第11話 三日月傷
2年生の夏休み、その日はよく晴れていて、従兄弟のキヨが遊びに来ていた。
三兄弟とキヨで、何をして遊ぼうか?と庭に出ていると
「そんならゴミ燃やしといてー」
と、お母さんに頼まれた。
ど田舎だから、どこの家もゴミ焼却は家でやる。
(一応、野焼きは法律上禁止)
ゴミ焼却そのものは休日ともなれば僕らの仕事の1つ、いつもの事だった。
ゴミを開けて、火を付け、しばし4人は火の周りで遊んでいた。
ゴォーと唸る火柱、今になって思えばその日の炎は少し強かったのかもしれない。
バチバチ!っと燃えるゴミではない"何か"に火が付いた音がした。
4人は「なんだろ?」と火の方を向いた
その時!
ボン!!
突然の爆発!
火が付いたゴミが散乱し、数メートル離れた僕へ、火の矢のようにゴミが飛んできた!!
ドッ!と僕の半ズボンで剥き出しの太ももに当たった。
「いたっ!」
びっくりして熱いよりも、ゴミがぶつかった事の痛みを脳が先に認識したらしい。
しかし、ぶつかったゴミが悪かった。
火の矢と化したゴミはプラスチックだった。
火が付いたまま太ももに付着し、溶けだし、僕の太ももを焼いた。
「ぎゃーーー!」
断末魔のような叫びをあげて、僕は倒れ込んだ!
長男が必死でゴミを素手で凪ぎ払ってくれたが、もう遅かった。
僕の太ももは大きく焼き溶かされ、得たいの知れない黄色の液体がジュクジュクと沸いて出てきていた。
当時、車もなく、異変に気付いたお母さんが直ぐに家のなかへ運んで、マキロン(アルコール)や、氷袋など、田舎の家の物でありとあらゆる方法で僕を治療した。
「せいち!傷口ずっと濡れタオルで優しく叩いて、その液体を吸って!!」
と、黄色の不気味な液体を涙目で長男が拭いてくれた。
「なんで俺じゃなかったんや…」
何度も、何度も長男は末っ子の悲劇を哀れんでいた…。
得体の知れない黄色の液体は多分だけど、焼かれた血液とかだったんだろうと思う。
専門化ではないし、医者にも結局見せなかったから判らない。
歩くことに支障は無かったが、僕の右太ももには大きな三日月の火傷が残った…。
大人になった今でも、太ももに対しての火傷の割合は小さくなったように見えるけど、それは体が大きくなっただけで、そのまま残っている。
左腕の幼児の頃の火傷、そして、右太ももの三日月傷、僕は火傷にほとほと運が無い。
僕は自分を不幸だなんて思ってない、
人が傷付いたりするのを見るのは本当に嫌いだ。
だから、僕で良かったと思ってる。
たまたま遊びに来てたキヨではなく、
責任感の強い長男でもなく、
最近、犬に噛まれて大変だった次男でもなく、
僕で良かった、と…。
これが僕の生きる道 Habicht @snowy0207
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