第6話 妹

 "そして、僕には護るべき存在が出来た…"



 りーちゃん達が亡くなり、従姉妹の家庭は離散した。


 あーちゃんは僕のお母さんの強い要望などにより、一時的にウチで預かる事になった。


 カツ叔父さんは遠くで独り暮らしを始めた。


 婿だったカツ叔父さんが正式に離婚したことで、あーちゃんも実家の名字になった。

 つまり、僕らと同じになった。


 あーちゃんは嬉しそうに昔の連絡帳まで引っ張りだして、全部の名字を書き換えていたのを鮮明に覚えている。


 僕に妹が出来た瞬間だった。


 あーちゃんの笑顔は底抜けに明るく、僕は妹以上の感情が芽生えながらも、あくまで兄として接し、彼女を護りたいと強く思っていた。


 寝室は違ったけれど(僕はずっと次男と同部屋)、登下校、食事、お風呂、勉強、遊び、全ての生活にあーちゃんが加わった。


 後にお母さんは言っていた。

「ずっと女の子が欲しかったのよ」

(悪かったな末っ子の僕さえも男で!)


 かくゆう、僕も妹が欲しかったのだから同罪だ。


 ある日、新聞配りを二人でしていたときに、配り先の飼い犬だが、ちょっと狂暴な犬が鎖がほどけていて、僕たちに向かって来たことがあった。

 僕はあーちゃんを後ろに退かせて、大声で助けを呼びながら手にもった新聞で追い払って、必死に彼女を護ろうとしたことがある。


 低学年の僕には出来ることと出来ないことははっきりしていた。

 だけど、あーちゃんだけはなんとしても護る!混乱しながらも頭の中はそれだけだった。


 クラス内ではトラブルメーカーで浮いていた僕はムシャクシャして、あーちゃんを理不尽に泣かせた事もあった。


 子供だった僕は妹という存在を自分の良いように解釈しすぎていて、後悔したこともある。


 だけど、あーちゃんの笑顔は僕の救いだった。


 あんなにツラい想いをしたのに…。


 彼女の笑顔を見るたびに、その笑顔の裏にりーちゃんが被って見えていた。


 あーちゃんは二人分の人生を背負ってる、僕が少しでも支えになってあげなきゃ!


 勝手な思い込みもあったかもしれない。それでも僕は僕が出来ることを出来る限りで彼女を護ろうと誓っていた。

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