第10話 前世

2017年5月20日、路地裏で高校生下敷き。

デカデカと書かれていた記事には、痛々しいことも書かれていた。そんな死に方をしたのかと少し目を伏せたくなったけど、ちゃんと向き合わないと行けない気がした。


「同級生で親友だった前島理央さん。」


昨日の人だろうか??名前は聞いていなかったな。別れた直後にすごい音がして戻ってみたら、カコが下敷きになってて、信じられない光景で今も夢に出てくるくらいです。って若干僕に恐怖持ってたのでないかって言い分だなあ。でも、戻ってきてほしい、もう一度会いたい。ってことは、僕ってちょっと行けないことしちゃったのかな?でも、今の僕はこの人のことは何も知らないからなあ。


「古瀬カコさんの両親は、不明。」


両方ともカコさんが幼い時に、夜逃げをしてカコさんは朝霧組に引き取られる。葬式にも多数の朝霧組の組員が行った。って、結構ハチャメチャな人生送ってんだなあ、前世の僕って。なんかある意味尊敬するっていうかなんと言うか。そっか、僕の両親いないんだ。


「古瀬カコさんの遺体は、その後行方不明」


傷はない、後遺症らしきものもない。どこで目覚めたのかもわからない。そっか、死んですぐに人鬼になったのか、僕は。だから、あるはずの遺体もなかったのか。やっと謎が解けた気がする。理央さんが言っていた事も。


『あったはずの遺体がなくなったのに信じられるわけないじゃない!!』


たしかに、目の前で死んでいたカコの死体が葬式の時は無かった。事故現場も昨日の今日で綺麗さっぱりだった。遺体がどこに運ばれていったのか、どうなったのかさえわからないまま。信じられるわけもなかろう。理央さんからしたら、もうこれ以降経験するはずない事なんだろうなあ。僕もだけど。


「よし、帰ろう。」


帰ったら店長にコーヒーいれさせてもらおう。たまには、僕がいれたらコーヒー飲んでほしいしね。いっつも何百杯といれているコーヒーだし、たまには気分転換もいいよね。

店長って頑張り屋でもあるよなあ。本当に店長には、感謝しかないや。いつか店長みたいなおいしいコーヒーいれてみたいなあ。


「危ないっ」


どこかで聞いたことがある。人は危機が迫ってる人を見るといても立ってもいられなくなると。人では無いけど、いま僕はまさにその状態。トラックが来ているのに気づかなかった子供が逃げ遅れていて、トラックは急には止まれないし、このままじゃ轢かれてしまう。そんなことは、意地でもさせない。ブレーキ音と人の悲鳴が街中に鳴り響いて、大騒ぎになっているのにも関わらず、ひとり冷静なのはきっと必死だからだろうか。

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