8.パロディこそが本質
👉ポイント
・レゴランドは、元ネタのコピーではなくパロディであるという点で従来のテーマパークとは異なる
・異世界ファンタジーもパロディとして積極的な意義が認められる
●東京ディズニーランド(1983):童話世界の劣化コピー
●東武ワールドスクウェア(1992):世界の建造物の劣化コピー
↑本物にはアクセス困難なので代替物として消極的に受容
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●異世界転移/転生小説(2010s):ゲームファンタジーのパロディ
●レゴランド・ジャパン(2017):日本の建造物のパロディ
↑本物にアクセス可能、パロディであることを積極的に楽しむ
図?:劣化コピーとパロディの構造比較
先日、名古屋市にレゴランド・ジャパンが開業しました。レゴブロックを題材とした様々なアトラクションを擁するテーマパークでありますが、そのなかでも中心をなすのはミニランドと呼ばれるエリアです。ここでは、名古屋城・ナゴヤドームを筆頭に、日本各地の建造物がレゴブロックで再現されています。
ミニランドは、従来のテーマパークとは幾分異なった楽しみ方をする施設のように思われます。
図では、従来のテーマパークの例として東京ディズニーランドと東武ワールドスクウェアを示しました。これらの施設では、実際にはアクセスすることができない、あるいはアクセスすることが困難な対象――デイズニ―作品の世界や海外の有名建築物について、代替物を手軽に楽しめるようにすることで来場者に価値を提供していました。もちろん本物であれば一番良いわけですが、模倣で我慢するわけです。
ところが、ミニランドの場合、再現されている建造物は日本国内のものばかりです。特に名古屋市内の建物の場合、来場者は簡単に本物を見に行くことができるのに、わざわざ市内でも不便な場所にあるレゴランドに行って、模倣を見に行くという倒錯が生じるわけです(※1)。
しかし、来場者はこれを倒錯だなんて思っていないでしょう。むしろ、見慣れた場所がレゴブロックで再現されていることに積極的な価値を見出しているのでしょう。ディズニーランドであれば、作品世界の再現が精巧であればあるほど好ましいはずです。ところがミニランドは、レゴブロックで再現することによるズレにこそ意味があるわけです。来場者は名古屋城のパロディを見に来るわけです。
さて、ようやっと小説の話に入るわけですが、この「パロディを楽しみに来ている」という構造は、主流派のweb小説の構造そのものであります。著者が書きやすいから大幅に省略しているだとかいう人もいますし、あるいはそういう側面もあるのかもしれませんが、私はより積極的な意義を見出したいと思います。鈍臭い神様やらステータス表示やらといった、リアルなファンタジーからのズレを読者はあえて観賞するのです。
ある芥川賞作家(※2)がかつて述べていたように、すべてはパロディにされるべきなのです。パロディはそれを通して物事の本質を明らかにすることができる崇高な営為であります。パロディを際限なく繰り返すweb小説の時代にあって、我々は物事を多面的に見つめ、かつてない深い洞察を得ることができるのです。
※1 ワールドスクウェアにもスカイツリーとかありますし、この傾向がないわけではないです
※2 赤瀬川原平
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