5.息をするようにメタなweb小説

👉ポイント

・Web小説は作者の意図とは無関係にメタであることを強いられる

・その構造を自覚したうえで、本文と本文外を一体のものとして小説を設計すべき



34 :名無しさん@おーぷん :2015/05/15(金)10:30:07 ID:yhG ×

中世ヨーロッパ風ファンタジーで学校の存在があり、主人公が通いだす。

そしてエタる

(文芸・書籍サロン@おーぷん2ちゃんねる「小説家になろう的テンプレファンタジーあるあるネタスレ」より転載)


 エタるというのは、連載小説の更新が途中で放棄されてしまうことを指します。>>34は一文目では作品世界の中について語っているにも拘らず、主語すら明示せずに二文目では作者の話に移っています。上のレスは直接には某大手小説サイトについての言及ですが、web小説一般にあてはまるかと思います。


 web小説に対する批評では、物語世界での出来事と現実世界の事象が渾然一体となった言説をしばしば目にします(紙書籍でもないわけではないですが)。あるいは、本文についても、メタネタが多用される傾向にあるとも指摘されています。これらはweb小説の本質に対応するものと考えられます。


 カクヨムのインターフェイスを例に見てみましょう。カクヨムには応援コメント機能があり、読者がコメントをつけ、作者もそれに返信することができます。時にはここで設定の補足解説が語られたりキャラクターの制作背景が明かされたりします。注目すべきは、紙の書籍と異なり一話ごとに挿入されることと、本文と同一のページに表示されることであります。


 読者は必然、これらコメントを本文と一体のものとして作品を評価することになります。なんせ、一話ごとにページの下端についてくるですから。一話が短いのは大目に見てやろうだとか、設定が重厚で素晴らしいだとか、コメントを見ながら考えるわけです。


 「いやいや、本文こそが小説の本質だ、コメントなんて評価に値しない」と仰る方も多いでしょう。ところが、そういう人は本文についても例えば「脈絡なく登場人物が語りだして設定を説明するのはいただけない」など、何かしらの評価基準を持っているのではないでしょうか。本文内であっても評価の対象になるとは限りません。重要なのは、本文外のコメントが本文内と同一の地平のもとにおかれ、相対化されているということなのです。


 また、読者も作者も応援コメントでのコミュニケーションによって、第四の壁破壊による何らかの演出上の効果を期待しているわけではありません。この点が従来的な意味でのメタネタと大きく異なるところであります。タイトルの「息をするように」で示したかったのはこのことであります。


 ここでは前書き・後書きについて触れましたが、読者はここからさらにレビュー欄を読んだり、作者の近況ノートを読んだり、更には紐づいたtwitterから作者の発言を探したりすることができます。他の小説サイトでも似たり寄ったりのシステムを構築していることでしょう。これら作品外での発言を意識的に抑制しない限り、作者の意図とは無関係に小説は勝手にメタな構造を獲得してしまうのです。


 web小説の書き手としてはこの構造を自覚したうえで、小説本文外も含めた全体を一つの作品としてデザインすることが重要なのではないでしょうか。

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