第9話 カコ
号泣している女の人とそれを慰めている男の人をとりあえず店長が奥の部屋に招いた。僕も一緒について行って、部屋で3人で話すことになった。それにしても、この人たちは何なのだろうか??この店では、名札がないためお客さんに名前を知られることは無い。
「カコとおっしゃいましたが、改めて自己紹介を。僕は、水野ツナです。ここでアルバイトとして住まわせて頂いてます。」
「違う!本当は生きてたんでしょ?あんなニュース流されたから名前変えてるんでしょ?ねえ、本当の事言って!」
ツナ缶が頭に浮かんだからツナって言ったけど、僕はツナ缶が大好物だ。それにしてもしつこい人たちだなあ。なんで分からないんだ?僕はカコじゃないって言っているんだ。
そう思っていると、扉が開いてリクが入ってきた。店の格好をして。
「ツナ〜早く…あ、失礼いたしました。水野さん、店が混んできたので早めに戻ってきてくださいね」
「すいません、すぐに戻ります。」
店員がツナって呼んだからか、がっくり肩を落として落ち込む彼女。リクも絶対話を盗み聞きしてたな。それにしても、制服似合ってなあ。かっこいいやつめ。さて、この人たちをどうしようかな。もう、さっさと追い出すかな。これで分かっただろうし。
「という訳で、僕は水野ツナです。あなた方の言っている古瀬カコさんについては、テレビでよく見かけますが、この行為は古瀬さんにも失礼だと思いますよ。それでは。」
ペコッと一礼して、部屋を出た。そして、帰っていった人達を見送ってから、力が抜けたように楽なった。リクに助けてもらったなあ、お礼言わなきゃ。店に戻ると、リクがせっせと働いていた事に驚いて開いた口が塞がらなかった。なんで、リクが働いてるんだ?
「お前が働いてるの見て楽しそうだと思ったから1日だけな。俺は学校と別の仕事あるからここでは働けない。」
リクは探偵をしている。悪い人鬼を始末したりする仕事で、人鬼にとっては重要な仕事だと言われている。お父さんの仕事がそれだったために、継ぐことになったらしい。リクも大変ってことは、最近になってわかってきたんだけども。お父さんもまだ現役らしいし。
そういえば、あの女の人の言ってたことが少し気になるんだよなあ。また、調べてみようかな?リクに頼むのもありなんだけど、自分で調べないといけない気がして頼めないし。
「店長、明日の午前中だけ休みもらっていいですか?調べたいことがあって。」
明日、図書館で最近あった事件の新聞でも見てこよう。なにか分かるかもしれないし、僕が死んだ時のこともなにか載っているかもしれない。親のこととか、どんな子だったとか人間だった頃の僕を知るくらい問題ない。
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