第13話 変化
あれから、賑やかだった店の客足が途絶えだして静かになる時が増えてきた。店長は、この位が一番いいと言ってきにしていないようだったけれど、明らかに減りすぎではないかと疑問に思ってしまっている。そして、たまに来ていたリクでさえもこの店に寄り付かなくなってしまったし、連絡も途絶えてしまっていた。仕事が忙しいと思っているけれどもここまで連絡が途絶えてしまったことは、今まで一度もなかった。
「街では人鬼の活動が活発になり…」
そして、今まで大人しかった人鬼が暴れ始めたニュースが多くなった。実際に、この街だけの人口も減ってきているような気はしていたし、商店街の店も少なくなってきた。ここは、店長も僕も人鬼であるために店を閉めることは無かったけど、家にこもる人が増えて1週間後には店には人が来なくなった。
「最近、おかしいですよね。」
「そうだね。リクくんも来なくなったってことは結構事件が起きているということになるね。世の中、物騒になりだしたものだ。」
僕は、一度リクのマンションへと行ってみることにした。もしかしたら、帰っているかもしれないと淡い期待をもって。マンションまでは、ここから近い。だから、忙しくても来れる距離でもあるのだ。しかし、いつもなら来ていたリクがここ1週間以上顔も見せなければ連絡もない。どう考えても心配だ。
「リク、僕だ。」
中からの応答はない。ドアは、開いていた。嫌な予感がして、一気にドアを開けて突入していく。人を喰ったあとの人鬼の臭いと人鬼の血の臭いが充満していて、マスクをつけていないと耐えられない。リビングへ行くと、真っ赤に染まったリクが倒れているだけだった。駆け寄って、応急処置をするも重症すぎてどうも出来なかった。僕は、リクを担いで店に戻った。店長にリクを任せて、リクが働いている事務所へと急いだ。
「なんだよ、これ。」
事務所でさえも、真っ赤に染まっていて中には大勢の人鬼と思われるものと人が転がっていた。信じられない光景だった。しばらくはその場から動けなかったけど、人鬼では無いものの気配がして、勢いよく後ろへ振り返ったが、目の前にいた奴に思考が止まった。
「お、鬼だ…」
人鬼は、人を喰う鬼だ。でも、目の前にいるのは、人間を喰う鬼じゃなくて人間も人鬼も関係なしに食い散らかすただの殺人鬼みたいな巨大な人型の化け物だった。こんなやつがいていいのか?目にも光がなく、顔や体には人鬼の血なのかか人の血なのか分からないほどの大量の血を浴びていた。
「沢山ご飯を食べて、満足だろう?」
不思議と思考が戻ってきた。冷静でいられるようになった。化け物に話しかけるほど、頭がおかしくなってしまったようだった。目の前の恐ろしいものが、僕を食い殺そうとしているにも関わらず、冷静でいられるのはきっと前世の僕も怖いもの知らずだったんだろうなあ。ヤクザに養われていた子だぜ?上等じゃないかってくらいだよ。
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