第15話 喰い荒らす

背中に飛び乗ったのはいいのだが、暴れていうことを聞かない。まあ、今から喰われるっていうのに素直に食べてくださいなんて方がおかしいのだけど。今はとにかく、こいつを食すことだけに集中しないと。人間は、首を喰い千切るとすぐに死んだけど、こいつは死にそうにないしなあ?どうしよう。とりあえず、骨まで喰うとするか。


「結構いける味だな。」


グチャっと嫌な音をたてながら肉をかじっていく。痛みに苦しみもがく化け物は、暴れるのをやめようとはしなかったが、僕が喰い尽くしていくから大人しくなっていった。共喰いをしているってことになるのに罪悪感の欠片もないから、不思議だな。なんか、悪が僕の中に入って来ているみたいだった。気分が悪い。ナイフを腰から抜いて、一気に首をぶった斬って頭を取った。流石に、この一軒家を余裕で超える巨人殺人鬼を骨だけ残すってのは僕にはできない。お腹が持たない。


「頭が戻ってこなければ、終わり。」


頭を勢いよく踏み潰して、体はこれまでに無かったくらい切り裂いておいた。これを見た人間が恐怖を覚えるのも違うと思ったから、担いで海に捨ててきた。サメか鯨の餌にでもなっているだろう。案外楽に始末できてしまったから、少し物足りなさはあったけれど。

リクがあれだけボロボロになっていたのは、あいつと闘ったからじゃないのか?まあ、リクは恐ろしいものが怖そうなイメージあるから、上手く戦えなかったんだろうなあ。


「おえっ、やっぱ喰いすぎた。」


人間を三人喰ったくらいの量を腹に入れたせいで、一気に吐き気が襲ってきた。やっぱり人間と人鬼の肉じゃ違うものがあるせいか、人鬼の肉を体が受け付けない。近くの溝に思いっきり吐いた。さっきまでの満腹感が一気に無くなって、空腹感が襲ってきた。人間が食べたい。死んでいるやつら、全員人鬼なのかな?人間の奴はいないのかな。微かに、人間の血の匂いがするから数名は人間だろう。死んで血まみれの人鬼の中から、貴重な人間を発見しては骨にした。やっぱり人間の肉は人鬼の肉の味とは全く違う味だった。そして今度こそちゃんとした満腹感を味わった。


「ただいま、戻りました。」

「無事だったようだね、よかった。」

「リクは…??」


店長が奥の部屋を指さしたので、部屋に行った。傷口をしっかりを治療されていた。規則正しい寝息が聞こえてきたことに安心感を覚えた。この街も、また平和に戻るよ。あの化け物は、僕がきちんと倒して処分してきたからもう出てこない。リクは、目が覚めるまでゆっくりしてていいよ。しっかり体を回復させて、はやくコーヒーを一緒に飲もう。店に戻ると、店長がコーヒーを準備して待ってくれていた。話を聞かせてほしいと言われたので、席に座って店長にさっきあった出来事を包み隠さず全て話した。


「凄く冷静に対処できた僕が怖かった。」


なんであんな化け物を見て、怖いとか何も思わなかったのか。そんな自分自身がとても怖くなってきた。店長は、前世でちゃんと鍛えられていた賜物じゃないのかなと励ましてくれていたけど、それだけじゃない気がした。なんか、体の奥底から力が溢れ出てくるような感覚に襲われるような感じだった。

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