第6話 カフェ
おじいさんは、僕を見ては微笑んで中に案内してくれた。そして、コーヒーを丁寧に入れてくれて、おまけにクッキーも出してくれた。いい雰囲気のお店だとは思っていたけどここまでいい店だとはね。これから通おうかな?あ、リクってコーヒー好きだったよな。今度連れてこよう…って喧嘩したんだった。
「なにか悲しいことでも??」
「友人と喧嘩してしまいまして…。」
「ほお、それは人鬼の人間で??」
心臓が一気に飛び跳ねたような感覚に襲われたけど、それも一瞬で安心へと変わった。おじいさんも、僕と一緒だったからだ。リクが言ってたのを覚えてる。人鬼の老人は、目の色が青のまま治らなくなるそうだ。狐目のおじいさんは、あまり分からなかったが目を開けると青い目が綺麗に輝いていた。
「なんだ、おじいさんも人鬼なんですね」
「生まれてこの方、人鬼として人間と一緒に過ごしているよ。君はまだ、人間の匂いが残っているね?これを食べなさい。」
そう言って差し出されたのは、どこかで見覚えのある実だった。だけど思い出すことが出来ない。僕はとりあえずその実を食べた。少し苦味がある。一体何の実なんだろうか??
「それは、昔から伝わる人鬼の種だよ。それを食べると、人間の匂いが消える。」
「そんな物があるんですね。」
おじいさんが言うには、人鬼のお客が来たのは久々だそうだ。人間が沢山住んでいるこの街に住む人鬼は、山ほどいるらしいけど。夜とか昼間の路地裏にしか現れない人鬼ばかりだからここには来ないそうだ。人間を狩る人鬼が殆どだけど、ごく稀に人間の匂いが残っている人鬼を狙う共食い野郎がいるから、注意しなければ危険らしいが、もう人間の匂いが残っていない僕はもう大丈夫らしかった。
「人鬼と人間って普通に会話できますよね。それに、記憶を消さない人鬼もいるって。」
「馬鹿な奴らが、人鬼になってしまっても人間だった頃の記憶をとっておきたいというもんだから、こういう選択肢も生まれた。」
だけど、人鬼になってしまえば主食は基本人間の肉だ。それに、数が減っている人鬼を冷やしている奴らが、事故死した人や病死した人を人鬼専門の病院へ連れていき、人鬼にする手術を行っているらしい。当然、死んだことは世間に知られている。友人とまた前のような関係に戻れるなんて、有り得ない。それに、人鬼だ。空腹がくれば、目の前の人間なんか容赦なく食べてしまうのだ。気づいてからじゃもう遅い時だってあるのだから、記憶なんて消した方が良いのだ。とおじいさんは悲しい顔をして語った。
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