第14話 人鬼として
怖いもの知らずって事はいい事だとは思ってはいるけれど、きっと悪いとこもあるんだよなあって考えが僕にはあった。だけど、今はいいことづくしではないかって思っている。じゃないと、こんな大きな化け物に立ち向かおうなんて思うはずがないじゃないか。リクをあそこまでぐちゃぐちゃにしたのも、きっとこいつの仕業だ。こいつから、微かにリクの匂いがする。正確に言えば、リクの家に漂っていたあの気持ち悪い臭いが、こいつの体からしてくるってことだ。
「リクの仇でもとりますか。助けてもらった恩もまだ返してないしね〜〜。」
新聞とかスクープ誌って、情報を事細かに書いてくれるから凄いよね。僕の前世のカコさんは、ヤクザとして様々な特訓を受けてたって言うじゃん。あの人達に聞いとけばよかったなあって今更ながら後悔しているよ。だったら、拳銃とかナイフの扱いも慣れていてほしいけど、今の体がそれを覚えているかどうかによる。リクからよく話は聞いていたけどここって色々取り扱っているみたいだし、実際にぐちゃぐちゃにされた時に、倉庫が丸見えになっているではないか。こっちからしたら、好都合。運は我々の味方らしい。
「さあ、この醜い化け物をどうしようか」
丁度、僕もお腹がすいてきたところだから、さっさと始末して喰っちまうか。まあ、ここで僕も死ぬっていう選択肢にもなってしまう確率は0ではないから、油断は禁物。とりあえず、正面からの真っ向勝負は避けるとして上からぶった斬るか撃ちまくるか。それとも背後から喰い尽くすか。全部か。まあ、僕的には全部面白そうなんだけどなあ。真っ向勝負もぶった斬るのも喰い尽くすのも。
「触手が出てきたりなんて、そんなファンタジーみたいな事があってくれたらね。」
化け物は、僕に向かって大きな手をブンブンと振って殴りかかってくる。威力が強いだけで速くはない。拳銃やナイフは、効くけどかすり傷程度にしかならない。もう、真っ向勝負しか残されていないみたいだった。真っ向勝負っていうか、背後から喰い尽くす。それが、いまこの中では1番勝利に近い道程だ。今夜の晩飯は、共喰いや人喰いを繰り返したまるまると太った殺人鬼って所かな。なんかとてつもなく不味そうな感じがする。
「美味しく喰い尽くさせて貰うよ。」
真っ向勝負に見せかけて、思いっきり走って真上へ飛んだ。大きな手が、勢いよく殴りかかってくるのにぶち当たってしまったが、衝撃は小さかった。人鬼って、本当に痛みが少ないんだなあって実感するよ。僕は、化け物の気が緩んだ瞬間をしっかり確認して、背後に飛び乗った。
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