ先輩とは楽しそうに笑っていた。もー!

 あたしたち四人は、今日は玄関のかざりつけだった。モールを玄関のかべにかざりつけていく。

「ミリ、今日ヨクトと会った?」

「ううん。ケガしてるから、今日は資料室なんだって」

 ヨクトは一人で作業してるのかな。もし犯人なんだとしたら、一人にしとくのはあぶなくない……?

「昼休みに資料室行ってみる? 話聞いておきたいし」

「そうだね。そうしよう」

 ナノの提案に、あたしはうなずいた。


   ♪


 昼休み。カフェテリアでサンドイッチとココアを買って、あたしとナノは資料室へと向かった。

「ヨクト、いるかな?」

「もしかしたら、入れ違いになっちゃうかもしれないね」

 ナノの言ったとおり、昼休みの資料室にはだれもいなかった。

 机の上には冊子とプリントがあって、さっきまで作業してたのかなってかんじだ。ホッチキスが二つ無造作に置かれている。

「ヨクトは一人じゃなかったみたいね」

「なんで?」

「だってほら。ホッチキスが二つ。一人だったら一つしか使わなくていいでしょ? もう一人いたんだと思う」

 なるほど……。やっぱりナノは頭がいいなぁ。

「なにか手がかりは残ってないかな?」

 ナノは資料室を探し始めた。

 あたしもそれに続くけど、なんだかふくざつな気持ちだ。

 犯人は見つかってほしい。だけどもしヨクトが犯人だったらいやだ。

 すごく勝手なねがいだと思う。みんな、早く犯人が見つかってほしいと思ってる。だから早くヨクトが犯人かそうじゃないか、はっきりさせたい。

「やっぱ見つかんないものだねぇ。どうする、ナノ? ヨクト探しに行く?」

「うん……。ねぇミリ、これ見て」

 ナノが手元のファイルを見ながら言った。あたしが近づいてそれをのぞき込むと、それは学院であったできごとを記録したファイルだった。

「なに? なにかあったの?」

「ここ。二十年前の記録なんだけどね。ここ見て」

 ナノが指差したところには、音符が飛び交って窓や物がこわれた事件のことが記されていた。

「これ……。この前、学院長が言ってたことかも」

「どういうこと?」

「あたしのママのことを聞いたときなんだけどね、ここに書かれてるようなことが起きたんだって」

「そうなんだ……。これって今回の事件に似てない?」

 言われてみればそうかも。音符が物を壊すってとこはそのまんまだ。

「そのときはどうやって解決したの?」

「ママが楽譜にしたとは聞いたけど……」

 あたしとナノは、またファイルに目を落とす。このときの犯人は、退学になったんだって。みんなを危険にさらしたんだもん。当然だよね。

「犯人は、この事件のこと知ってたのかな」

 ふいにナノが言った。

 昔の事件をまねしてるってこと? でもなんのために……?

「わからない。だけど学院長に話を聞いたがいいかもしれない」

 なにかヒントになるかもしれない。あのとき、学院長はなつかしむように昔の話をしていた。

「とりあえずは」

 あたしがそう言うと、タイミングよくおなかがグゥゥと鳴った。

 ナノはにっこりと笑う。

「ごはん食べよっか」

 うわーん! はずかしいよー!


   ♪


 資料室から温室が近かったから、お昼はそこで食べることになった。吹きつける冬の風に首をすくませながら温室に入ると、あたたかい空気がふわっと体をつつみ込んだ。

「あったかいねー」

「ここはオルゴールで年中一定の気温にたもっていられるもんね。ピコ先輩がクリスマスパーティに使うお花はここで育ててるんだって言ってた」

 魔法の技術は日々進化していて、このオルゴールみたいなものも作られるようになった。音楽院の卒業生の中には、そういった職人になる人もいるんだって。

 あたしたちは花だんのふちに座って、カフェテリアで買ったサンドイッチを広げた。

 あたしはたまごサンドとベーコンレタスサンド。パパのが一番だけど、カフェテリアのもなかなか負けてない。

「ミリのママって、あの、国一番の魔女って言われてる人なんだよね?」

「そうだよ。ママはすごいんだー」

 学院生活の中で、ママのすごさは伝わってきた。あたしのママにあこがれて、この学院に入学したってクラスメイトもいたくらいだ。

「じゃあ、冬の休暇(ホリデー)で会えるの楽しみだね」

 クリスマスパーティが終わったら、すぐにホリデーのはじまりだ。みんな家に帰ることになっている。

「うーん、どうだろ。今までも年末にママが帰ってくることって少なかったからなー」

 パパと新年のおいわいをすることばかりだった。今年はどうかなー?

 ナノがはっとしたように口もとをおさえた。

「そうなんだ……。ごめんね、わたし気づかなくて……」

「ううん! もうなれっこだから気にしないで! それよりホリデーの間、一回うちに遊びにおいでよ! あたしのパパ、料理上手だからごちそうするよ」

「いいの……?」

「もちろん! 休みの間、ナノと遊びたいし。パパもよろこぶと思う!」

 何度かパパに手紙を送ったけど、パパも会ってみたいって言ってたし!

 あたしが笑ってそう言うと、ナノもうれしそうに笑った。

「ナノ、こんなとこにいたんだ」

 そのとき、ピコ先輩が温室に入ってきた。

「昼休み中にごめんね。ちょっとナノに確認してもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」

「もうごはん食べ終わってたし大丈夫ですよ。ミリ、ちょっと行ってくるね」

「はーい。あたしはもう少しゆっくりしてから行くね」

 そうして二人は温室を出ていった。

 一人になった温室には、オルゴールの音だけがひびいている。このオルゴールにも音の魔法が込められていて、まわりを少しだけあったかくしてくれるの。おかげで冬でもこの温室にはたくさんのお花がさいている。

 あたしはエーデルワイスを見つめた。ママが誕生日にいつもおくってくれるお花だ。あたしはこのお花が大好き。クリスマスパーティでも、むねにかざろうと思ってるんだ。

 パーティで自分のお花を好きな人と交換できたら、二人は永遠に結ばれるってジンクスがあるんだって。

 少し前だったら、あたしもヨクトと交換したいなって思ってた。永遠だなんてほんとかなって思うけど、クリスマスになにかを交換できたらすてきだなって。

 いまは、ちょっとふくざつ。

「ヨクトをさがしに行こっかなぁ」

「なんか用?」

 聞こえてきた声に、あたしは飛び上がっておどろいちゃった。

 顔を上げると、そこにはヨクトが立っていた。

「ヨ、ヨクト!? いつの間に……」

「フツーに入ってきたけど? おまえ、全然気づいてないんだもん」

 そう言ってヨクトはあたしのとなりに座った。

 二人の間に沈黙が落ちる。

「うでは……どう?」

「まぁいたいけど、日常生活に支障が出るレベルじゃないよ」

 そっか……。よかった……。

「で、なんだよ。おれに用事じゃなかったのかよ」

 ストレートな質問に、ビクッとしちゃった。ちょっとまって! まだ心の準備ができてないんですけど!?

「きのう……。あたしに話しかけてくる前、音の魔法を使わなかった?」

 えーいまどろっこしいのはダメだ! 直球勝負!

 あたしが問いかけると、ヨクトは目に見えてあわて出した。

「な、なんだよ……! そうだったらなんだって言うんだよ!?」

 みとめた!? やっぱりヨクトが犯人なの!?

 あたしはヨクトの肩をがしっとつかんだ。ヨクトはさらにあせりを顔にうかべる。

「なっ……なんだよ!?」

「ヨクト、自首しよう」

「は?」

 自首したらちょっとは罪も軽くなるって聞いたことがある。まだ大きな被害は出てないし、ケガした人もいない。ヨクトはゆるされるはず!

「わるいことをしたら『ごめんなさい』って言うんだよ!」

「いやだからおまえはさっきからなんの話をしてるんだよ。わるいことってなんだ?」

 あれ……? なんか話がかみ合ってない……?

 そういえばケガした人いるね……。ってヨクトじゃん!

「……ヨクトが講堂であの音符を出したんだよね?」

「はぁ!? ちがうし! なんでおれがそんなことしないといけないんだよ」

 やっぱりちがうの!?

「じゃあなんで魔法使ったの!?」

「あ、れは……」

 ヨクトはあたしの手を振りほどいて、目を泳がせた。

 あやしい! はっきりさせてやるんだからねー!?

 ヨクトは小さくため息をついた。

「……好きなやつに話しかけるために、自分に勇気が出る音を奏でたんだよ」

 へ? 勇気……?

「~~まぎらわしいのよ!」

「おまえが勝手にかんちがいしたんだろ!?」

 だってナノが言うからー!

「ていうかヨクト、好きな人いるの!?」

 ヨクトが犯人じゃないってことで聞き流しちゃうところだったけど、この耳ではっきりと聞いた。好きな人に話しかけるために魔法を使ったって。

「~~おまえには関係ないだろ!?」

「なくない! あたしたち友達じゃん!」

 ……ちがう。あたしはヨクトが好きだから、ヨクトに好きな人がいるのがショックなんだ。しかも関係ないとか言われちゃったし……。

 ちらりとヨクトを見ると、不機嫌そうな顔をしている。え、まさか友達とすら思われてない……?

「……秘密!」

「えー!? ここまで言っといて!?」

 なんて言うけど、正直聞かされなくてよかったと思っちゃった。あたしと仲いい子の名前を出されたら、どんな顔をしたらいかわからなかったもん。

 とりあえずは、友達ってところを否定されなくてよかった……。

「秘密なモンは秘密! それより、おれはおまえに言いたいことがあって来たんだ」

「言いたいこと?」

 ヨクトは急にまじめな顔になると、あたしをまっすぐに見つめた。

 な、なに……?

「おまえ、うたがわれてる」

 へ? なにが?

「今回の事件、魔力の強いヤツが犯人じゃないかって言われてるんだ。おまえはあの、国一番の魔女の娘……。事件を起こしててもおかしくないって言われてるんだ」

 なにそれ!?

「でもあたしがおちこぼれなのってヨクトも知ってるでしょ!?」

 う、自分で言ってて悲しくなってきた……。

 だけどヨクトはしんこくそうな顔であたしを見てくる。

 ちょっと待って……? まさかヨクトまであたしをうたがってるわけじゃないよね……?

「おれはおまえを信じたい。……だけどおまえの魔力は強いんじゃないかと思ってるんだ」

 ウソでしょ……? まさかヨクトがあたしのことをうたがってるだなんて……。

 ショックすぎて、あたしはなにも言うことができなかった。


   ♪


 あのあとすぐに鐘が鳴っちゃって、あたしは玄関へ走っていくはめになった。ヨクトは資料室。

 まさか自分が事件の犯人と思われてるだなんて、夢にも思わなかった。

 だってあたしだよ!? 実技はまあまあだけど、筆記テストは赤点の!

 だれがそんなことを言ってるんだろう……。友達? 先輩? 先生?

 うたがわれるのがこんなにつらいなんて思わなかった。ヨクト、ごめんね。あたしもうたがっちゃった……。

「ミリ、なにかあった?」

 はしごを降りたあたしに、ナノが話しかけてくる。

 ヨクトとのことをからかってくるナノだけど、いまはそうやって気にかけてくれるやさしさがありがたい。

「ナノ……」

 自分でもおどろくくらいなさけない声が出ちゃった。それを見て、ナノは察してくれたらしい。くるりとピコ先輩に向きなおる。

「ピコ先輩。ミリがちょっと具合わるそうなので、医務室行ってきていいですか?」

「え? いいけど大丈夫?」

「わたしがついてますので。ミリ、行こ」

「え、うん……」

 あたしはナノに手を引かれるままに歩き出した。


 医務室と言いながら、ナノが向かったのは器楽教室の横の階段だった。みんなパーティの準備をしてる時間だから、ひと気がない。

「ナノ、医務室に行くんじゃなかったの?」

 ひと気がないせいで、ちょっと肌寒い。あたしがぶるっと身ぶるいすると、ナノは指揮棒を振った。

 すると飛び出した音符があたしとナノの手にくっついた。びっくりしたけど、そのてのひらサイズの音符はじんわりとあったかい。

「わっ! なにこれすごい! あったかい!」

「ピコ先輩に教えてもらったの。温室のオルゴールと同じ理論だよ」

 へぇぇ、やっぱりナノはすごいなぁ。

 あたしたちは階段に座って、音符に手をすりよせた。

「医務室じゃ先生いるから話せないじゃん? ここならだれも来ないから、ゆっくり話せるよ」

「ちょくちょく思ってたけど、ナノってけっこうわるい子だよね」

 夜中にぬけ出して男子寮に行ったり、パーティの準備をサボったり。成績優秀でまじめそうな見た目のわりには、ちょっとワルがにあう。

 あたしの言葉にナノは「ありがとう」と笑った。ほめてないぞー?

 まぁこういうとこ、きらいじゃないけど。

「それで? なにがあったの?」

「……ヨクトに、事件の犯人じゃないか聞いたの。結論から言えば、ヨクトは犯人じゃなかった。だけどあたし、犯人だと思われてるみたい」

「ミリが!? なんで!?」

「あたしがママの娘だからだって。この国一番の魔女の」

 ずっとママにあこがれてきた。あたしもいつかママみたいな音の魔法使いになるんだって。

 筆記テストがダメダメでおちこむこともあったけど、その夢のためと思ってがんばってこれた。

 だけどそのせいでうたがわれるなんて、正直つらい。

 あたしがうつむきかけたとき、手をきゅっとにぎられた。

「ナノ……」

「ミリがそんなことする子じゃないってことは、わたしがいちばんよく知ってる。そりゃあミリがすごい力を秘めてるんじゃって思うときもあるけど、それをわるいことに使うような子じゃないもん」

 ナノ……。そんな風に思ってくれてたんだ……。

「かいかぶりすぎだよー。たしかにわるいことをする気はないけど、テストは赤点だし、追試だし」

「でも実技はすごいじゃん」

「とりたてていいってわけじゃない気がするけど……」

 でもほめられるのはうれしいな。えへへ。

「それでさ、ヨクトのことだけど。本当にうたがってるって言われたの?」

 ナノに言われて、あたしはさっきの会話を思い出してみた。

「そうは言われてはないけど、文脈的にそうかなって……」

 そういえばヨクトははっきりとは「うたがってる」って言ってなかった気がする。

 あれ? もしかして、あたしの早とちり……?

「もう一回ヨクトとちゃんと話してみなよ。おたがい食いちがってる気がする」

 そうなのかなぁ?

 正直、またヨクトと話をするのはこわい。だけどナノがそう言うのなら、がんばってみるべきかな?

「そっか……。そうだよね! あたし、やってみる!」

 あたしがそう言うと、ナノはにっこり笑った。

 ナノが階段下に足を投げ出した。

「ミリはクリスマスパーティ、ヨクトとおどるの?」

 とつぜんの質問にあたしはむせた。

「げっほげほ! なにいきなり!?」

「えー? いきなりじゃないよー。みんな話してたでしょ? クリスマスパーティでダンスタイムがあるから、パートナーを決めなきゃって」

 たしかにみんな話してた気がするけど……。

「でもそれどころじゃないし!」

「いいの? はやくしないと、ヨクト取られちゃうよ? あれでもヨクト、けっこうモテるんだよ?」

 そ、そうなの……? あたしにはにくまれ口しかたたかないから、ダンスにさそわれるほどとは思わなかった……。

「でも、いまちょっときまずいし……」

「だからこそはやく誤解をといて、ダンスにさそわなきゃ!」

 握りこぶしを作るナノに、あたしは気おされる。

 たしかに一緒におどれたらとは思ってたけど……。とにかく事件のことを話さなきゃいけないし!

「そういうナノはもうパートナー決めてるの?」

「うん! ピコ先輩にさそわれちゃったんだー」

「うそ!? いつの間に!?」

 二人ってそういう関係だったの!?

「この前の男子寮行った日ー。ピコ先輩とお話してたんだ」

 あの日か……。どこに行ってたのかと思ったら……。

「そっか。つき合うの?」

「まだピコ先輩になにも言われてないしなぁ。クリスマスまでになにも言われなかったら、ダンスタイムのあとにわたしから言おうと思ってるんだ」

 はにゃー、ナノはすごいなぁ……。その勇気にそんけいしちゃう。

「がんばってね! 応援するよ!」

「ありがとう。ミリもがんばってね」

 あたしたちはぎゅっと手をにぎった。


   ♪


 放課後。あたしは玄関の前でひとり立っていた。

 友達どうしで楽しそうに帰ってく子や、カップルで恥ずかしそうに帰っていく子が通りすぎていく。

 あたしが待ってるのはただひとり。

「ヨクト、まだかな……」

 あれから探しにいくことができなくて、とうとう放課後になってしまった。教室にかばんはあったから、まだ校内にはいると思う。ここで待ってたら絶対会えるだろう。

 ちゃんと誤解はとけるかな……。信じてもらえなかったらどうしよう……。

 いやいやネガティブはダメ! ナノにもかんちがいだって言われたんだし、強気でいかなきゃ!

 誤解がとけたら……。ヨクトは一緒にダンスおどってくれるかな?

 いいよって言われたら、あたし、たおれちゃうかもしれない。

 もしダメだったら……。いやいやそれはそのときに考えよう!

 足音がして、ふり向いたときだった。

「ヨクト?」

 だけどその人の顔を見る前に、あたしの目の前に音符がたくさん飛んできた!

 音に包まれたあたしは、そのままたおれてしまった。

 音符をはなったその人が、あたしのそばに立つ。

「どうして……ヨク、ト……」

 そこであたしの意識はとぎれた。

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